スズメバチの種類
スズメバチは民家の近くや畑、公園、野原、山林などで普通に見られる生物です。バーベキューをしたときに飲み残したジュースを飲みに来ることもあるので、アウトドアを楽しむ人なら何度かお目にかかっているはずです。
このスズメバチですが、日本にはスズメバチ属(7種)、クロスズメバチ属(5種)、ホオナガスズメバチ属(4種)の合計3属16種が生息しています。中でもスズメバチ属のオオスズメバチとキイロスズメバチによる人身事故が最も多く発生しています。
■オオスズメバチ
名前が示すとおりスズメバチ類の中で最も大型のハチです。女王バチで40〜45mm、働きバチでも30〜40mmの大きさになります。強烈な毒をもち、かつ攻撃性も非常に高いことから十分な注意が必要です。
巣は倒木や地面などの閉鎖空間に作られます。そのため、巣を発見するのが難しく、気がつかないで巣に接近して襲撃されることが多いようです。
オオスズメバチは縄張り意識が強く、巣の周辺だけでなく樹液がある餌場においても威嚇行動や攻撃を仕掛けてくることがあるので注意が必要です。
■キイロスズメバチ
比較的小型のハチで、女王バチで25〜30mm、働きバチで20〜25mm程度です。からだの模様の黄色の部位が広く、全身が黄褐色の長毛で覆われているのでほかのスズメバチと区別できます。
巣は樹洞などの閉鎖的な場所から、木の枝などの開放的な場所、さらには民家の軒下や天井裏、床下など様々な場所に作られます。
オオスズメバチと並んで攻撃性が非常に高く、巣の近くを通っただけで攻撃されるともあります。スズメバチ類の刺傷事故では、このキイロスズメバチによるものが最も多く、この意味では最も危険なハチです。

アブラゼミを狩るオオスズメバチ
地中のオオスズメバチの巣(駆除後)

吸蜜するキイロスズメバチ
(写真提供:都市のスズメバチ)4枚とも
軒下に作られたキイロスズメバチの巣
スズメバチの習性
スズメバチは、ミツバチと同じようにハチの中でも最も社会性を発達させたハチです。大きな巣を作って、共同で巣を守り、子孫を育てます。
秋に交尾して越冬した女王バチは、種類によって多少のズレはありますが、翌春5月上旬頃から営巣を開始します。最初は女王バチ一匹だけで巣を作り、働きバチ(メス)の卵を産みます。第一世代の働きバチが羽化するのが6月〜7月で、それ以降急速に巣を拡大しながら個体数を増やしていきます。
巣の勢力が拡大した8月中旬頃からは、次世代を託すオスバチと少し遅れて新女王バチの卵が産み付けられます。スズメバチにとってはとても大事な時期を迎えます。
産卵から約1ヵ月。オスバチと新女王バチが羽化する9月中旬から10月下旬頃にかけてが、次世代にバトンを渡す繁殖時期になります。
先に羽化したオスバチが巣穴の外で待機して、後から羽化して出てくる新女王バチを待ちます。交尾は巣の外でしますが、無事に仕事を終えた新女王バチは朽木に穴を掘って一匹だけで越冬し、春の営巣に備えます。一方、オスとしての大役を無事に終えたオスバチと、巣を守りきった働き蜂はすべて死んでしまいます。
スズメバチは新女王バチ一匹だけで越冬して、翌春に新しい生命を繋げるのです。
スズメバチによる死亡事故
毎年秋になると、日本各地でスズメバチに刺されて死亡する事故が多数発生します。
厚生労働省の人口動態調査によると、ハチに刺されて死亡した人は、1983年から2004年までの22年間では毎年20人〜50人程度にのぼり、平均は34人でした。最も多い年は1984年で、犠牲者数は73人でした。この統計値は「スズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触」で死亡した人の総数ですが、ほとんどはスズメバチの犠牲者だと考えてもかまいません。
すなわち、スズメバチの襲撃で、年間平均30人強の尊い命が奪われていることになります。
ハチの毒針は産卵管が変化したものなので、刺すのはメスだけです。巣を守る働きバチ(メス)が、外敵を襲撃する役割も担っているのです。
これらの死亡事故は毎年8月〜10月に集中しています。9月が最も多くなります。ちょうどこの時期は、上でも述べたようにスズメバチのコロニーが発展し繁殖期を迎える時期であり、外敵から巣を守るためにコロニー全体がピリピリした緊張状態にあります。
こんな折に人が不用意に巣に近づけば、外敵だと見なされて攻撃を受けるのは、ある意味では当たり前です。
近くにスズメバチが飛んでいないか、威嚇行動をとっていないか、野山に入ったら注意深く観察しながら歩く必要があります。
死亡原因はアレルギー性ショック死(アナフィラキシーショック)
スズメバチの毒には強力な溶血作用その他の生理作用があります。ただし数箇所刺されたくらいの毒量では死ぬことはありません。91箇所も刺されれば別ですが、通常、人が死ぬのはほとんどの場合、過剰な抗原抗体反応(免疫反応)に伴うアレルギー性ショック死です。
過去にハチに刺された経験があると、体内にはハチ毒による抗体が作られます。二度目にハチに刺されたときに、稀に抗原(ハチ毒)によるアレルギー反応が生じる人がいます。このアレルギー反応は、発症までの時間が極めて短い即時型反応(T型)で、短時間(数分〜30分以内)のうちにアレルギー症状が表れます。
このうち,呼吸困難や血圧低下などの全身的な反応をアナフィラキシーと呼び、生死に関わる重篤な症状を伴うものをアナフィラキシーショックといいます。症状がでるまでの時間が短いほど重症になる可能性が高く危険です。
スズメバチに刺されないために
スズメバチによる刺傷事故は、ほとんどの場合山林やその周辺で起きています。
都市部や民家の周辺では意外に少ないんですが、冒頭の死亡事例のように民家のすぐ近くでも事故は起きていますので、普段の生活でも十分な注意が必要です。
山の中では医療機関が近くにないために、手遅れとなるケースもあります。
スズメバチに刺されないためには、何といっても巣に近づかないことが第一です。山中ではスズメバチの巣を目視確認することはなかなか難しいのですが、多くの場合、スズメバチ自身が近くに巣があることを教えてくれます。
・飛んでいるスズメバチを見つけたら飛行コースを良く見きわめてください。
・急に藪の中に入ったらそこに巣がある可能性があります。
・身体の周りをスズメバチが飛び始めたら10m以内に巣があります。すでに危険ゾーンに踏み入れています。
・さらに近づくと、スズメバチが目の前に飛んできて、顎を打ち鳴らして「カチカチ」という警告音・威嚇音を発し ます。この音はスズメバチの最後通告です。この通告なしに突然刺されることもあります。
・1回刺されると次は集中攻撃される可能性があります。直ちにゆっくり後退してその場を離れましょう。警告音が 聞こえた場合も同様です。
・スズメバチを追い払うために手を上げたり、急な動作をしてはいけません。外敵と認識され、それこそスズメバチの大群に集中攻撃されることになります。
スズメバチはミツバチと違って毒針を刺しても死ぬことはありません。毒針はかんたんに抜けて、毒がある限り何度でも刺すことができます。
9月〜10月に秋の山野で活動する場合には十分注意してください。11月ごろまでは気を抜かないことが大切です。
スズメバチに刺されたときの処置
スズメバチの外敵は巣を襲って幼虫やサナギを食べる哺乳動物です。熊だという説があります。だから、毛皮の黒い色に攻撃を仕掛けてくるのだとも言われます。
人がスズメバチに刺されるのも、大概の場合は(黒髪がある)頭部です。また青色の服やズボンなどにも反応しますが、複眼のスズメバチには青色が黒っぽく見えるのでしょう。
一方で、黒い色は外敵の急所である目の瞳の色だとの説もあります。そういえば頭部の中でも、とりわけ顔面を刺されることが多いように思われます。
私は子供の頃、アシナガバチの巣にいたずらをしてよく刺されましたが、刺された場所は大概は目の近くでした(瞳を刺されたことはありませんでしたが・・・)
スズメバチの攻撃を避けるためには白い帽子を着用して、服装もできるだけ白っぽい色にしておくほうがいいようです。
さて、スズメバチにさされた場合の処置ですが、次のようにします。
・刺された部位から(可能なら)毒液を素早く絞りだす。
・毒は水溶性なので水で洗い流す。
・すぐに病院に行く。
アレルギーがなければ数箇所刺されたくらいでは問題ありません。ただ、刺傷後早い段階(数分〜30分以内)で全身のじんましん、めまい、意識障害、呼吸困難などのアレルギー症状が見られる場合は危険ですので、できるだけ早く病院に行けるよう最善を尽くさなければなりません。
なお、昔からの民間療法でハチ刺されにはアンモニアが利くというのがありますが、これは真っ赤なウソです。ハチ毒はほぼ中性のため、アンモニア水(アルカリ性)での中和は無意味です。またオシッコをかけるといいとの説もありますが、これも単なるデマ。神話です。不快なだけで何の効果もありません。

