カバキコマチグモ(樺黄小町蜘蛛)
日本在来種 黄色い毒蜘蛛
カバキコマチグモは日本在来種の毒グモです。人間の死亡例はありませんが、咬まれると激痛に襲われます。カバキコマチグモにご注意を!
カバキコマチグモ。小さなクモだが毒性はすこぶる高い。
(画像提供:酔渓の野遊び)
カバキコマチグモは、沖縄県を除く日本全国に広く分布する毒蜘蛛で、猛毒を持っていることで知られています。イネ科植物の長い葉をちまき状に巻いて、交接・産卵用の巣を作ります。
「猛毒動物最恐50」(今泉忠明著、サイエンス・アイ新書)によると、カバキコマチグモの半数致死量(LD50)は0.005mg/kgとされ、その毒性は世界最強の毒ヘビとされるインランドタイパン(LD50=0.025mg/kg)の5倍、ハブクラゲに次いで猛毒ランキングの第6位にランク付けされています。
幸いにも、カバキコマチグモは牙が小さく、注入される毒量も少ないことから人間が死亡した事例は見当たりません。
ただ、咬まれると激しい痛みに襲われ、指をかまれても肘まで腫れることもあるようです。重篤な場合は頭痛、発熱、嘔吐、ショック症状を呈することもあります。小さな毒グモですが侮ってはいけません。
カバキコマチグモ
カバキコマチグモの生態画像
カバキコマチグモは、幼体の時期は丈の低い草むらに生息しますが、成体になるにつれてイネ科植物に移動し、その葉を巻いて交接・産卵用の部屋を作ります。イネやススキなどの長い葉っぱが巻かれているとカバキコマチグモの巣かもしれません。興味本位で、うかつに手出しをしてはいけません。
■カバキコマチグモの名前の由来
(画像提供:クモと毒)
カバキコマチグモの名前について、カバキ(樺黄)とは茶色がかった黄色(茶黄色)という意味。コマチは小野小町からきています。
小野小町のように美しい黄色い蜘蛛ということでしょうか。いかにも日本的な美しい名前ですが、実際には猛毒の持ち主=毒蜘蛛です(汗)
大きな黒いあごが不気味です。
■カバキコマチグモの巣
(画像提供:そよ風のなかで)
ススキの葉を巻いたカバキコマチグモの巣。
カバキコマチグモはフクログモの仲間で、イネ科植物の葉っぱを丸めて巣を作ります。
平地や山地を問わず、草原、河原、水田、林縁など、日本中のいたるところで見かける風景です。
■カバキコマチグモの巣の内部
(画像提供:クモの拡大画像)
注意深くそっと開いてみると、中にはカバキコマチグモがいます。メスはこの中で産卵して、孵化した子供が第一回目の脱皮をするまでの間、外敵から子供を守ります。
この時期、母グモは大変気が荒くて攻撃的になっており、巣を開いたりすると猛然と攻撃してきます。不用心に巣を開くと手をかまれることがあります。
カバキコマチグモの習性
カバキコマチグモは、メスで体長約1.2cm、オスは約0.9cmほどの小さなクモです。いわゆる「クモの巣」は張らず、昼間はススキの部屋に隠れていて、夜間に餌を求めて草むらをさまよいます。
毒は生きた昆虫類を捕食するのに使います。
黒っぽい牙状の上あごが毒腺とつながっていて、咬むと同時に毒を注入して獲物を麻痺させる仕組みです。
カバキコマチグモの咬傷被害は5月~8月にかけて多く、とりわけ6月に多発する傾向にあります。
6月はカバキコマチグモの交接期にあたり、オスはメスを求めて徘徊し、時には人家内に侵入してくることもあります。就寝中に布団の中で咬まれた事例もあるようです。
カバキコマチグモは強烈な母性愛の持ち主としても知られています。
メスは夏に100個ほどの卵を産みますが、この卵が無事に孵化して最初の脱皮を迎えるまで、懸命に外敵から彼らを守り続けます。
ところが孵化した子供は、母親の愛を知ってか知らずか、一回目の脱皮を終えると、母親の身体を餌として食べてしまうのだそうです。まさにカバキコマチグモのメスは、身を挺して子供を守る、母性の「鏡」みたいな存在なのです。
子グモが巣立ったあとには、ほとんど外骨格だけになった母親の死体が残されています。
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