毒の作用~中毒とは
(急性中毒と慢性中毒)

中毒とは「毒に中(あた)る」こと。私たちの身の回りにはたくさんの中毒が存在します。急性中毒・慢性中毒にご注意を!

地下鉄サリン事件で駅構内の毒成分の検知をする自衛隊員
地下鉄サリン事件で駅構内の毒成分の検知をする自衛隊員
(画像提供:時事通信社)

毒キノコやフグ毒による食中毒、一酸化炭素中毒、有機水銀中毒、砒素中毒、急性アルコール中毒、有毒ガス中毒などなど・・・。私たちの身の回りにはたくさんの中毒が存在します。中毒とはいったい何なのでしょうか?
ここでは、私たちの暮らしの中で、安心・安全を脅かす「中毒」について考えます。

中毒とは、「毒に中(あた)る」こと。
中毒を起こす毒には、植物毒、動物毒、鉱物毒、微生物毒などの天然毒のほかにも、人工的に合成した化学物質、農薬、有毒ガスなど、じつに様々な物質があります。

地下鉄サリン事件とは~1995年3月20日、東京の地下鉄内で神経ガスのサリンが撒かれ、13人が死亡、6,300人が負傷した事件。宗教教団オーム真理教の一部指導者層が実施したとされる。

身近に潜む中毒=毒の作用

中毒とは何か~急性中毒と慢性中毒

中毒とは、「毒に中(あた)る」の意味であり、生体に対して毒性を持つ物質が許容量を超えて体内に取り込まれることにより、生体の正常な機能が阻害されることです。 毒の作用の仕方によって、急性中毒慢性中毒とに区分されます。

急性中毒とは、強力な毒物が体内に入ることで起こる急激な毒性反応です。食中毒、毒ヘビ咬症、毒ガス吸引で起こる中毒症状などがこれに当たります。
一方、慢性中毒とは、長期間にわたって少量ずつ体内に毒性鉱物や化学物質が貯留することで起こる中毒をいいます。有機水銀中毒や慢性ヒ素中毒などがこれに当たります。

なお、麻薬中毒やアルコール中毒のように依存症を形成する原因物質では、必ずしも毒素が体内に蓄積するわけではありませんが、薬物摂取による微小な組織・機能障害が蓄積されて重篤な身体症状となるものです。少量の摂取を続ければ慢性中毒になり、大量の薬物を一度に摂取すれば急性中毒になり死亡のリスクが高まります。

中毒の症状

中毒の症状は、原因となる毒物の種類によってまちまちです。たとえばシアン化ナトリウム(青酸ソーダ)やサリンなどは、摂取・暴露後にすぐに症状が現れ、量によっては数分以内に死に至ります。一方、ドクツルタケの毒素アマニチンなどでは、食後数時間以上たたないと下痢などの諸症状が現れず、それらの初期症状を乗り切ったあともしばらくたたなければ致死的な症状が発現しません。

また全身症状にも毒素による違いがたくさんあります。中毒は全身が万遍なく具合が悪くなるものばかりではなく、特定臓器に被害が集中する場合も多くあります。たとえばメタノールは少量摂取しただけでも目に障害が現れ失明するケースが多く、パラコートは肺に重篤な損傷を与えます。タリウム中毒では脱毛が著しく見られるなど、毒物の種類によって特徴的な所見を示します。

いろいろな急性中毒

急性アルコール中毒
美味しいお酒も、量が過ぎれば「毒」になります。急性アルコール中毒は、短時間に多量のアルコール(エタノール)を摂取することによって生じる中毒です。
アルコールは脳を麻痺させる性質を持っています。アルコールを摂取すると、麻痺は大脳辺縁部から脳幹部にまで進み、最終的には生命維持にかかわる脳の中枢部分までもを麻痺させて、呼吸機能や心拍機能を停止させて死に至ります。血中アルコール濃度が0.4%を超えると、1~2時間で約半数が死亡します。

フグ毒テトロドトキシンによる食中毒
摂食後の20分程度から数時間で症状が現れます。テトロドトキシンは強力な神経毒で、神経細胞や筋線維の細胞膜に作用して神経伝達を遮断して麻痺を起こします。そのため、意識が明瞭であっても筋肉麻痺は急速に進行し、呼吸困難や血圧降下を引き起こして24時間以内に死亡する場合が多い。
テトロドトキシン中毒に対する解毒方法は現時点ではありません。そのため、人体内で毒素が代謝によって分解されるまでの間、ひたすら人工呼吸などで生命を維持できるかどうかが生死の分かれ道になります。

一酸化炭素中毒
一酸化炭素は酸素の約250倍も赤血球中のヘモグロビンと結合しやすく、容易にヘモグロビンと結合して酸素の結合を阻害します。また、一酸化炭素がひとつでも結合したヘモグロビンは、他の結合酸素も放出しにくくなる性質があるため、血液の酸素運搬能力が極端に下がり、末梢の細胞で酸素不足になって中毒症状を起こします。
一酸化炭素中毒では、最初は頭痛・耳鳴・めまいなどが出現しますが、風邪の症状に似ているため中毒とは気が付かない場合が多い。そのうちに体の自由が利かなくなり、急速に昏睡に陥ります。やがて呼吸や心機能が停止して死に至ります。

急性砒素中毒
有機砒素よりも無機砒素のほうが高い毒性をもっています。
無機砒素の亜砒酸(あひさん)を経口摂取すると、体内のさまざまな組織や酵素のSH基と結合し、重要な代謝酵素が阻害されます。ヒ素中毒の症状は多岐にわたりますが、一般には、おう吐、下痢、腹痛などの消化器症状をはじめ、血圧低下、脱力感、頭痛、皮膚の紅斑、結膜炎などの全身症状が起こります。重篤な場合は多臓器不全などで死に至ります。
亜砒酸はシロアリ駆除剤などに使われ、比較的ありふれた薬品です。無味無臭でもあることから、昔から自殺や他殺にしばしば使われてきました。砒素を使った犯罪では、森永ヒ素ミルク中毒事件や和歌山毒物カレー事件が有名です。

青酸カリによる急性中毒
シアン化カリウム(青酸カリ)は、毒物の代名詞的存在ですが、工業的に重要な無機化合物です。鉱石や廃材から金・銀類を抽出したり(冶金)、電気メッキ法で金・銀・銅、亜鉛、真鍮などをメッキ(鍍金)するときなどに使用されます。
中毒症状としては、吸入あるいは内服後、数秒~1分程度で失神、痙攣、呼吸麻痺が生じ死亡します。ごく少量で死に至ることから、しばしば中毒死を目的として毒殺や自殺に利用されてきました。
強烈な毒性があるため、類似のシアン化ナトリウム(青酸ソーダ)とともに、毒物及び劇物指定令で「シアン化合物」として毒物に指定されています。

いろいろな慢性中毒

ニコチン中毒
ニコチンは揮発性がある無色の油状液体で、主にタバコの葉に含まれる有毒物質です。即効性の非常に強い神経毒性を持ち、半数致死量はヒトで0.5mg~1.0mg/kgと猛毒です。その毒性は青酸カリの2倍以上に相当します。子供などが誤ってタバコを食べたりしたら急性中毒で死亡する危険があります。
ニコチンは主に中枢神経に作用し、脳の広い範囲に影響を与えます。タバコをはじめて吸ったり、久しぶりに吸うと頭がクラクラして呼吸が苦しくなる急性中毒症状を示します。ただ、ニコチン自体は依存性はあるものの、ニコチンを吸い続けても、他の依存性薬物のような精神毒性はありません。
ニコチン中毒とは、ニコチンによる純粋な中毒というよりも、喫煙によリ吸収された多数の有害成分による中毒ととらえるべきものです。「ニコチン依存症」ともいいます。

有機水銀中毒
水銀中毒とは、水銀に接触あるいは体内摂取するなどにより生じる中毒症状です。このうち、メチル水銀などの有機水銀を摂取したことで起きる中毒を有機水銀中毒といいます。水銀の化合物は単体の水銀よりもはるかに高い神経毒性を示し、とりわけ有機化合物の毒性は顕著です。
1956年に熊本県で発生した水俣病は、メチル水銀による有機水銀中毒事件として世界的に有名です。工場廃液に含まれたメチル水銀が魚介類等に蓄積し、それを食べた大勢の沿岸住民が中毒を起こしました。
有機水銀中毒の症状は、脳・神経細胞が破壊される中枢神経疾患であり、四肢末端の感覚障害、運動失調、視野狭窄、聴力障害、平衡機能障害、言語障害、手足の震えなどが生じます。重篤な場合は、狂乱状態におちいり、意識不明・死に至ります。

慢性砒素中毒
慢性ヒ素中毒は、高濃度のヒ素を含有した水を長期間にわたって飲用することなどによって起こります。地下水のヒ素汚染が原因となることが多い。また、飲料水以外でも、たとえば絵の具の色素にも砒素が含まれているものがあり、画家や職人が長期間の暴露で慢性砒素中毒にかかった例もあります。
慢性砒素中毒は、砒素が体内に入ってから数年~十数年経過してから発生します。症状としては、皮膚の色素沈着、白斑、角化症(皮膚が盛り上がって硬化する)、皮膚癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、壊疽などです。肝機能障害や末梢血管障害、貧血などもおこります。

麻薬中毒(薬物中毒・薬物依存症)
麻薬中毒とは、アヘン、モルヒネ、ヘロインなどの薬物服用による中毒症状です。日本の法律「麻薬及び向精神薬取締法」(旧麻薬取締法)によると、前記のほかにコカイン、LSD、MDMA(合成麻薬)なども麻薬として取り扱われています。
麻薬は、脳に作用して中枢神経を麻痺させ、陶酔感や多幸感をもたらします。ただ、強力な依存性があり、連用すると急速に耐性を形成して、身体的な離脱症状を伴う「薬物依存症」に陥ります。
麻薬は作用量と致死量とがきわめて近い薬物です。使用量が増えると死に直結するリスクが高まります。強い麻酔作用と鎮痛作用があるため医療用に利用されますが、それ以外は所持・販売・使用が世界各国で禁止されています。

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