バラハタとはどんな魚?
シガテラ毒を持つ危険な魚(食中毒に注意!)

バラハタは、猛毒のシガテラ毒を保有する可能性が高く、有毒魚(毒で汚染された魚)を食べると食中毒を起こします。バラハタとはいったいどんな魚なのでしょうか。あわせてシガテラ毒の原因と症状についてもまとめました。


サンゴ礁を泳ぐバラハタの成魚。シガテラ毒を持つことがあり危険です。
(画像提供:Sea creator weblog)

2016年4月12日朝、東京築地市場でちょっとした事件が発生しました。食中毒を引き起こす恐れがあるとして、東京都が販売自粛を求めている有毒魚「バラハタ」が、仲卸店から1尾販売されてしまったのです。

バラハタは、猛毒のシガテラ毒を保有する可能性が高く、食べると食中毒を起こして関節痛や頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。わが国ではシガテラによる死亡例はありませんが、海外では何度か死亡事故が発生しています。

築地の仲卸店員は無毒の「スジアラ」と勘違いして販売したそうです。幸いにも今回の事件では健康被害の報告はありませんでしが、魚のプロたる市場関係者が、危険な魚を見抜けずに流通させてしまったことは大問題でした。

シガテラ毒を持つ危険な魚「バラハタ」とは、いったいどんな魚なのでしょうか?詳しく観てみることにしましょう。併せて、シガテラ毒とは何なのか、シガテラの原因と症状についても触れておきます。

バラハタとシガテラ毒

バラハタとは

バラハタはスズキ目ハタ科に分類されるハタの仲間です。漢字では「薔薇羽太」と表記しますが、バラのように鮮やかな朱色~褐色の地色に、青白い斑点が全身にちりばめられた美しい魚です。

全長60cmほどの大型魚ですが、個体によっては80cmを超えるものもいます。日本では沖縄近海の、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁や岩礁地帯に生息しています。ただし、近年は温暖化の影響で分布域が北上しており、九州・四国をはじめ和歌山県以南の暖海で生息が確認されています。主に小型の甲殻類や魚貝類を捕食します。

バタハラは、全ての個体がシガテラ毒を持っているわけではありませんが、毒がある個体かどうかは見た目からは判断できず、東京都では販売自粛を求めています。

バラハタの幼魚と成魚

バラハタは、幼魚と成魚とでまったく違った色彩をすることでも知られています。


バラハタの幼魚


バラハタの成魚

バラハタの幼魚は背側が赤く、腹側が白色で、体側部に黒い帯と青白い斑点があります。また、口先から背中にかけて、一条のよく目立つ黄白色の線模様があります。

バラハタは成長に伴い全身が鮮やかな赤や朱色、褐色の地色に変わり、青白い斑点も全身に散ばってひと際鮮やかさを増してきます。各々のひれの後端は黄色くなり、尾びれの上下が長く伸びた特有の形態に変わります。(画像はいずれも「Sea creator weblog」による)

バラハタの発見経緯

築地市場で、どうしてバラハタが販売されたことが判ったのでしょうか?

じつは当日の朝、市場を見回っていた東京都の市場衛生検査所の職員が、仲卸店でバラハタに似た魚が陳列されているのを発見。写真を撮り、事務所で確認したあと店に戻ると、すでに売られていたのだそうです。仲卸店員は無毒の「スジアラ」と勘違いしていたのだという。

それにしても魚のプロたちが、流通過程で(一人を除いて)誰もバラハタに気づかなかったのが不思議です。ただ一人気づいた市場衛生検査員でさえ、写真に撮って図鑑?で確認しないと判らないようでは食の安全安心が揺らぎます。

下の写真は、市場衛生検査員が撮った実際のバラハタと、仲卸店員が間違えたというスジアラです。どうでしょうか、似てますでしょうか?


築地市場で販売されたバラハタ
(画像提供:東京都)


バラハタと間違えられたスジアラ
(画像提供:市場魚介類図鑑)

シガテラ毒について

シガテラ毒とは、熱帯・亜熱帯の海洋に生息する有毒渦鞭毛藻が産生する毒素で、シガトキシン、スカリトキシン、マイトトキシン、シガテリンなど20種以上が確認されています。いずれも毒性がきわめて強く、フグ毒テトロドトキシンの数十倍の毒性だと言われています。

この有毒渦鞭毛藻は、植物プランクトンとして海中に漂ったり海藻に付着している間に餌として小魚に食べられます。その小魚がより大きな魚に食べられる食物連鎖により、大きな魚の体内に毒素が蓄積されていきます。この毒で汚染された魚を私達が食べると激しい食中毒に襲われます。

有毒渦鞭毛藻はサンゴ礁などの暖かい海域に生息しています。したがってシガテラ毒に汚染された魚も、日本では主に沖縄地方で見られるだけでした。ところが最近の海水温の上昇から、汚染魚の分布域が北上しており、九州・四国はもとより本州の房総半島以南にまで拡大しています。釣りなどでは十分な注意が必要です。

シガテラ中毒の症状

シガテラ毒は、ナトリウムチャンネルに特異的に作用する神経毒です。一般には経口摂取後1~8時間ほどで発症します。

主要な症状は神経系の症状で、不整脈、血圧低下、徐脈、めまい、頭痛や筋肉の痛み、麻痺、感覚異常などが起こります。特にシガテラ中毒に特徴的に生じる障害が温度感覚異常(ドライアイスセンセーション)です。冷たさに対する感覚が異常に亢進し、 普通の水が極端に冷たく感じられたり、暖かいものが冷たく感じられるなどの知覚異常に陥ります。

これらの症状に加えて、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器系症状が併発されます。日本国内で死亡例はありませんが、海外では数例が報告されています。

シガテラ中毒に対する効果的な治療法は確立されていません。神経系にダメージを与えるため病状回復は一般に遅く、完全回復まで半年~1年ほどかかることもあります。

シガテラ毒を保有する魚(有毒魚)

シガテラ中毒は、食物連鎖によるシガテラ毒の生物濃縮が原因です。そのため、食物連鎖の上位に位置する大型の肉食魚が、シガテラ毒に汚染されている可能性がより高くなります。

シガテラ毒を保有している可能性が高い魚は、ここで採りあげている「バラハタ」のほかにも、オニカマス・ウツボ・アカマダラハタ・オオアオノメアラ・バラフエダイ・イッテンフエダイ・サザナミハギ・ギンガメアジ・ヒラマサ・カンパチ・イシガキダイなどがいます。

ただし、同一魚種でも地域差や個体差があって、ここに挙げた魚種のすべての個体にシガテラ毒があるわけではありません。そこがシガテラ中毒の悩ましいところです。

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