侵略的外来種リスト・424種
生態系や人の健康に被害を及ぼす生物
外来種の中から、その地域の在来種に絶滅の危機を与えかねない種を選定。侵略的外来種として424種を指定しました。
ヌートリア/侵略的外来種リストでは「緊急に対策する種」に指定
(画像:吹田市周辺の生き物)
侵略的外来種とは、外来種の中でも、移動先で分布拡大したときに、在来種の絶滅につながるおそれがあるなど、とりわけ生態系や人間の生活に大きな影響を及ぼす生物を指します。
外来種というと「海外から持ち込まれた生物」というイメージがありますが、本来は海外生物に限定して適用されるものではなく、日本国内の在来種でも、たとえば伊豆諸島に生息するニホンイタチのように、もともとその地域に生息していなかった生物が持ち込まれて定着した場合は、その地域から見れば外来種ということになります。
ニホンイタチも、伊豆諸島の在来種の小型動物を捕食し、島固有の動物相に深刻な変化を与えて問題になっています。
環境省と農林水産省の専門家会議は2014年11月、ワニガメやセアカゴケグモなど動植物424種を掲載した「侵略的外来種リスト」案を了承しました。
今後のパブリックコメントを経て、駆除や管理の方法を盛り込んだ行動計画とともに公表されます。
侵略的外来種
侵略的外来種リスト(要旨)
わが国には、国内の多様な生態系を保全し、国民の生命・身体および農林水産業への被害防止を図る目的で、「外来生物法」という法律が施行されています。
ところが、この外来生物法は、海外からの移入種に焦点を絞っているために、国内での在来種の移動の問題を規制できないという課題がありました。また、外国起源の生物のうちのわずか112種のみしか規制されないなどの問題点も指摘されていました。
そこで規定されたのが、今回の424種の「侵略的外来種リスト」なのです。
侵略的外来種リストでは、外来生物法に規定する112種の特定外来生物に加えて、定着の可能性や甚大な人的・経済被害を生む恐れがある生物(合計424種)が選定されました。
国内外来種のリスト化は今回が初めてであり、伊豆諸島などのニホンイタチをはじめ、動物18種と植物10種が明記されました。
これらの生物は、移動先ですでに定着しているか未定着かに区分したあとで、「緊急に対策する種」や「侵入を予防する種」など6種類に分類整理されています。
①【定着】~総合的に対策が必要な外来種
移動先ですでに定着している種のリストです。総合的な対策が必要です。(表中、☆印は国内由来の外来種)
- 緊急に対策する種
- 49種
- タイワンザル、アライグマ、ヌートリア、カミツキガメ、グリーンアノール、タイワンハブ、セアカゴケグモ、オオキンケイギク、☆伊豆諸島などのニホンイタチ ほか
- 重点的に対策する種
- 112種
- ハリネズミ属、ハクビシン、ドブネズミ、アカミミガメ、ウシガエル、アフリカマイマイ、オオブタクサ(クワモドキ)、☆北海道・佐渡のテン、☆徳之島などのニホンイノシシ ほか
- 対策が必要な種
- 144種
- リスザル、アフリカツメガエル、チュウゴクスッポン、ソウギョ、グッピー、ムラサキイガイ、アメリカネナシカズラ、☆琵琶湖・淀川以外のハス、☆東北地方などのモツゴ ほか
- 管理が必要な産業上
重要な種
- 18種
- ニジマス、ブラウントラウト、セイヨウオオマルハナバチ、ハリエンジュ(ニセアカシア)、カモガヤ(オーチャードグラス) ほか
■ヌートリア
(画像:北摂の生き物)
南アメリカ原産のネズミ目に属する哺乳動物。わが国には1939年、軍隊の防寒服用の毛皮を採取するために移入されました。
戦後に遺棄されたものが定着し、現在、愛知県から広島県にかけての本州中部を中心に生息しています。水際に穴を掘って巣を作るため、堤防や法面などに決壊や崩壊などの危害を加えます。
■グリーンアノール
(画像:神戸新聞)
米国南東部やキューバ、メキシコに生息するトカゲ亜目イグアナ科のトカゲです。
1960年代以降に、米軍物資に紛れ込んだりペットとして持ち込まれた個体が小笠原諸島に定着したといわれています。その後、沖縄群島に拡大しました。貪欲な肉食性で、多くの昆虫類に壊滅的被害を与えています。
■オオキンケイギク
(画像:野草図鑑)
北アメリカ原産のキク科の植物です。1880年代に園芸花卉として輸入され、その後もガーデニングやワイルドフラワー緑化に用いられてきました。
河川敷や道端の一面を美しい黄色の花々で彩る本種は愛好家にも人気がありますが、繁殖力が高く、とりわけカワラナデシコなどの貴重な在来種に悪影響を与えています。
②【未定着】~定着を予防する外来種
移動先でまだ定着していない種のリストです。侵入や定着を予防する対策が必要です。
- 侵入を予防する種
- 26種
- ジャワマングース、オンシツガエル 、ヒアリ、アフリカミツバチとアフリカ化ミツバチ、ヨーロッパミドリガニ、ビーチグラス ほか
- 定着を予防する種
- 75種
- フクロギツネ、フェレット、ワニガメ、ブラウンアノール、ヘリグロヒキガエル、ガー科(魚類)、ヨーロッパナマズ、アメリカハナノキ(ベニカエデ) ほか
■ワニガメ
(画像:鳳のボディビルな日記)
アメリカ合衆国の固有種で、カミツキガメ科ワニガメ属に分類されるカメ。最大甲長80cm、体重150kgにも達する大型種で、性質は荒く、手や足などに咬みつかれたら大変です。
日本ではペットとして飼育されていた個体の一部が投棄・逸出していると考えられます。ワニガメは悪食で、定着した場合は在来種への影響が避けられません。
■ガー科(魚類)
(画像:八景島シーパラダイス)
北アメリカ~中央アメリカに生息する大型魚類で、悪食・大食漢で知られています。スポッテッドガーやアリゲーターガーなど2属7種がいます。(写真はアリゲーターガー)
多摩川や鶴見川をはじめ、日本のいくつかの河川にもすでに移入が確認されています。
↓↓ タイトルをタップ/クリック(内容表示)