カーペットバイパーの毒と毒性
インド四大毒蛇の出血毒の秘密に迫る

カーペットバイパーは、インドで一番多くの犠牲者を出しているこわ~い毒蛇です。インドコブラやアマガサヘビ、ラッセルクサリヘビと並んで「インド四大毒蛇」として恐れられています。カーペットバイパーの出血毒の秘密に迫ります。


カーペットバイパー/攻撃的な性格で、強い出血毒をもつ
(画像提供:危険なことあれこれ)

カーペットバイパーは、インドコブラ、アマガサヘビおよびラッセルクサリヘビと並んで「インド四大毒蛇」として恐れられている猛毒をもった毒蛇です。
インドから中東にかけての低地に広く生息しており、個体数も多いことから、毎年多くの人が咬まれて尊い命を落としています。咬まれた場合の死亡率は36%にも達します。大変危険なヘビです。

カーペットバイパーは、名前に「バイパーの(Viper)」が付くことから解かるように、マムシやハブなどと同じクサリヘビ科(Viperidae)に属する毒蛇です。クサリヘビ科に特有の強い出血毒をもっています。

この出血毒の強さが半端ではありません。カーペットバイパーの毒性はマムシ毒の約130倍の強さがあります。もちろん、クサリヘビ科のなかでは一番の猛毒の持ち主です。「世界最強の毒蛇ランキング トップ50」でも、カーペットバイパーは堂々の世界第13位にランクされています。

こんなのに咬まれたら命はいくつあっても足りません。たとえ一命を取りとめたとしても、手足など患部の壊死と切断、麻痺は避けられず、一生涯、後遺症に苦しまなければなりません。

カーペットバイパー

カーペットバイパーとは


攻撃姿勢を取るカーペットバイパー
(画像提供:危険生物図鑑)

カーペットバイパーは、インドで一番多くの犠牲者を出しているこわ~い毒蛇です。全長40-60cmほどの小型のヘビですが、毒性がきわめて強く、しかも気性が荒くて攻撃的です。近くをヒトが通っただけで咬みついてきます。そのため、世界でも非常に危険な毒蛇として知られています。

クサリヘビ科の毒蛇がもっている毒はおもに出血毒です。
出血毒は、唾液などの消化液(消化酵素)が高度に進化したものです。そのため、出血毒が体内に注入されると患部の細胞や血管壁が破壊され、消化されて溶けていきます。

毒が内臓など重要器官に到達すれば死は免れません。たとえ一命を取りとめたとしても、身体組織の破損ははなはだしく、重大な後遺症障害に悩まされることになります。

カーペットバイパーは、餌のネズミやカエル、トカゲなどを追って民家近くに生息しています。田んぼや畑、農道、空き地などで咬まれることが多く、現地の住民を恐怖させています。

カーペットバイパーの毒性

ヘビ毒に限らず、あらゆる毒の強さ(=毒性)を客観的に評価するする方法の一つに、半数致死量という尺度があります。半数致死量(LD50)とは、実験動物に毒物を投与したとき、その半数が死亡する体重1kgあたりの用量(mg)をいいます。単位は「mg/kg」です。

ヘビ毒の毒性評価をする場合には、一般に皮下注射(皮下 LD50)が使用されます。

さて、その皮下LD50で表示すると、カーペットバイパーの半数致死量LD50は0.151(mg/kg)という数値です。
この値は、たとえば体重60kgの人間が咬まれると、わずか9mg(0.009グラム)の毒量で、その半数が死亡するということを意味しています。1ccほどの毒量があれば50人ほどの人間を殺す能力があります。

カーペットバイパーの警告音


カーペットバイパーの鱗
(画像提供:amanaimages)

カーペットバイパーの鱗にはギザギザがついていて、危険が迫ると鱗同士をこすりあわせて警告音を出します。その音がノコギリで木を挽く音に似ていることから、日本ではノコギリヘビと呼ばれることもあります。

したがって、インドのアウトドアでこのノコギリ音を聞いたら要注意です。

ただし、普通に歩いている場合は、せっかくの警告音もあまり期待できません。ヒトが歩く速度はかなり早いため、ヘビが警告音を発する前に警戒区域に踏み込んで、いきなり咬まれることが多いようです。咬まれて初めて、そこにカーペットバイパーが潜んでいたことに気が付くケースがほとんどです。災難というしかありません。

【参考】警告音を発するヘビ/ガラガラヘビ


ガラガラヘビの尻尾
(画像:California Herps)

クサリヘビ科のヘビには、カーペットバイパーのほかにも警告音を出すヘビがいくつかいます。そのなかで一番有名なのはガラガラヘビでしょう。

ガラガラヘビは、南北アメリカ大陸に生息する毒蛇です。危険が迫ると、しっぽの先端を振動させて「ジャー」という警告音を発して威嚇します。こちらは鱗ではなく、しっぽで警告します。

しっぽの先端にある発音器官は、中が空洞になった硬い節が緩くつながったもので、脱皮するごとに新しい節が増えていきます。しっぽを振るとこの節がぶつかり合って「ジャー」という音が出るのです。

クサリヘビ科のヘビ(出血毒)による咬傷被害の事例

出血毒をもつクサリヘビ科のヘビに咬まれた場合の実例をひとつ紹介しておきます。目を背けたくなるような悲惨な写真ですが、ヘビ咬傷の怖さを伝えるための方策ですので、お許しください。

ここではガラガラヘビによる咬傷事例を示します。より強い毒性を示すカーペットバイパーに咬まれた場合には、さらに悲惨な結果が予想されます。

少年がガラガラヘビに咬まれました

ガラガラヘビに咬まれた少年の右手。患部は大きく腫れあがり、激しい痛みに襲われます。


(画像提供:ポッカキット)

時間経過とともに筋肉壊死が進行します。
患部は内出血でどす黒く変色して、手指の先端はすでに溶け始めていて骨が露出しています。
こうなると、手首どころか腕までの切断は避けられません。

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