マウイイワスナギンチャク
猛毒パリトキシンをもつイソギンチャクの仲間
マウイイワスナギンチャクは「世界の猛毒生物ランキング」の第1位。世界一強い毒をもつ生物です。マウイイワスナギンチャクの猛毒の秘密に迫ります。
マウイイワスナギンチャク/最強の毒蛇インランドタイパンよりもはるかに強い毒をもつ。
(画像:マウイの宿 ハレ プアマナ)
マウイイワスナギンチャクは「世界の猛毒生物ランキング(最強トップ10)」において堂々の第1位の座に君臨。世界一強い毒をもつ生き物として有名です。
マウイイワスナギンチャクはイソギンチャクの仲間で、ハワイのマウイ島に生息するイワスナギンチャクの一種です。直径は3.5cm程度。サンゴ礁の浅海に群生しています。
マウイイワスナギンチャクの毒は神経毒のパリトキシン(Palytoxin)で、動物界最高の毒性を誇ります。
半数致死量(LD50)で比較すると、最強の毒ヘビとされるインランドタイパンの毒性の、じつに250~500倍の強さです。
誤って素手で触ったり、素足で踏みつけでもしたら大変です。
猛毒のマウイイワスナギンチャク
イワスナギンチャクの仲間
イワスナギンチャクは、六放サンゴ亜綱スナギンチャク目のイワスナギンチャク科に属する刺胞動物の総称です。イソギンチャク目の刺胞動物(いわゆるイソギンチャク類)と大変よく似ていますが、イワスナギンチャクは厚い共肉で連なった大きな群体をつくるのが特徴です。共肉を成長させ、広げた共肉の上に新たなポリプを芽出させていきます。
イワスナギンチャクは、ポリプが開いているときはイソギンチャク類に近い仲間であることが分かりますが、ポリプを縮めているとまるで岩そっくりで、とても生き物のようには見えません。
インド洋~西太平洋の熱帯および亜熱帯海域に広く分布し、日本では和歌山県の串本沿岸が分布の北限です。
イワスナギンチャクの一種、タマイワスナギンチャクの画像。
左(上):ポリプが開いているところ。右(下):ポリプが閉じると岩のようです。
(画像提供:おきなわ図鑑)
なお、「スナギンチャク」というのは、体壁の肉の中に砂粒などの他物を埋め込み、それで体を補強するので、このような名前が付きました。
スナギンチャク類のなかには、組織や粘液に海産動物としては最強の毒素パリトキシンを持っているものがいます。中でも最も強い毒をもっているのがマウイイワスナギンチャクです。
マウイイワスナギンチャクとパリトキシン
マウイイワスナギンチャクの学名は「パリトア・トキシカ(Palythoa toxica)」といいます。このイワスナギンチャクから毒物を特定した有機化学者のポール・ショイアー(米国)は、学名にちなんで毒物を「パリトキシン(Palytoxin)」と名付けました。今では多くの人が知っている有名な毒素です。
このパリトキシンは、マウイイワスナギンチャク自身が作り出しているのではなく、海に棲息している細菌、あるいは単細胞生物を体内に取り込んだ結果、有毒になるのだそうです。
パリトキシンの毒性は、半数致死量LD50で 0.00005~0.0001(mg/kg)という強力さです。青酸カリの8000倍。計算上、体重60kgの人間ならわずか3~6マイクログラムほどで、半数が死に至ると考えられます。
毒は心臓とその心筋、肺の血管などを急速に収縮させ、赤血球を破壊することから、生き物は窒息するかのごとく死亡します。恐ろしい神経毒です。
かつてマウイイワスナギンチャクの科学的研究が行われたとき、ハワイ大学の学生がこの群体の上を泳いだだけで、全身倦怠、筋肉痛と腹部の痙攣で数日間入院したとの逸話も残されています。
マウイイワスナギンチャクが育つマウイ島ハナ海岸
マウイイワスナギンチャクは、ハワイ・マウイ島のハナ海岸など、狭い範囲に生息しているとされています。険しい東部海岸沿いにあるのどかな町ハナは、手つかずの自然が残るハワイ最後の秘境のひとつです。
ハナへと続く道は、空港があるカフルイからの84kmのハナ・ハイウェイのみ。このハイウェイには600のカーブと54の橋があり、生い茂る熱帯雨林を縫うように進む約3時間のドライブコースです。
ハモアビーチ/マウイ島ハナ海岸。小説家ジェームス・ミッチェナーが「太平洋で一番美しいビーチ」と評した。(画像提供:フォートラベル)
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