マムシのすべて! ニホンマムシ(まむし)
マムシの生態 ナマ情報

マムシは小型のヘビですが、毒性が強く、毎年3000人ほどが咬傷被害にあって、そのうち10名ほどが尊い命を落としています。マムシにご注意を!

マムシの毒牙。マムシやハブなどのクサリヘビ科の毒蛇は強力な出血毒を持っています。咬まれたら大変です。マムシを徹底解剖~ニホンマムシ(まむし)
マムシの毒牙(画像提供:日本蛇族学術研究所)

マムシ(蝮=まむし)は小型でおとなしく、ハブに比べたら毒性も低くて危険も少ない。」
一般にはこのように思われているのですが、それは正しくありません。

じつはマムシの毒性はハブよりも強く、年間に毒蛇の咬傷事故で死亡する人のほとんどが、マムシに咬まれて尊い命を失っています。

厚生労働省の人口動態調査によると、1997年から2004年の間に、毒蛇に咬まれて死亡した人は毎年4~18人いました。平均すると年間約10人ほどが毒牙にかかって死亡しています。そのほとんどがマムシによる咬傷被害なのです。

マムシは水田や畑、野原、山林、水辺など、私たちが普段生活をしたり、アウトドア趣味を楽しむ環境の中に普通に棲息しています。言わば私たちは、マムシと一緒になって生活しているのです。このことを忘れてはいけません。

マムシこそ危険毒蛇ナンバーワン

マムシの生態と特徴

マムシ(ニホンマムシ、まむし)

川べりの湿地帯に棲息するマムシ
川べりの湿地帯に棲息するマムシ
(画像提供:身近なカエル・ヘビ)

ニホンマムシはクサリヘビ科の毒ヘビです。南西諸島を除く日本の各地に分布し、水辺や草むら、土手、山地、森林などあらゆる場所に生息しています。 おもにネズミなどの小型哺乳類や、カエル、トカゲなどを捕食しています。

マムシは全長45-80cmほどの小型のヘビですが、毒性が強く、毎年3000人ほどが咬傷被害にあって、そのうち10名ほどが尊い命を落としています。マムシ咬傷の死亡率は、0.3%~0.4%ほどです。


マムシの特徴

岩陰に身を寄せるマムシ
こちらは岩陰に身を寄せるマムシ
(画像提供:身近なカエル・ヘビ)

マムシの特徴は、茶褐色のずんぐりした体と三角頭、それと銭形模様とよばれる「丸描いてチョン」の独特の迷彩模様です。茶褐色の丸い模様の中央に暗色の斑点があります。

この特徴はよく覚えておいてください。こんな模様の蛇に出くわしたら、決して近寄らないことです。


マムシは夜行性だといわれていますが、昼間でも、半日陰の雑木林やじめじめした水辺や草むらでは餌を求めて活動したり、木の根や岩陰に潜んでいることがあります。不用意に踏み込むと危険です。

ハブより強いマムシの毒性~半数致死量(LD50)による毒性比較

半数致死量(LD50)とは、実験動物に毒物を投与したとき、その半数が死亡する体重1kgあたりの用量(mg)をいいます。単位は「mg/kg」です。

LD50には、皮下注射・筋肉注射・静脈注射・腹腔内注射・経口投与などがあり、それぞれで数値が異なります。ヘビ毒の毒性比較をする場合には、一般に皮下注射(皮下 LD50)が使用されます。

さて、その皮下LD50で比較する「日本三大毒蛇(マムシ・ハブ・ヤマカガシ)」の毒性は次のようです。当然ながらLD50の数値が小さいほど毒性は強いことになります。

  • 第1位:ヤマカガシ LD50=5.3 (mg/kg)
  • 第2位:マムシ LD50=16 (mg/kg)
  • 第3位:ハブ LD50=54 (mg/kg)

意外なことに、一番強いと思われているハブ毒が第三位で、マムシが第二位。マムシの毒は、ハブ毒の約3.4倍の毒性です。

もちろんハブは体格も大きく、一回あたりの毒の注入量が多いため危険な毒蛇であることには変わりはありませんが、毒性で比較するとマムシ毒の方がはるかに強いのです。
しかも、マムシは日本全国に広く分布しているため、アウトドア趣味で私たち人間と接触する機会も多く、それだけ危険性も高くなります。

マムシの毒(激痛と筋肉壊死をともなう出血毒)

マムシやハブなどクサリヘビ科に属する毒蛇は出血毒が主体です。実際には神経毒も一部含まれていますが、大部分の毒成分は出血毒です。

出血毒は、唾液と同じ消化液(消化酵素)が高度に進化したものです。タンパク質を溶かし血管組織を破壊していきます。

そのためマムシに咬まれると、しばらくして激痛が襲い、内出血が拡大していきます。出血のため患部は腫れ上がり、ひどい場合には循環障害のため筋肉細胞が壊死を起こしてダメージをより深めていきます。
手当てが遅れたり、咬まれた部位あるいは注入毒量によっては循環器全体や腎臓にも障害が広がって、重篤な場合は死に至ります。

出血毒は神経毒に比べて致死率は低いですが、血管や筋肉の細胞を破壊するために激しく痛み、また筋肉壊死を引き起こすため、たとえ一命を取り留めたとしても、手足切断や高度の後遺症が残るなど、悲惨な結果を迎えることが多くあります。

マムシの生態画像(抜粋)

落ち葉に身を隠すマムシ

落ち葉に身を隠すマムシ
(画像提供:日本蛇族学術研究所)

マムシの銭形模様が見事な保護色になっています。こうなると、ちょっと見ただけではどこにマムシが潜んでいるのかよく分からないですね。

この「見えないところ」がマムシの怖いところ。キノコ狩りなどで山中に入るときには、マムシの存在に充分注意する必要があります。


石垣に潜むマムシ

石垣に潜むマムシ
(画像提供:ひめじの森だより)

マムシは石垣にもいます。キャンプ場の石垣、川岸の石垣、散策路の脇の石垣・・・。
石垣にもたれかかったり手を付いたりするときは、念のために事前に、穴の中も確認しましょう。


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マムシに咬まれた場合の対処法

マムシに噛まれるのは、大概は人間の不注意によって発生します。水辺の草むらに不用意に踏み込んだり、岩の隙間に手をかけたり、落ち葉を手で払ったり・・・ たまたまそこにマムシが潜んでいたら咬まれることがあります。

いずれにしても、マムシに咬まれないことが第一ですが、万が一にも咬まれた場合にはできるだけ早く病院で治療を受ける必要があります。

マムシ咬傷の応急処置としては「傷口を切開しない、強く縛らない、慌てない」ことが大事です。

傷口を切開しても、傷の治癒に時間がかかるだけで、マムシ毒を排除する効果はあまり期待できないようです。せいぜい咬み傷周辺を指で強く圧迫して、血液とともに毒を絞り出すくらいが良いでしょう。

また以前は、傷口より心臓に近い部位を軽く縛ることが推奨されていましたが、現在では縛らない方が良いとされています。縛っても効果はほとんどなく、逆に出血毒を滞留させることで筋肉壊死をひどくさせるなどの悪影響が指摘されています。

毒素の廻りはそれほど速くないので、まずは落ち着いて行動しましょう。周辺の人々の協力も得て、なるべく安静を保つようにして病院に行き治療を受けます。病院での治療は血清投与が中心になります。

マムシの抗毒血清

マムシの抗毒血清は、現在は馬の血液から作られています。マムシから採取した毒液をごく少量だけ馬に注入して、約半年をかけて体内でその毒の抗体を作らせてから「血清」として精製します。だいたい馬一頭から300本ほどの抗毒血清を作ることができます。

この抗毒血清にはマムシ毒の抗体が入っていますので、これをマムシに咬まれた人間に注入することで、抗体がヘビ毒の成分を攻撃して無毒化させ、毒の影響を取り除く(または弱める)というわけです。

 ※詳しくは ⇒抗毒血清とは|血清はなぜ効くのか?

赤マムシ・黒マムシ(マムシの体色変異)

マムシの体の色って、茶褐色だけだと思ったら大間違いです。赤あり、黒あり多様です。俗に赤マムシ・黒マムシとも呼ばれます。

マムシに限らず、蛇の仲間は体色変異が激しいことでも有名です。個体差や生息地域によって、いろいろな色のマムシがいます。白いマムシだっているかもしれません。 どんな色のマムシに出会ってもあわてないように、しっかりその特徴をつかんでおいてください。

 ※詳しくは ⇒赤マムシ 黒マムシ~まむしの体色変異

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