蛇(へび)を含むことわざ・熟語

蛇を含むことわざ・熟語:農耕民族である私たちの先祖は、古くから蛇と深いかかわりを持ちながら生活してきました。私たちの周りには、蛇に関連した言葉がたくさんあります。蛇にちなんだことわざ・慣用句・故事成語をまとめました。

水神は今でも、日本各地で大切に祀られています。
水神(大蛇)を祀る祠(ほこら)。五穀豊穣を願って今でも丁重にお参りします。
(画像提供:豊富郷土資料館)

太古の昔より、蛇は生命力が強く、神秘的な生き物として畏怖されてきました。毎年繰り返される洪水被害も、川の淵に住んでいる大蛇(水神)が、怒って暴れるからだと考えました。農耕民族である私たちの先祖は、古くから蛇と深いかかわりを持ちながら生活していたのです。そのため、私たちの周りには、蛇に関連した言葉がたくさんあります。

たとえば、蛇腹(じゃばら)、蛇の目(じゃのめ)、蛇蝎/蛇蠍(だかつ)、蛇行(だこう)、長蛇(ちょうだ)などです。詳しい意味は後で説明しますが、いずれも蛇の特徴をよくとらえた、生活に密着した言葉です。

また、蛇を使った故事成語、ことわざも多く見られます。
鬼が出るか蛇が出るか、草を打って蛇を驚かす、蛇の口裂け、蛇の道は蛇、蛇は寸にして人を呑む、蛇足(だそく)、やぶ蛇、蛇に睨まれた蛙、竜頭蛇尾、蛇の生殺し、などです。ほかにもたくさんあります。

ここでは、それらのいくつかについて観てみることにします。

蛇にちなんだ熟語・ことわざ

蛇がつく言葉

日頃よく使う言葉の中にも、蛇のつくものがたくさんあります。おもに蛇の特徴から名づけられた言葉が多いようです。

蛇行(だこう)

蛇行/蛇がつく言葉
(画像提供:みなるニュース)

蛇行とは、蛇のように曲がりくねって進むことをいいます。川の蛇行。蛇行運転など。

写真は蛇行して流れるアマゾン川。まるで大蛇が、大地を這っているように見えます。

長蛇(ちょうだ)

長蛇/蛇がつく言葉
(画像提供:新華ニュース)

長蛇とは、長い蛇・大蛇のことです。転じて、長いもののたとえとして使われます。長蛇の列など。

写真は、中国広東省のコンファレンスセンターで、マイカーの購入証明を求めて並ぶ市民の長蛇の列。

蛇腹(じゃばら)

蛇腹/蛇がつく言葉
(画像提供:楽器のなんでも日記)

蛇腹とは、アコーディオンのように伸び縮みする、山折りと谷折りの繰り返しで作った構造を言います。くねって動く蛇のおなかの様子に似ていることから「蛇腹」と名づけられました。
洗濯機の排水ホースや配管の継手、蛇腹カメラ、ストローの折り曲げ部分など、身近にはじつに多くの蛇腹製品があります。

蛇の目(じゃのめ)

蛇の目/蛇がつく言葉
(画像提供:ananaimages)

蛇の目とは、へびの目のように、同心円を基調にした模様のこと。いまは見ることが少なくなりましたが、日本古来の和傘は「蛇の目傘」とも呼ばれます。傘の模様が「蛇の目」をしているためです。

蛇蝎/蛇蠍(だかつ)

蛇蝎/蛇がつく言葉
(画像提供:NAVERまとめ)

蛇蝎とは、蛇(だ=ヘビ)と蝎(かつ=サソリ)。人がひどく恐れ嫌うもののたとえです。
そういえば、ヘビもサソリも、ともに強い毒を持っていて人に危害を加えることから、一般にはひどく恐れられ嫌われています。「あの人は蛇蝎のような人」といえば、付き合いたくない最悪の人を指します。

故事成語

故事成語(こじせいご)とは、ある故事が元になってできた熟語です。大概は中国の古典に書かれた故事が、故事成語の元になっています。

蛇足(だそく)

蛇足とは、余計なこと、なくてもよい無駄なもののたとえです。
『語源由来辞典』によると、蛇足の語源・由来は、中国の『戦国策』の故事に由来しています。

戦国時代、楚の国で、司祭者から祭りの酒がふるまわれたとき、最初に蛇の絵を描き終えた者が酒を飲めることにしました。約束通り、最初に蛇の絵を完成した男が酒を飲めることになりましたが、皆がまだ描いているのを見て、その男は余裕を見せ、自分の蛇の絵に足を描き足してしまいました。
次に描き終えた者がこの絵を見て、「蛇に足は無い。あなたの描いた絵は蛇ではない」といったため、最初の男はお酒を飲めなくなったということです。

この時から、「付け加える必要のない・余分なもの」を「蛇足」と言うようになりました。

蛇がつく諺(ことわざ) その1

ことわざ(諺)とは、昔から人々の間で言い習わされてきた、教訓や知識、鋭い風刺などを内容とする簡潔な言葉(句)です。ここでも蛇が大活躍です。

竜頭蛇尾(りゅうとうだび)
始めは威勢がよいが、しだいに勢いがなくなりみじめな結果になること。類義語「頭でっかち尻つぼみ」「虎頭蛇尾」

蛇に見込まれた蛙
恐ろしさに身がすくんで動けないこと。また、大敵にねらわれて抵抗できないこと。類義語「蛇ににらまれた蛙」「猫の前の鼠」

蛇に噛まれて朽ち縄に怖(お)じる
一度ひどい目にあうとそれに懲りてしまい、それと関わるものに出あったときに、必要以上に怖がること。類義語「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」「火傷火に怖じる」

盃中(はいちゅう)の蛇影(だえい)
疑いの心をもって見ると、なんでもないことでも疑わしく見えてくるということ。類義語「落ち武者は薄(すすき)の穂にも怖ず」「疑心暗鬼を生ず」

蛇は寸にして人を呑む
大蛇はわずか一寸ほどのときから人を呑みこもうとする気迫を持っている。才ある人は幼少の頃から他人を圧倒するものがあるというたとえ。類義語「虎子地に落ちて牛を食らうの気あり」「良竹は生い出るより直ぐなり」

蛇(じゃ)の道は蛇(へび)
同類の者は互いにその事情に通じているので、同類の者のする事柄は、同類の者には容易に分かるということ。類義語「商売は道によって賢し」

蛇の生殺し
一気に殺さず、半死半生の状態にして苦しめること。物事の決着をつけず、あいまいにして苦しめること。

生殺しの蛇に噛まれる
災いの根源や悪者の息の根を完全に取り去らなかったために、自分の身に害が及ぶこと。類義語「蛇の生殺しは人を噛む」

蛇がつく諺(ことわざ) その2

藪蛇(やぶへび)
余計なことをして、かえって悪い結果をまねくことのたとえ。わざわざ藪をつついて蛇を追い出し、その蛇に噛まれるという愚かさをいう。類義語「藪をつついて蛇を出す」「草を打って蛇を驚かす」「寝た子を起こす」

鬼が出るか蛇(じゃ)が出るか
どんな化け物が出るかわからないこと。これからどんな恐ろしいことが起きるか予測ができないときに使う。類義語「鬼が出るか仏が出るか」

蛇(くちなわ)の口裂け
欲が深すぎるあまり、身を滅ぼすことのたとえ。類義語「蛇は口の裂くるのを知らず」「欲の熊鷹股裂くる」

蛇が蛙を呑んだよう
細長い物の途中がふくれあがって、格好が悪いことのたとえ。用例「ごろごろしている姿は、まるで蛇が蛙を呑んだようだ。」

蛇稽古(へびげいこ)
稽古事などが長続きしないことのたとえ。類義語「三日坊主」「一暴十寒」

蛇に足無し魚に耳無し
蛇に足は無いが這って進むことができるし、魚に耳は無いが感じることができる。動物(人間)にはそれぞれ特徴があるということのたとえ。

長蛇を逸する
惜しい獲物や大事な機会をもう少しのところで取り逃がすこと。ここで長蛇とは、大蛇(=大きな獲物)を指します。類義語「大魚を逸す」

ほかにも、蛇がついたことわざは、たくさんあります。
蛇は竹の筒に入れても真っすぐにならぬ/鎮守の沼にも蛇は棲む/蛇が出そうで蚊も出ぬ/常山の蛇勢/鱣は蛇に似たり蚕は蠋に似たり/灰吹きから蛇が出る/封豕長蛇/流星光底長蛇を逸す/鬼が住むか蛇が住むか/蛇を画きて足を添う/蛇の足より人の足見よ/などです。

いかに蛇と人とが、深くかかわって生きてきたかがわかります。

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