エラブウミヘビのすべて
猛毒イラブーのコワ~イ画像

エラブウミヘビはコブラ科の猛毒ウミヘビですが、交尾や産卵は海岸で陸に上がって行います。その生態を覗いてみましょう!


サンゴ礁を泳ぐエラブウミヘビ。陸にも上がるので波打ち際では注意を!
(画像提供:おきなわ図鑑)

沖縄や奄美のサンゴ礁にはエラブウミヘビが生息しています。本来おとなしい蛇で、素手で捕まえたりしない限り咬まれることはありませんが、ホンハブの70-80倍の強さと言われる猛毒をもっているため、万一咬まれたら大変なことになります。

エラブウミヘビは暖かい海域を好み、日本では南西諸島(トカラ列島以南)が分布の北限だと言われてきました。ただ近年では、地球温暖化の影響で九州や四国地方をはじめ、本州の南岸でも生息が確認されています。

エラブウミヘビは浅海を生活圏としており、昼間は波打ち際の岩穴で休息したり、陸上にも上がってきます。磯の潮だまりや浅い海で遊ぶ私たちにも、普通にエラブウミヘビと遭遇する可能性がありますので、海遊びの際には充分な注意が必要です。

陸棲の習性が残るウミヘビ

エラブウミヘビとは


(画像提供:yorisan's page)

エラブウミヘビは、コブラ科エラブウミヘビ属に分類されるウミヘビです。全長は70-150cm。青っぽい体色に黒い横帯が入っているのが特徴です。
インド洋から日本沿岸にかけての熱帯・亜熱帯海域に分布しており、沖縄や奄美の沿岸ではサンゴ礁で普通に目撃されます。

エラブウミヘビは昼夜ともに活動しますが、夜間においてより活発に採餌行動をとります。主要な餌はベラ、スズメダイ、ギンポなど浅い海に生息する小魚です。
昼間は海岸近くの岩の下や窪地などで休んでいることが多いのですが、たまに昼間でも、水深50cmほどの浅場や波打ち際で目撃されることもあります。

エラブウミヘビ/進化途上です

ウミヘビの仲間は大きく2つのグループに分けられます。
ひとつは水棲種といって、海での生活にすっかり順応して、陸には上がらずに生活するもの。もう一つは、陸上での生活習性が残されていて、採餌行動以外は基本的に陸に頼って生活するものです。

エラブウミヘビは後者になります。
エラブウミヘビには陸棲ヘビと同様に大きな腹板が残っていて、陸上を自由に移動することができます。昼間は陸に上がり海岸の岩陰等で休んでいます。また交尾や産卵も陸上で行います。

エラブウミヘビは、東南アジアに生息する「ベニヘビ属」が海での生活に順応したものですが、海への進出時期が遅かったために、一部にまだ陸棲の習性が残されているのだと考えられています。

エラブウミヘビの生態画像

日本近海には7種類のウミヘビが生息していますが、このうち卵を産むウミヘビ(卵生)はエラブウミヘビ属のウミヘビだけです。すなわち、エラブウミヘビ、ヒロオウミヘビ、アオマダラウミヘビの3種です。これらの種は陸にもよく上がります。

一方、エラブウミヘビ属以外のウミヘビはすべて子ヘビを生みます(卵胎生)。子ヘビを生む種は陸には上がりません。すべて水棲種です。

このように、一見同じように見えるウミヘビでも、生態や性質はずいぶん違っています。

陸に上がったエラブウミヘビ


(画像提供:奄美生き物図鑑)

エラブウミヘビは基本的に夜行性で、昼間は陸に上がり海岸の岩陰等で休んでいます。
波打ち際や砂浜を移動することもあるので注意してください。

エラブウミヘビは、沖縄や奄美の海でよく見られるウミヘビです。沖縄や奄美でイラブーと呼ぶウミヘビは、本種エラブウミヘビです。

エラブウミヘビの交尾・産卵


(画像提供:NHK for School)

10月から12月にかけてがエラブウミヘビの繁殖の時期です。
一匹のメスを追いかけて、複数のオスが次々に巣穴にやってきて交尾をします。交尾・産卵の場所は、海岸近くの岩場の洞窟です。

エラブウミヘビの仲間はウミヘビの中で唯一陸上で産卵します。メスは、体の中に卵を持っているため、オスよりも太くて大きな体をしています。

エラブウミヘビの孵化


(画像提供:JAPAN SNAKE CENTER)

エラブウミヘビの赤ちゃんの誕生です。

エラブウミヘビは1回に5~6個の卵を産み、孵化までに5か月ほどかかります。卵は、長径がおよそ9cmの楕円形で、殻は薄いゴムのような弾力性があります。

エラブウミヘビの幼蛇は、青と黒のツートンカラーがとりわけ鮮やかです。

エラブウミヘビの毒

エラブウミヘビはコブラ科の毒蛇であり、上顎に強力な神経毒をもっています。咬まれると麻痺やしびれが生じ、やがて呼吸や心臓が停止して最悪死に至ります。その毒性は強烈で、例えばエラブウミヘビの毒は陸上のハブの70-80倍の強さだといわれています。

世界最強の毒蛇ランキング トップ50」によると、エラブウミヘビの毒性は、半数致死量(LD50=0.273mg/kg)で比較して世界第21位。ニホンマムシ(LD50=20mg/kg)の73倍の強さです。ホンハブ(LD50=54mg/kg)とは約200倍、インドコブラ(LD50=0.45mg/kg)と比べても約2倍の毒の強さです。

ただ、エラブウミヘビの性質は穏やかでおとなしく、手でつかまえたり、ちょっかいを出したりしない限り、普通に海遊びをしていて噛まれることはまずありません。この点では少し安心です。

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エラブウミヘビの料理~イラブー汁


燻製にして売られるエラブウミヘビ
(画像提供:あじま~沖縄)

エラブウミヘビは強力な毒をもち、生命力も旺盛なことから、琉球王朝の権力者も何とかその威力にあずかろうとしました。その結果生まれたのが琉球王朝の宮廷料理「イラブー汁」です。

イラブー汁というのは、エラブウミヘビを燻製にして薬膳料理にしたものです。滋養強壮に効果があるとされています。
いまでは沖縄庶民の高級料理として、また観光客向けの郷土料理として大変な人気があります。

那覇市内の牧志市場(公設食料市場)などでは、燻製にしたエラブウミヘビがたくさん売られています。私たちは、必要があればいつでもイラブー(エラブウミヘビ)を入手することができます。

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