沖縄で勢力拡大するタイワンハブ
【特定外来種/毒蛇】タイワンハブの生態と毒性

タイワンハブは、台湾や中国南部に生息する毒蛇ですが、沖縄本島に移入して生息域を拡大しています。タイワンハブとはどんな毒ヘビなのか? タイワンハブとホンハブ(ハブ)との違い、タイワンハブの生態についてまとめました。

沖縄で勢力拡大する特定外来種のタイワンハブ
沖縄本島で勢力拡大する特定外来種のタイワンハブ
(画像提供:Digital Taiwan)

タイワンハブは、もともとは日本に生息しない外来種ですが、1993年に沖縄本島の北部(沖縄県名護市)で初めて帰化個体が発見されました。

当時観光客に人気があった「ハブとマングースの決闘ショー」やハブ酒用のハブの代用品として輸入されていた個体が、逃げ出したり不法投棄されたりして繁殖したものと考えられます。
タイワンハブの生息域は、今では周辺地域にも拡大しており、年に数回ながら咬傷被害も発生しています。

タイワンハブは沖縄在来種のハブ(ホンハブ)よりも体躯は一回り小さいが、動きはハブより俊敏で攻撃的です。毒性もハブの1.2倍ほど強く、注意が必要です。

以下に、タイワンハブの生態について詳しく観てみましょう。

タイワンハブ【特定外来種】

タイワンハブとは

タイワンハブはクサリヘビ科ハブ属に分類される毒蛇です。台湾や中国南部およびインドシナ半島北部に生息しています。夜行性で、ネズミなどの小型哺乳類や、鳥類・トカゲ・カエルなどを捕食しています。体長は80~130cm。在来種のハブ(ホンハブ、体長130~220cm)と比べてやや小型です。

タイワンハブは、もともと日本にはいない外来種ですが、1993年に名護市で初めて発見されて以降、2005年には隣接する恩納村でも発見され、その後も2007年に今帰仁村、本部町で発見されるなど、急速に沖縄本島での生息域を拡大しています。

それに伴ってタイワンハブによる咬傷被害も発生しており、2005~2010年には名護市と今帰仁村で7件の咬傷事故が発生しています。その後も毎年咬傷被害が報告されています。

タイワンハブの毒性はハブよりも強く、また毒牙もハブよりも長いとされていて、咬まれると身体のより深部に毒が注入されるため症状は深刻です。ただし毒の量はあまり多くないため、死に至ることは稀です。

樹上で獲物を狙うタイワンハブ

樹上で獲物を狙うタイワンハブ/タイワンハブは夜行性
(画像提供:Groveling things)

タイワンハブは夜行性。平地から森林、草原、水辺、農地など、草や木が茂るところにはどこにでも棲んでいます。樹上性ですが、たまに獲物を求めて地上を徘徊することもあります。


こちらは本家本元のハブ(=ホンハブ)

ハブ(=ホンハブ)
(画像提供:Groveling things)

こちらは本家本元、沖縄在来種のハブです。ハブはタイワンハブよりも一回り大きく、どこか貫禄があります。


ハブとタイワンハブの違い

ハブとタイワンハブの模様の違い。左:ハブの模様、右:タイワンハブの模様
身体の模様~左:ハブ、右:タイワンハブ

ハブとタイワンハブとは、身体の模様を観るとその違いがよくわかります。

ハブが黄色と黒の複雑な網目模様なのに対して、タイワンハブには体背面と側面に焦げ茶色の斑紋があります。そのためタイワンハブは、英語名では「Brown Spotted Pit Viper」、「Pointed-Scaled Pit Viper」などと呼ばれます。


沖縄に生息するハブの種類

沖縄には4種類のハブの仲間が生息しています。ホンハブ(いわゆるハブ)とサキシマハブ、ヒメハブ、タイワンハブの4種です。

このうちタイワンハブは海外から移入した外来種、これ以外の3種は沖縄に古くから生息する在来種です。
なお、サキシマハブは石垣島や西表島などの先島諸島の在来種ですが、近年、糸満市を中心とした沖縄本島南部で多数捕獲されており、国内移入種として定着・繁殖しているものと考えられます。

したがって沖縄本島には、ホンハブ、ヒメハブの在来種のほか、タイワンハブ(外来種)とサキシマハブ(国内移入種)も加わり、4種類のハブがすべて生息していることになります。

沖縄県でのハブの分布

ハブ(=ホンハブ)
(画像提供:沖縄県)

沖縄県の陸上には22種類のヘビが生息しています。そのほとんどが琉球列島だけに住む貴重なヘビです。そのうち毒ヘビは8種類生息していますが、特に危険なヘビは、ハブ・ヒメハブ・サキシマハブ・タイワンハブの4種類です。

沖縄県でのハブ咬傷被害

沖縄県のハブ咬傷被害者の数はピーク時には年間500名を超えていましたが、市街地の整備が進んだことや農業技術の進歩、ハブの駆除の推進などにより年々被害者の数は減少し、ここ10年ぐらいは100名程度以下で推移しています。

また、ハブ咬傷による死亡者の数も減少の一途をたどり、多い時には年間5~7名いた死亡者が、2000年以降はゼロになっています。血清の整備と医療機関の充実が寄与しているものと思われます。

ただ、ハブの毒は強力な出血毒のために、深くかまれると筋肉や血管が壊死して、たとえ一命を取り留めたとしても手足の切断を伴うなど重篤な被害を被ることもあります。ハブの咬傷事故にあわないように十分な注意が必要です。

沖縄県のハブ類咬傷の推移/ハブ・ヒメハブ・サキシマハブ・タイワンハブの咬傷被害
(資料提供:沖縄県)

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