日本の毒蛇:マムシ・ハブ・ヤマカガシ
(身近な毒ヘビと毒性比較)

日本に生息する3種の毒蛇=マムシ・ハブ・ヤマカガシの毒性を半数致死量LD50で比較しました。その結果は・・・。ヤマカガシが猛毒第一位でした。

マムシの毒牙/蛇毒と毒性比較。マムシやハブなどのクサリヘビ科の毒蛇は強力な出血毒を持っています。咬まれたら大変です。
マムシの毒牙(画像提供:(財)日本蛇族学術研究所)

日本には陸上ではマムシ・ハブ・ヤマカガシの3種類の毒蛇(毒ヘビ)がいます。

いずれの毒蛇も水田や畑、野原、山林、水辺など、私たちが普段生活をしたり、アウトドア趣味を楽しむ環境の中に普通に生息しています。言わば私たちはこれら毒蛇と一緒になって生活しているのです。

厚生労働省の人口動態調査によると、1997年から2004年の間に、毒蛇に咬まれて死亡した人は毎年4~18人いました。平均すると年間約10人ほどが尊い命を落としていることになります。

ここでは、日本に生息する3種類の毒蛇について、その毒性(=毒の強さ)を半数致死量LD50で比較して示します。

毒蛇の毒性比較

マムシとハブ 毒性はマムシのほうが強いので要注意

「マムシ(蝮=まむし)は小型でおとなしく、ハブに比べたら毒性も低くて危険も少ない。」
一般にはこのように思われているのですが、それは正しくありません。じつはマムシの毒性はハブよりも強く、年間に毒ヘビの咬傷事故で死亡する人のほとんどが、マムシに咬まれて尊い命を失っています。

マムシ(ニホンマムシ、まむし)

日本の毒蛇 マムシ
(画像提供:身近なカエル・ヘビ)

ニホンマムシはクサリヘビ科の毒ヘビです。南西諸島を除く日本の各地に分布し、水辺や草むら、土手、山地、森林などあらゆる場所に生息しています。
全長45-80cmほどの小型のヘビですが、毒性が強く、毎年3000人ほどが咬傷被害にあって、そのうち10名ほどが尊い命を落としています。死亡率は0.3%~0.4%ほどです。


渓流釣りや沢登りで岩場に不用意に手を突いたり、キノコ採りで落ち葉を素手で払うよう行為は非常に危険ですので十分に注意しなければなりません。

ハブ(ホンハブ)

日本の毒蛇 ハブ
(画像提供:ハブの館)

ハブは、沖縄諸島と奄美諸島に生息するマムシと同じクサリヘビ科の毒ヘビです。
体長は最大で2mを越えるものがあり、山地や森林、平地、人家の周辺まで幅広い環境に生息しています。時には餌のネズミを追って屋敷や家屋内にも侵入します。
ハブ咬傷被害の約30%がこれらの民家敷地内で生じています。一番多いのが農作業中の事故で全体の50%に達します。


毒性はマムシよりも弱いのですが、体格が大型で、咬まれると大量の毒液が注入されるため危険です。直ちに病院にいって手当を受ける必要があります。

ヤマカガシ(やまかかし)

日本の毒蛇 ヤマカガシ
(画像提供:身近なカエル・ヘビ)

ヤマカガシはユウダ科の毒蛇です。長い間無毒と考えられていましたが、1972年に中学生が噛まれて死亡する事故が起きてから、毒蛇として認識されるようになりました。上あごの奥歯(後牙)と首筋の2箇所から毒液を分泌します。
ただ、ヤマカガシは本来おとなしいヘビなので、捕まえたり誤って踏みつけたりしない限り咬まれることはありません。


半数致死量(LD50)による毒性比較

半数致死量(LD50)とは、実験動物に毒物を投与したとき、その半数が死亡する体重1kgあたりの用量(mg)をいいます。単位は「mg/kg」です。
LD50には、皮下注射・筋肉注射・静脈注射・腹腔内注射・経口投与などがあり、それぞれで数値が異なります。ヘビ毒の毒性比較をする場合には、一般に皮下注射(皮下 LD50)が使用されます。

さて、その皮下LD50で比較する「日本三大毒蛇」の毒性は次のようです。当然ながらLD50の数値が小さいほど毒性は強いことになります。

  • 第1位:ヤマカガシ LD50=5.3 (mg/kg)
  • 第2位:マムシ LD50=16 (mg/kg)
  • 第3位:ハブ LD50=54 (mg/kg)

毒性はヤマカガシが一番強く、マムシの約3倍、ハブの約10倍の強い毒性です。意外な感じがしますが、ヤマカガシが一番強い毒をもっているのです。
ヤマカガシは本来おとなしい蛇で、咬まれることはめったにありませんが、万一かまれたりしたら大変です。里山歩きをしているとよく目に付く蛇ですが、十分に注意しなければなりません。

次いで、第2位がマムシ。ハブ毒の約3.4倍の毒性です。ヤマカガシより毒性は弱いとはいえ、マムシはやはり恐怖です。落ち葉や枯れ枝にまぎれて姿が見えない、どこにいるか分からない。そんな恐怖が常につきまといます。

ヘビ毒(出血毒と神経毒)

ヘビの毒には、クサリヘビ科に代表される「出血毒」と、コブラ科に代表される「神経毒」があります。マムシやハブなどは出血毒です。

出血毒は唾液と同じ消化液が強力に進化したものです。タンパク質を溶かし血管組織を破壊していきます。 そのため咬まれるとすぐに激痛が襲い、内出血が拡大していきます。出血のため患部は腫れ上がり、ひどい場合には筋肉細胞が壊死を起こしてダメージをより深めていきます。 手当てが遅れたり、咬まれた部位あるいは注入毒量によっては循環器全体や腎臓にも障害が広がって、ひどい場合には死に至ります。

一方、コブラやウミヘビなどのコブラ科の神経毒は、神経を麻痺させて相手を動けなくする効果があります。神経毒は出血毒のような激しい痛みは伴いませんが、即効性があり、致死性が高くてきわめて危険です。
咬まれた時の症状は、しびれ、運動麻痺、知覚麻痺、呼吸困難などで、死亡率は出血毒よりはるかに高くなります。

死亡のリスクは神経毒のほうが高く、逆に出血毒は死亡リスクは低いものの細胞壊死による後遺症障害が残るリスクが高いといえましょう。

なお、ヤマカガシの毒は出血毒ですが、マムシやハブとは少し違っていて、血液凝固作用(プロトロンビンの活性化)が主な作用です。血管内に微小な凝固を発生させることで凝固因子を消費させ、逆に出血を止まらなくしてしまいます。そのため、ヤマカガシの毒を「溶血毒」と呼ぶこともあります。

ヤマカガシの毒には細胞を破壊する成分はありません。そのため腫れや痛みはほとんどなく、受傷後数時間から1日ほど経過したあとで出血傾向が現れます。全身におよぶ皮下出血、内臓出血がおこり、重篤な場合は急性腎不全や脳内出血を引き起こし死に至ります。

いずれにしても、毒蛇に咬まれないことが第一ですが、万が一にも咬まれた場合にはできるだけ早く病院で治療を受ける必要があります。病院での治療は血清投与が中心になります。

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