地震の種類(タイプ)
海溝型地震と内陸型地震の違い

地震の種類(タイプ)を発生メカニズムから分類すると、①プレート境界型地震、②陸域の浅い地震、③海洋プレート内地震、④火山活動による地震に大別されます。それぞれの地震の特徴を詳しく観てみましょう。

すべての地震は、プレート同士が力を及ぼしあうことで発生する「岩盤のずれ」が原因となって起こります。/プレート型地震と直下型地震(断層型地震)の違い・地震の発生メカニズム
日本付近のプレート模式図(左)と、1960年から2011年にかけて日本付近で発生した地震の分布図(右)。
地震の多くはプレートの境界に沿って発生していることがよくわかります。(画像提供:気象庁)

地震は地下で起きる岩盤の「ずれ」により発生する現象です。この岩盤のずれは、地球の表面を覆う十数枚の巨大なプレートが、その境界でお互いに押しあったり、横ずれしたりして力を及ぼしあうことで発生します。

日本近郊で発生する地震を、発生メカニズムから分類すると次の4つに区分されます。

プレート境界型地震(プレート間地震・海溝型地震)
プレート運動により発生する直接的な地震です。日本海溝や南海トラフなど、海洋プレートが陸のプレートの下に沈み込んでいるプレートの境界部で発生します。
海洋プレートに押されて海溝の下に引きずり込まれた陸のプレートは、プレート間の摩擦力が限界に達すると急激なすべりを起こし、プレート境界に沿ってずり上がる「逆断層型」の巨大地震を引き起こします。このとき海水も急激に持ち上げられ、大きな津波が発生します。記憶に新しい2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災、Mw9.0)や、1946年南海地震(Mw8.4)などが代表的なプレート境界型地震です。

陸域の浅い地震(断層型地震・直下型地震・内陸型地震)
陸のプレート内部で発生するプレート運動の間接的な地震です。陸のプレートは海洋プレートに押されて圧縮されたり、力の向きによっては引っ張られたり、横ずれしたり、複雑な動きを強いられています。この応力(地圧)に耐えられず岩盤が破壊してずれが生じるのが断層で、このとき地震が発生します。
陸域の地震はプレート境界型地震に比べて一般に小規模ですが、震源が浅く、直下型地震になるため、大きな震災被害が発生することがあります。1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災、M7.3)や2016年熊本地震(M7.3)などがあります。

海洋プレート内地震(スラブ内地震・深発地震)
海洋プレートの内部で発生する地震です。陸のプレートと同様に、プレート運動によって海洋プレートにも大きな応力が作用しており、断層ができて地震が発生します。沈み込む場所の手前で起こる地震や沈み込んだばかりの場所で起こる地震、深さ300kmを超える深部で起こる地震(深発地震)などがあります。
海洋プレート内地震は、震源域が陸地から遠いか深いため、揺れによる被害は少ないのですが、海洋の浅い場所で起きる地震には時折、津波を伴うものがあります。1933年の昭和三陸地震(Mw8.4)は、震源域が浅かったために大津波が発生しました。

火山活動による地震
火山活動による地震も広い意味ではプレート運動に伴うものです。火山活動が活発化すると地下深部からマグマが上昇し、岩盤の浅い部分に力が加わって中小規模の地震が頻発します。火山帯の形成はプレート運動と関連したもので、マグマ自体も、沈み込んだ海洋プレートの水の働きによって上部マントルの一部が溶け出したものなのです。

以下に、それぞれの地震の特徴を詳しく観てみましょう。

地震の発生メカニズム

①プレート境界型地震(プレート間地震・海溝型地震)

プレート境界型地震発生のしくみ/プレート境界型地震と直下型地震との違い
プレート境界型地震発生のしくみ
(画像提供:文部科学省)

海洋プレートが沈み込むときに陸のプレートを地下へ引きずり込んでいきます。陸のプレートが引きずりに耐えられなくなり、跳ね上げられるようにして起こるのがプレート境界型地震です。プレート間地震あるいは海溝型地震とも呼ばれます。

プレート境界型地震は、ときにマグニチュード8クラスの巨大地震になることがあります。また、多くの場合、津波がともないます。

プレート境界型地震の例としては、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災、Mw9.0)、2003年十勝沖地震(Mw8.0)、1994年三陸はるか沖地震(Mw7.7)、1946年南海地震(Mw8.4)、1944年東南海地震(M7.9)、1923年関東地震(関東大震災、M7.9)などがあります。


2011年東北地方太平洋沖地震の震源域/プレート境界型地震と直下型地震との違い
東北地方太平洋沖地震の震源域
(画像提供:wikipedia)

2011年東北地方太平洋沖地震のマグニチュードが9.0と大きかったのは、想定されていたM8クラスの海溝型地震が、隣接する3つの海域で連動して起こった「連動型地震」だったことによります。

この地震での震源域は、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの広範囲に及びました。破壊された面積はじつに10万km²に及び、最大30m(平均10~20m)のずれが生じました。

Mw9.0は、1900年以降に世界で発生した地震の中で4番目に大きな規模になります。もちろん、日本では観測史上初めてとなる超巨大地震でした。


日本海東縁地震~特異なかたちのプレート境界型地震

日本海東縁部でもしばしば大きな地震が発生します。ここでは北米プレートとユーラシアプレートが互いに押し合っており、プレート境界部は「日本海東縁変動帯」と呼ばれる地質学的な歪みの集中帯が形成されています。この日本海東縁変動帯で起こる地震が「日本海東縁地震」です。

日本海東縁地震はまぎれもなくプレート間地震です。ただ、北米プレートもユーラシアプレートもともに「陸のプレート」であり、太平洋側で見られるようなプレートの顕著なもぐり込みは認められていません。発生する地震も、いずれも震源が浅い地震です。

そのため、通常いわれるプレート境界型地震とは明らかに発生メカニズムが異なっており、別扱いされています。

日本海東縁地震は、プレート間の圧縮力を背景とした逆断層型の地震です。震源が浅いため海底を持ち上げ、津波を発生させます。1983年日本海中部地震(M7.7)や1993年北海道南西沖地震(M7.8)など、津波を伴う大きな地震が発生しています。

②陸域の浅い地震(断層型地震・直下型地震・内陸型地震)

陸域の浅い地震は、私たちが普段生活している場所の直下、陸のプレート内部で起こる地震です。陸のプレートは海洋プレートに押されてひずみを蓄えており、そのひずみが限界に達すると岩盤が破壊して、断層となってずれが生じ地震を発生させます。

この断層運動は、既存の断層(=活断層)が動くこともあれば、過去に活動歴がなかった岩盤に新たに「震源断層」が生じることもあります。

陸域の地震は断層活動に伴って起こる地震であることから、断層型地震あるいは活断層による地震などとも呼ばれます。また生活圏の直下で起きることから直下型地震、あるいは内陸型地震とも呼ばれています。

陸域の地震の特徴は震源が浅いことです。陸のプレートでは、断層運動を生じるような硬くてもろい岩盤があるのは地下15~20km程度までです。それより深いところは温度が高いために岩盤が軟らかく、力がかかっても流動的に変形してしまうので、地震が発生するような急激な破壊は起きません。したがって陸域の地震は、せいぜい地下20kmまでの比較的浅い場所で起こります。

陸域の地震はプレート境界型地震よりも小規模なものが多いのですが、震源が浅くかつ直下型であることから、大きな震災被害が生じることがたびたびあります。1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災、M7.3)や2016年熊本地震(M7.3)は、陸域の浅い地震の代表的な例です。

■1995年兵庫県南部地震の被災状況

1995年兵庫県南部地震の被災状況/プレート境界型地震と直下型地震との違い
(画像提供:時事通信フォト)

崩壊した高速道路・阪神高速3号神戸線。兵庫県南部地震では、六甲断層系に沿って帯状に、神戸市須磨区から西宮市まで幅1km長さ20kmにわたって被害が集中しました。震度7の激震に揺れた『震災の帯』です。


■地震を起こす断層運動の種類

地震を起こす断層運動の種類/プレート境界型地震と直下型地震との違い


正断層:水平方向に引張応力がかかっているときにできる断層。断層面を境にして上盤(浅いほうの岩盤)がずり下がる方向に動きます。

逆断層:水平方向に圧縮応力がかかっているときにできる断層。断層面を境にして上盤がずり上がる方向に動きます。逆断層のうち特に断層面の傾斜が緩く(水平に近い)乗り上げが顕著なものを衝上断層(低角逆断層)と呼ぶことがあります。

横ずれ断層:剪断応力が水平方向に働いた断層で、ずれの方向によって右横ずれ断層と左横ずれ断層とに区分されます。断層の手前から見て、向こう側が相対的に右にずれている場合を右ずれ、左にずれている場合を左ずれと呼びます。

③海洋プレート内地震(アウターライズ地震・スラブ内地震)

海洋プレートが陸のプレートの下に沈み込む場所では、海洋プレートにも大きな応力が作用しており、断層ができて地震が発生します。海洋プレート内で起こる地震は次の3種類が知られており、それぞれ異なった場所・原因で発生します。

1)沈み込む場所の手前で起こる地震(アウターライズ地震)
2)沈み込んだばかりの場所で起こる地震
3)プレート内の深部で起こる地震(深発地震)

海洋プレート内地震/プレート境界型地震と直下型地震との違い
沈み込む海洋プレート内の地震


■沈み込む場所の手前で起こる地震(アウターライズ地震)

海洋プレートが陸のプレートの下に沈み込む手前、すなわち海溝の外側(アウター)では、海洋プレートは海面に向かってやや凸状に曲がり、緩やかな隆起地形すなわちアウターライズを形成しています。ここで起きる地震がアウターライズ地震です。

アウターライズ地震は震源が浅く、海底面に直接変動を与えて大きな津波を引き起こすことがあります。1933年の昭和三陸地震(Mw8.4)では、大津波が発生して沿岸に甚大な被害が生じました。

■沈み込んだばかりの場所で起こる地震

大陸プレートの下に沈み込んだ海洋プレートは、アセノスフェアという高温で少し流動性のある固体の中に潜り込んでいきます。ここでは、プレートがそれ自体の重さで下に曲がって亀裂が入り、地震が発生していると考えられています。

沈み込んだ海洋プレートはスラブと呼ばれるため,このような地震のことを「スラブ内地震」と言います。

■海洋プレート内の深部で起こる地震(深発地震)

スラブ内地震のうち、深さ200kmよりも深い位置で起きる地震を深発地震といいます。文脈によっては、浅発地震と対比するために、深さ60kmよりも深い地震を総称して深発地震と呼ぶこともあります。

深発地震は震源が深いために、地表に大きな被害が発生することはあまりありませんが、2008年の岩手県沿岸北部地震では「異常震域」が形成され、震央から遠く離れた沿岸部で強い揺れが観測されました。

異常震域というのは、地震波が、マントルよりも剛性が高い海洋プレートに沿って伝播するために生じる現象で、震源の直上(震央)よりもプレートに近い沿岸部で強い揺れが生じることがあります。

④火山活動による地震

伊豆半島や、九州、北海道などには多数の火山が連なっています。これらの火山群に沿った地域では、岩盤の浅い部分に局所的にマグマの力が働いており、火山活動にともなって中~小規模の地震がしばしば発生します。

マグマで熱せられた水分が蒸発して体積が数千倍に増し、圧力が急上昇して、マグマの通り道周辺の岩盤を破壊するためだと考えられます。

火山性地震は、震動波形の特徴や周波数成分の分布から「地震」と「微動」とに分けて扱われています。

火山性地震は有感となっても規模は小さいのが普通ですが、稀に単独で被害を出すような地震となることもあります。例えば、桜島の大噴火に伴って発生した1914年(大正3年)の桜島地震は、マグニチュードM7.1と、この種の地震としては稀に見る大地震でした。死者29名、負傷者111名の人的被害も出ています。

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