人食いバクテリア
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の恐怖

人食いバクテリア~溶連菌と呼ばれる「A群溶血性レンサ球菌」が正式名称。感染すると手足の筋肉が急激に壊死し、多臓器不全などを引き起こして死に至ります。恐ろしい感染症です。

人食いバクテリア。正式名称はA群溶血性レンサ球菌。劇症型溶血性レンサ球菌感染症(いわゆる人食いバクテリア症)を引き起こします。
人食いバクテリア(A群溶血性レンサ球菌)の顕微鏡写真
(画像:愛知県衛生研究所)

手足の筋肉が急激に壊死し、感染後1~2時間で死に至ることがある恐ろしい感染症。正式名称は劇症型溶血性レンサ球菌感染症といい、溶連菌と呼ばれる「A群溶血性レンサ球菌」(俗称:人食いバクテリア)の感染によって発症します。

国立感染症研究所によると、2014年は劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症事例が世界規模で拡大しており、日本でも12月14日現在で患者数は263人になりました。調査を始めた1999年以降で、最も多くなっているとのことです。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症に感染すると、手足の筋肉が急激に壊死し、多臓器不全などを引き起こします。致死率は約30%と高く、たとえ一命を取りとめてたとしても手足の切断など重篤な後遺障害が残る危険性があります。

死者多数/日本で・世界で猛威

劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは、A群溶血性レンサ球菌が原因菌となって発症する感染症で、突発的に発症し、手足の筋肉が壊死するとともに、急速に多臓器不全に進行する敗血症性ショック病態です。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症に感染した50歳代男性の左足

画像は劇症型溶血性レンサ球菌感染症に感染した50歳代男性の左足です(画像提供:北里大学北里生命科学研究所)。

患者は、発熱と全身倦怠感を訴えて来院。左足背部(足の甲)に痛みがあり、腫脹(腫れ)が認められます。

細菌感染が疑われたため外科に入院。
入院後、抗菌剤を使用するも次第に悪化。筋肉壊死が進行。膿からA群溶血性レンサ球菌(GAS)が検出されました。

米国で最初の症例

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、1987年に米国で最初の患者が見つかりました。
その後、ヨーロッパやアジアからも同様の症例が報告されています。

日本では1992年に最初の症例が報告され、以降毎年100-200人の患者が確認されています。

世界の発症者は年々増加する傾向を示し、近年では毎年66万人に達すると言われています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症の症状

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌が喉などの粘膜や身体の傷口から侵入することで発症し、血流にのって急速に全身に広がります。増殖スピードが極めて速いのがこの感染症の特徴で、発病後は急激に病状が進行していきます。

初期症状としては、まず四肢の疼痛、腫れ、発熱、血圧低下などが見られます。
発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、多臓器不全などを引き起こし、ショック状態から死に至ることも多くあります。死亡率は約30%と細菌感染症の中でも高率です。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子供から大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、とりわけ50歳代から60歳代をピークに、30歳以上の大人に多く発症すると言われています。

基礎疾患として、がんや糖尿病、肝疾患を患っている人がかかりやすいとも言われますが、実際には、いたって健康な男女に突然発症するケースも多いようです。妊産婦が発症する事例も見受けられます。

A群溶血性レンサ球菌(人食いバクテリア)とは

A群溶血性レンサ球菌は、レンサ球菌属に属する真正細菌の一種で、鞭毛をもたず、球菌が数珠状に連なっているのが特徴です。
光学顕微鏡で観察すると、冒頭写真に見られるように菌が一定方向に分裂・増殖して、レンサ(連鎖)状に見えることから、レンサ球菌と名付けられました。レンサは通常、カタカナで表記します。

A群溶血性レンサ球菌は、血液寒天培地で培養すると発育集落(コロニー)の周囲に透明な溶血環が認められるβ溶血を示すことと、レンサ球菌の鑑別に用いられるランスフィールド抗原分類のA群に属することから、臨床医学分野ではA群β溶血性レンサ球菌とも呼ばれています。
また、略称としてA群レンサ球菌やA群溶レン菌、あるいは単に溶レン菌(溶連菌)と呼ばれたり、GAS(Group A Streptococci)あるいは化膿レンサ球菌と呼ばれることもあります。

残念ながらこれまでのところ劇症型レンサ球菌感染症を引き起こすことに直接関係した毒素は見つかっていませんが、A群溶血性レンサ球菌が産生するストレプトリジンやストレプトキナーゼなどの酵素やたんぱく質が、組織破壊による感染巣の拡大や劇症例発症に大きく寄与しているのではないかと考えられています。
また、宿主であるヒトの毒素に対する感受性の強弱なども関係していると考えられます。

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