ウミヘビのすべて
日本近海と世界のウミヘビ

日本近海には9種類のウミヘビ(海蛇)が生息しています。日本と世界の代表的なウミヘビを画像で紹介します。ウミヘビにご注意を!

サンゴ礁を泳ぐエラブウミヘビ。ウミヘビ生態画像 | 海の危険生物(海ヘビ)。温暖化の影響でウミヘビも紀伊半島や千葉県の海で発見されることがあります。
サンゴ礁を泳ぐエラブウミヘビ。陸にも上がるので波打ち際では注意を!
(画像提供:おきなわ図鑑)

ウミヘビと呼ばれる動物には、鱗(うろこ)がある爬虫類のウミヘビと、鱗がないウナギやアナゴに近い魚類のウミヘビがいます。ここで採りあげるのはもちろん、猛毒を持った海の毒ヘビ、爬虫類のウミヘビです。

ウミヘビは熱帯~亜熱帯の温暖な海を好み、トカラ列島以南の南西諸島(奄美群島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島)が分布の北限だといわれていました。ところが近年の地球温暖化の影響で、九州や四国地方をはじめ、紀伊半島の沿海でもしばしばウミヘビが目撃されるようになりました。時折、千葉県の海でも目撃されることがあります。

ウミヘビは浅い海を生活圏にしているものが多く、種によっては波打ち際の岩穴で休息したり、陸上に上がってくるものもいます。ダイバーだけでなく普通に海遊びしていてもウミヘビに遭遇する可能性がありますので注意が必要です。

ウミヘビ

海に進出したコブラ科の毒蛇

ウミヘビはコブラ科の毒蛇が海に進出して、海中生活に適応したものです。
日本近海にはエラブウミヘビやクロガシラウミヘビ、ヒロオウミヘビ、セグロウミヘビ、アオマダラウミヘビなど9種が棲息しています。
また、世界にはオリーブミナミウミヘビやイボウミヘビなど、名前をよく知られたウミヘビが目白押しです。

ウミヘビ

ウミヘビ 猛毒をもつ海蛇
(画像提供:神戸市 須磨海浜水族園)

ウミヘビは全身が鱗(うろこ)に覆われた、紛れもないヘビ(爬虫類)です。 小さなかわいい頭の持ち主で、性格もいたって温厚。
だが、ウミヘビは人をも殺す強力な神経毒をもち、万一かまれると大変危険な状態に置かれます。
海辺を散策中に、あるいは泳いだり磯遊びをしていて、このような動物に出会ったら絶対に触ってはいけません。猛毒のウミヘビです。


日本近海に生息するウミヘビ(9種)

日本近海に生息しているウミヘビは下記の9種です。そのうち、「◎」で示した4種が、日本近海とくに沖縄海域ではごく普通にみられるウミヘビです。

■エラブウミヘビ亜科
  ・エラブウミヘビ(◎)
  ・ヒロオウミヘビ(◎)
  ・アオマダラウミヘビ(○)

■ウミヘビ亜科
  ・クロガシラウミヘビ(◎)
  ・イイジマウミヘビ(◎)
  ・セグロウミヘビ(○)
  ・マダラウミヘビ(○)
  ・クロボシウミヘビ(△)
  ・トゲウミヘビ(△)

凡例: ◎普通にみられる/○少ない(ときどき見られる)/△まれ(稀に見られる)

エラブウミヘビ亜科 エラブウミヘビ ◎ 普通にみられる
ヒロオウミヘビ ◎ 普通にみられる
アオマダラウミヘビ ○ 少ない(ときどき見られる)
ウミヘビ亜科 クロガシラウミヘビ ◎ 普通にみられる
イイジマウミヘビ ◎ 普通にみられる
セグロウミヘビ ○ 少ない(ときどき見られる)
マダラウミヘビ ○ 少ない(ときどき見られる)
クロボシウミヘビ △ まれ(稀に見られる)
トゲウミヘビ △ まれ(稀に見られる)

日本近海に生息するウミヘビの生態画像

陸に上がったエラブウミヘビ

陸に上がったエラブウミヘビ
(画像提供:奄美生き物図鑑)

エラブウミヘビ(永良部海蛇)は、沖縄や奄美の海でよく見られるウミヘビです。近年は九州や四国、本州南岸にも棲息しています。頭は小さく、青地に黒い横縞があります。
エラブウミヘビは夜行性で、昼間は陸に上がり、海岸の岩陰等で休んでいます。波打ち際や砂浜を移動することもあるので注意してください。
沖縄や奄美でイラブーと呼ぶウミヘビは、本種エラブウミヘビです。


クロガシラウミヘビ

クロガシラウミヘビ
(画像提供:八重山通信)

水深0.5m程度の浅い藻場で撮影したクロガシラウミヘビ(黒頭海蛇)。このウミヘビは藻場や浅いところに多く棲息しています。完全水棲種で、陸にあがることはありません。
日本では南西諸島や沖縄の沿岸に多く見られますが、対馬海流に乗って北海道の海で見つかった例もあります。昼行性。アナゴ等の細長い魚類を捕食します。


ヒロオウミヘビ

ヒロオウミヘビ
(画像提供:おきなわ図鑑 )

ヒロオウミヘビ(広尾海蛇)は、エラブウミヘビと同じコブラ科「エラブウミヘビ属」のウミヘビです。
夜行性で、昼間は海岸にある岩の割れ目などで休んでいます。
和歌山県の沿岸でもしばしば目撃され、ときには港湾施設内(防波堤の内側)で目撃されることもあります。


セグロウミヘビ

セグロウミヘビ
(画像提供:wikipedia )

セグロウミヘビ(背黒海蛇)は、コブラ科セグロウミヘビ属のウミヘビです。名前のとおり背が黒く、腹部は黄色や淡褐色です。完全水棲種で、陸にあがることはありませんが、たまに浜辺に打ち上げられることがあります。
セグロウミヘビは外洋に生息するウミヘビです。暖流に乗って日本近海にも現れ、ときには北海道あたりまで北上することもあるようです。ウミヘビの中では比較的性質が荒い種であり、注意が必要です。


ウミヘビの毒

ウミヘビの毒はコブラ科のヘビに共通な猛毒の神経毒で、咬まれると麻痺やしびれが生じ、やがて呼吸や心臓が停止して最悪死に至ります。その毒性は強烈で、例えばエラブウミヘビの毒は陸上のハブの70-80倍の強さだといわれています。

世界最強の毒蛇ランキング トップ50 によると、ウミヘビの仲間は強毒性トップ10の中に5種が、またトップ30の中に12種がランクインしています。実に上位ランクの半数近くをウミヘビの一族が占めていることになります。恐るべき猛者ぞろいなのです。

ただウミヘビは、一般におとなしい性質のものが多く、手でつかまえたり、ちょっかいを出したりしない限り、普通に海遊びをしていて噛まれることはまずありません。

世界のウミヘビ

ウミヘビは、太平洋やインド洋の熱帯~亜熱帯域のサンゴ礁や岩礁地帯に広く生息しています。あるデータによると、マレーシアでの100例余りのウミヘビ咬症のうち半数以上はイボウミヘビによるものだそうです。しかも、ウミヘビ咬症による死亡例の約90%は本種によります。海に依存して暮らす人間にとっては、イボウミヘビはかなり厄介な生物です。

イボウミヘビ

世界のウミヘビ イボウミヘビ
(画像提供:カラパイア)

インド洋のアジア南部海域からオーストラリア北部沿岸に生息します。
ウミヘビの中では最も気性が荒く、毒性も強いことから、咬症被害により死亡する事例も見受けられ恐れられています。
イボウミヘビに咬まれるケースの多くは、漁師が引き網作業中に手でつかんだり、子供がいたずらして触ったりしたときにおこったものです。言わば不注意によるものがほとんどです。


オリーブミナミウミヘビ

世界のウミヘビ オリーブミナミウミヘビ
(画像提供:ダイビング魂)

インド洋のサンゴ礁域にすみ、泳ぎが達者でさまざまな魚を捕食します。全身がオリーブ色の美しいウミヘビですが、上述したイボウミヘビと並んで漁業者から恐れられています。
かって日本の遠洋漁業の船員がこのヘビに咬まれて死亡しました。網にかかったウミヘビを外すときに咬まれたようです。私たち日本人とも無縁ではありません。


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ウミヘビ(解説)

ウミヘビ類は系統的に大きく2 つのグループに分かれ、生活史、形態なども二者の間でかなり異なります。 具体的には、①エラブウミヘビ亜科のウミヘビと、②ウミヘビ亜科のウミヘビです。

エラブウミヘビ亜科のウミヘビ

生活の中心は海中ですが、休息時には陸に上がります。交尾や産卵も陸で行います。陸蛇と同様に腹板が残っていて陸上をじょうずに移動できます。いわば、陸から海へ進出したものの、まだ完全には陸上生活から足を洗いきれていない状態にある蛇です。
日本近海で見られるのはエラブウミヘビ、ヒロオウミヘビ、アオマダラウミヘビの3種で、沖縄で燻製にされて「エラブウナギ」と称して売られているのはこの仲間です。

ウミヘビ亜科のウミヘビ

完全に海中生活に適応し、自ら陸に上がることのない正真正銘の海棲動物です。交尾や出産(卵胎生)もすべて海中で行います。日本近海では、クロガシラウミヘビやイイジマウミヘビをはじめ6種ほどが見られます。

※参考:ウミヘビは、従来はコブラ科のエラブウミヘビ亜科とウミヘビ亜科に分類されていましたが、現在はコブラ科から分離独立させて、ウミヘビ科(エラブウミヘビ属、ウミヘビ属ほか)に分類する学説もあります。

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