ヤマカガシのすべて!
ヤマカガシの毒性と生態 ナマ情報

ヤマカガシはユウダ科のおとなしい蛇ですが、血液凝固作用を伴った強烈な出血毒をもっています。ヤマカカシにご注意を!


ヤマカガシ。じつは日本一の猛毒の持ち主です。
(画像提供:まっつんさんのポートフォリオ)

ヤマカガシ(山楝蛇=やまかがし)は、ユウダ科の毒蛇です。長い間無毒と考えられていましたが、1972年に中学生が咬まれて死亡する事故が起きてから、毒蛇として認識されるようになりました。

ヤマカガシの毒性は強力で、LD50(半数致死量)で比較するとハブの10倍、マムシの3倍の毒性があります。ヤマカガシは日本一の強毒をもつ恐ろしい毒蛇なのです。

ヤマカガシには、クサリヘビ科のハブやマムシと違って前歯に鋭い毒牙はありません。上あごの奥歯(後牙)が毒腺につながっている後牙類の毒蛇です。元来、おとなしいヘビで、手で触ったり踏みつけたりしない限り咬まれることは、まずありません。ただ、ヤマカガシに咬まれると大変危険です。

ヤマカガシとはどんな蛇なのでしょうか
ここでは、ヤマカガシの毒性と生態について以下に詳しく解説します。キャンプや川遊び、キノコ採りなどアウトドア趣味では特に注意しておいてください。

毒蛇ヤマカガシ

やまかがしの生態と名前の由来

ヤマカガシはカエルが主食で、里山の渓流近くや、水田、畑、河川林などに多く生息しています。山あいの民家では、今でも池に住み着いたカエルを狙って庭にヤマカガシが出現することがあります。また、都市公園の緑地でも時折見かけます。ヤマカガシは私達の身近に共生している「隣人」なのです。

ところで、このヤマカガシ。変わった名前をしていますが、「カガシ=楝蛇」というのは、日本のふるいことばで「蛇(へび)」を意味しています。「ヤマカガシ=山の蛇」なのですね。農耕を主体とした私たち日本人には、古来から馴染み深い蛇だったのでしょう!

ヤマカガシ(毒蛇)


(画像提供:ヘビの仲間)

北海道と沖縄を除く日本全国に棲息しています。全長は70~150cm。褐色の地に赤色と黒色の斑紋が交互に並んでいます。

ただし、体色は固体によってまた地域によって変異が激しく、斑紋がないものや、濃紫色の個体、全身が真っ黒な個体(黒化型)など多様なため、識別には注意が必要です。

ヤマカガシには鋭い毒牙がない?


(画像提供:ヘビの仲間)

ヤマカガシの頭は小さくスマートで、俗にいう毒蛇に特有な「三角頭」ではありません。また鋭い前牙(毒牙)もありません。
だから長い間、動物学者の間でも、ヤマカガシが「毒蛇」であるとは思われていませんでした。

ヤマカガシは、口腔の後方に毒牙を有する後牙類(後牙蛇)の毒蛇です。

ヤマカガシの毒~半数致死量(LD50)による毒性比較

半数致死量(LD50)とは、実験動物に毒物を投与したときに、その半数が死亡する毒量をいいます。体重1kgあたりの毒の用量(mg)で表示し、単位は「mg/kg」です。

LD50には、皮下注射・筋肉注射・静脈注射・腹腔内注射・経口投与などがあり、それぞれで数値が異なります。ヘビ毒の毒性比較をする場合には、一般に皮下注射(皮下LD50)が使用されます。

さて、その皮下LD50で比較する「日本三大毒蛇(マムシ・ハブ・ヤマカガシ)」の毒性は次のようです。当然ながらLD50の数値が小さいほど毒性は強いことになります。

  • 第1位:ヤマカガシ LD50=5.3 (mg/kg)
  • 第2位:マムシ LD50=16 (mg/kg)
  • 第3位:ハブ LD50=54 (mg/kg)

ヤマカガシは、猛毒で恐れられるハブやマムシを抑えて、堂々の第一位。ヤマカガシの毒性はマムシの3倍、ハブの約10倍の強さです。まさに日本一の猛毒の持ち主と言えるでしょう。それがヤマカガシなのです。

おとなしそうな顔をしているからといって、ヤマカガシを侮ってはいけません。

ヤマカガシの毒は出血毒

ヤマカガシの毒は出血毒ですが、クサリヘビ科のマムシやハブなどの出血毒とは少し違っていて、プロトロンビンの活性化(血液凝固作用)が主な作用です。血管内に微小な凝固を発生させることで凝固因子を消費させ、逆に血液を止まらなくしてしまいます。

その作用は強力で、時にはフィブリノーゲンがほとんどゼロまで減少します。フィブリノーゲンは、血小板と同様に、出血の際の止血機構の一役を担っています。この成分が減少することで出血が止まらなくなるのです。

そのため、ヤマカガシの毒を「溶血毒」と呼ぶこともあります。

ヤマカガシの毒には細胞を破壊する成分はありません。そのため腫れや痛みはほとんどなく、受傷後数時間から1日ほど経過したあとで出血傾向が現れます。全身におよぶ皮下出血、内臓出血がおこり、重篤な場合は急性腎不全や脳内出血を引き起こし死に至ります。

ヤマカガシの首には第二の毒腺がある!

ヤマカガシは口腔の毒牙のほかに、首の部分に頚腺と呼ばれる別種の毒腺を持っています。この毒液が目に入ると、結膜や角膜の充血・痛みを生じ、結膜炎や角膜知覚麻痺炎などの症状を引き起こすほか、最悪の場合は失明することがあります。

最近の研究から、この頸腺の毒は、餌として食べたヒキガエルの毒成分(ブフォトキシン)を貯蔵したものであることが分かってきました。

ヒキガエルを捕食するヤマカガシ


(画像提供:日日光進)

ヤマカガシはヒキガエルを好んで捕食します。栄養補給と併せて、ヒキガエルの持つ毒をうまく有効利用しているのです。

ところで、ヤマカガシは他のヘビと違って、カエルを頭からではなくお尻の方から飲み込みます。

2つの頭が前後に並んでいる姿は、何とも不気味ですね。 しかも、餌のヒキガエルの頭が、捕食するヤマカガシのそれよりも何倍も大きいのですから驚きです。

ヤマカガシの威嚇のポーズ

ヤマカガシは危険が迫ると、コブラのように頭を持ち上げ、頸部~胸部を広げて威嚇します。

面白いのは向き合う方向です。
コブラはこちら(正面)を向いて攻撃姿勢を取りますが、ヤマカガシは反対方向を向いて背中を見せます。

「この背中のモンヨウが目に入らぬか?」
「俺は毒ヘビだぞ!」
と主張しているのです。

胸を広げて威嚇するヤマカガシ


(画像提供:大分ヘビ図鑑)

威嚇のポーズは立派ですが、気が小さいヤマカガシの威嚇は、本来「逃げる」のが目的です。

相手が何もしなければヤマカガシのほうから逃げていきます。
ただ、ヤマカガシも必死ですから、ここで捕まえたりすると噛み付いてきます。

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ヤマカガシのいろいろ~体色の変異

ヤマカガシの体色は、褐色の地に赤色と黒色の斑紋が交互に並んでいます。これが標準色です。ただ、体色には個体差や地域差が大きく、場合によっては標準と大きく異なる体色の個体もいますので、判定には十分注意してください。

  • ・赤の斑紋がないヤマカガシ
  • ・白黒のツートンカラーのヤマカガシ
  • ・黒一色のヤマカガシ
  • ・褐色のヤマカガシ

ヤマカガシの体色変異は、本当にいろいろです。

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