MERS(マーズ)のすべて
MERSコロナウイルスが引き起こす恐怖の感染症
MERS(マーズ)とはどんな感染症なのか? なぜ韓国で感染拡大しているのか? MERSの全容と症状、原因ウイルスであるMERSコロナウイルスについてまとめました。
中東諸国に続いて韓国でも猛威をふるうMERS/写真はサウジアラビアでの症例。
(画像提供:The Extinction Protocol)
中東諸国発祥のMERS(マーズ)が、お隣の国「韓国」で猛威をふるっています。
政府の初動対応がまずいと「短時間のうちに急激に感染拡大してしまう」。感染症にみられる、恐怖の感染拡大の事例です。
MERS(マーズ)の感染が韓国で明らかになったのは今年(2015年)の5月20日。それ以降、1か月もたたない間に、感染者数は165人、うち死者は23人に達してしまいました(韓国政府発表:6月18日)。
感染者数と死者の数は、いまでも増え続けています。この感染拡大をどのように抑えて、終息に向かわせるか。韓国政府の対応と手腕に、世界中が注目しています。
日本でもMERSへの警戒が強まっています。
韓国内でMERSに感染し、自宅隔離の対象となった5人(日本人2人と韓国人3人)が日本に入国したことが確認されています。いずれも、韓国政府から本人に隔離対象の連絡が届く前に入国していたようです。
日本国内でMERSの封じ込めが成功するかどうか。まさにこれからが正念場です。
中東呼吸器症候群(MERS)とは
MERSコロナウイルスによる感染症
中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)は、2012年9月にサウジアラビアで初めて確認されたウイルス性の感染症です。
MERS(マーズ)のおもな症状は「肺炎」であり、発熱、せき、息切れなどの症状が出て、重篤な場合は死に至ります。
中東地域での死亡率は約40%と高く、世界に衝撃を与えました。
MERS発症の原因ウイルス(病原体)は、MERSコロナウイルスと呼ばれています。
患者のくしゃみやせきの飛沫を吸い込んだり、手に付着したウイルスが口や鼻から体内に入ることで感染すると考えられています。
MERSコロナウイルス
MERSコロナウイルスの電子顕微鏡写真
(画像提供:Wikimedia Commons)
サウジアラビアで男性患者が急性肺炎で死亡した事例を受けて、病原体のウイルスを遺伝子解析した結果、新型コロナウイルスと確定されました。
MERSコロナウイルスは、2002~03年に流行した新型肺炎SARS(サーズ)=重症急性呼吸器症候群と同じコロナウイルスの仲間ですが、SARSコロナウイルスとは異なる、まったく新しい種です。
このMERSコロナウイルスについては、野生のヤマコウモリと家畜のヒトコブラクダから患者と同じ型のコロナウイルスが見つかっています。
そのためWHOでは、「ヤマコウモリからヒトコブラクダに感染し」、さらに「ヒトコブラクダの鼻水や唾液などを通じて人間に感染した」ものと考えています。
ヒトからヒトへの感染も、患者からの飛沫感染や接触感染によるものと思われます。
MERSの感染地域・感染国
世界保健機関(WHO)によると、MERSの感染は2015年6月16日現在、中東地域を中心に世界25ヶ国で確認されており、感染者は1,293人、死者は458人に達しています。
おもな感染国は、中東地域(サウジアラビア、UAE、ヨルダン、カタールほか)、アフリカ(アルジェリア、エジプトほか)、ヨーロッパ(イギリス、フランス、イタリアほか)、北米大陸(アメリカ)、アジア(韓国、中国)などです。
いずれの国でも、感染者は中東地域への渡航歴のある人もしくはその接触者であることがわかっています。
MERSの感染地域・感染国
(資料は朝日新聞記事 2015年6月18日による)
中東のサウジアラビア以外では、韓国における感染者数が吐出して多いことがわかります。
なぜ韓国で感染拡大したのか
韓国でのMERS(マーズ)の感染拡大は、たった一人の68歳の男性から始まりました。
この男性は、サウジアラビアやUAE、バーレーンなどの中東諸国を約2週間かけてまわり、5月4日に帰国。その6日後に発症しました。
4ヶ所の病院をまわりましたが、症状が治まらず、4つ目の病院でMERSと診断され、隔離されました。発症してから隔離されるまで10日間かかっています。
その間に、看護していた家族や同じ病室の患者、医療関係者、同じ階の別室にいた患者に次々に感染が広がってしまいました。
さらに、同病院の二次感染者が別の病院に転院し、転院先でまた医療関係者などの三次感染者を出しました。こうして病院を中心にして、MERSがどんどん拡大していったのです。
感染拡大の背景には、韓国ではMERSが「法定感染症」に指定されておらず、病院関係者も韓国政府も、MERSの危険性について認知度が低かった点が挙げられます。
そのため、最も大事な初期対応において、迅速な対応が採れませんでした。これが感染拡大を招いてしまった最大の原因です。
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