スズメバチによる死亡事故
怖いアナフィラキシーショック

スズメバチに刺されて死ぬ人は年間平均で34名。そのほとんどが、過剰な抗原抗体反応によるアレルギー性ショック死(アナフィラキシーショック)です。


スズメバチによる刺傷事故。怖いのはアナフィラキシーショック死。
(画像提供:都市のスズメバチ)

秋はハイキングやキノコ狩り、渓流釣りなどアウトドア趣味が盛んな時期です。この時期、自然の山野で最も気をつけなければならない危険な生物のひとつに「スズメバチ」がいます。

スズメバチは9月中旬~10月中旬にかけて交尾の時期を迎え攻撃的になります。
巣があるのに気付かないで不用意に近づくと、スズメバチの大群に集中攻撃されることになります。

毎年スズメバチに刺されて死亡する人が30人ほどいます。

クマ(熊)も恐ろしい動物ですが、クマの危害で死亡する人は年間10人未満ですので、ある意味ではクマよりもはるかに危険な生物だと言えます。

スズメバチによる死亡事故と原因

スズメバチによる死亡事故

毎年秋になると、日本各地でスズメバチに刺されて死亡する事故が多数発生します。

厚生労働省の人口動態調査によると、ハチに刺されて死亡した人は、1983年から2004年までの22年間では毎年20人~50人程度にのぼり、平均は34人でした。
最も多い年は1984年で、犠牲者数は73人でした。

この統計値は「スズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触」で死亡した人の総数ですが、ほとんどはスズメバチの犠牲者だと考えてもかまいません。
すなわち、スズメバチの襲撃で、年間平均30人強の尊い命が奪われていることになります。

刺すのはメスだけ。秋が特に危険


スズメバチの毒針

ハチの毒針は産卵管が変化したものなので、刺すのはメスだけです。巣を守る働きバチ(メス)が、外敵を襲撃する役割も担っているのです。

これらの死亡事故は毎年8月~10月に集中しています。9月が最も多くなります。
ちょうどこの時期は、上でも述べたようにスズメバチのコロニーが発展し繁殖期を迎える時期であり、外敵から巣を守るためにコロニー全体がピリピリした緊張状態にあります。

こんな折に人が不用意に巣に近づけば、外敵だと見なされて攻撃を受けるのは、ある意味では当たり前です。

近くにスズメバチが飛んでいないか、威嚇行動をとっていないか、野山に入ったら注意深く観察しながら歩く必要があります。

死亡原因はアレルギー性ショック死(アナフィラキシーショック)

スズメバチの毒には強力な溶血作用その他の生理作用があります。ただし数箇所刺されたくらいの毒量では死ぬことはありません。91箇所も刺されれば別ですが、通常、人が死ぬのはほとんどの場合、過剰な抗原抗体反応(免疫反応)に伴うアレルギー性ショック死です。

過去にハチに刺された経験があると、体内にはハチ毒による抗体が作られます。二度目にハチに刺されたときに、稀に抗原(ハチ毒)によるアレルギー反応が生じる人がいます。このアレルギー反応は、発症までの時間が極めて短い即時型反応(Ⅰ型)で、短時間(数分~30分以内)のうちにアレルギー症状が表れます。

このうち,呼吸困難や血圧低下などの全身的な反応をアナフィラキシーと呼び、生死に関わる重篤な症状を伴うものをアナフィラキシーショックといいます。症状がでるまでの時間が短いほど重症になる可能性が高く危険です。

スズメバチに刺されないために

スズメバチによる刺傷事故は、ほとんどの場合山林やその周辺で起きています。
都市部や民家の周辺では意外に少ないんですが、冒頭の死亡事例のように民家のすぐ近くでも事故は起きていますので、普段の生活でも十分な注意が必要です。
山の中では医療機関が近くにないために、手遅れとなるケースもあります。

スズメバチに刺されないためには、何といっても巣に近づかないことが第一です。山中ではスズメバチの巣を目視確認することはなかなか難しいのですが、多くの場合、スズメバチ自身が近くに巣があることを教えてくれます。

  • ◇飛んでいるスズメバチを見つけたら飛行コースを良く見きわめてください。
  • ◇急に藪の中に入ったらそこに巣がある可能性があります。
  • ◇身体の周りをスズメバチが飛び始めたら10m以内に巣があります。すでに危険ゾーンに踏み入れています。
  • ◇さらに近づくと、スズメバチが目の前に飛んできて、顎を打ち鳴らして「カチカチ」という警告音・威嚇音を発します。この音はスズメバチの最後通告です。この通告なしに突然刺されることもあります。
  • ◇1回刺されると次は集中攻撃される可能性があります。直ちにゆっくり後退してその場を離れましょう。警告音が 聞こえた場合も同様です。
  • ◇スズメバチを追い払うために手を上げたり、急な動作をしてはいけません。外敵と認識され、それこそスズメバチの大群に集中攻撃されることになります。

スズメバチはミツバチと違って毒針を刺しても自分が死ぬことはありません。毒針はかんたんに抜けて、毒がある限り何度でも刺すことができます。
9月~10月に秋の山野で活動する場合には十分注意してください。11月ごろまでは気を抜かないことが大切です。

↓↓ タイトルをタップ/クリック(内容表示)

スズメバチに刺されたときの処置

スズメバチの外敵は巣を襲って幼虫やサナギを食べる哺乳動物です。熊だという説があります。だから、毛皮の黒い色に攻撃を仕掛けてくるのだとも言われます。
人がスズメバチに刺されるのも、大概の場合は(黒髪がある)頭部です。また青色の服やズボンなどにも反応しますが、複眼のスズメバチには青色が黒っぽく見えるのでしょう。

一方で、黒い色は外敵の急所である目の瞳の色だとの説もあります。そういえば頭部の中でも、とりわけ顔面を刺されることが多いように思われます。
私は子供の頃、アシナガバチの巣にいたずらをしてよく刺されましたが、刺された場所は大概は目の近くでした(瞳を刺されたことはありませんでしたが・・・)
スズメバチの攻撃を避けるためには白い帽子を着用して、服装もできるだけ白っぽい色にしておくほうがいいようです。

さて、スズメバチにさされた場合の処置ですが、次のようにします。

  • ◇刺された部位から(可能なら)毒液を素早く絞りだす。
  • ◇毒は水溶性なので水で洗い流す。
  • ◇すぐに病院に行く。

アレルギーがなければ数箇所刺されたくらいでは問題ありません。ただ、刺傷後早い段階(数分~30分以内)で全身のじんましん、めまい、意識障害、呼吸困難などのアレルギー症状が見られる場合は危険ですので、できるだけ早く病院に行けるよう最善を尽くさなければなりません。

なお、昔からの民間療法で「ハチ刺されにはアンモニアが利く」というのがありますが、これは真っ赤なウソです。ハチ毒はほぼ中性のため、アンモニア水(アルカリ性)での中和は無意味です。またオシッコをかけるといいとの説もありますが、これも単なるデマ。神話です。不快なだけで何の効果もありません。

アウトドア趣味に関する総合情報サイト>死ぬほど危険な生き物情報>スズメバチによる死亡事故 | 怖いアナフィラキシーショック