マムシ咬傷・ハブ咬傷
毒蛇に咬まれた事例研究
マムシやハブ(毒蛇)に咬まれて死亡する人が毎年10人ほどいます。毒蛇にかまれるとどうなるのか。悲惨な実例をみてみましょう!
ハブの毒牙(画像提供:ハブの館)
マムシやハブなどの毒蛇に咬まれるとどうなるのか。咬傷被害の実例にあたって、その悲惨な実態を観てみましょう。
日本には、陸上ではマムシ・ハブ・ヤマカガシの3種類の毒ヘビがいます。
いずれの毒蛇も水田や畑、野原、山林、水辺など、私たちが普段生活をしたり、アウトドア趣味を楽しむ環境の中に普通に生息しています。言わば私たちはこれら毒蛇と一緒になって生活しているのです。
厚生労働省の人口動態調査によると、1997年から2004年の間に、毒ヘビに咬まれて死亡した人は毎年4~18人いました。平均すると年間約10人ほどが尊い命を落としていることになります。
毒蛇による咬傷被害の実例
マムシ咬傷の事故報告
マムシに咬まれて10日間入院した自らの体験をネット上で公開してくれた方がいます。長崎県に在住のハンドルネーム「やまねこ」さんです。
このような実体験に基づく情報の公開は例が少なく、マムシ咬傷を考えるうえで大変参考になる第一級の資料です。以下にその内容の一部を要約させていただきます。
詳しく調べたい方はぜひ、オリジナルのホームページを訪問してください。
⇒ 事故報告 【自然の中で】長崎県対馬より発信する登山とカヌーのぺージ
■事故状況
対馬で沢登り中に、直径1.5m程度の小さなプール状地点で、小魚を手づかみするために草付きの下に両手をさし伸ばしたところ、右手第四指(薬指)の先が刺されるような強い刺激があった。傷口は2ヶ所。草付き下から出てきたマムシ(ツシママムシ)を確認した。
■応急処置
傷口につめを押し当て3分程度血液とともに毒を絞り出して沢の流水にさらす。口で毒を吸い出すことは行なっていない。
山中で携帯の電波状況が悪く、一旦標高差150m先の山頂までのぼり救急車を要請した。
少しでも早く病院へという気持ちからかなり早足で歩き、一部小走りとなった。
10分後くらいから腫れが出てくる。この時点で強い痛みはない。傷口から心臓側の圧迫は、30分後くらいから肘下をタオルで圧迫。すでにこの時点で肘下まで腫れ上がっていた。70分後、救急車に乗車。100分後に病院到着。
■治療経過
病院に到着した時点で腫れはすでに肘上まで達していた。
血清使用を決定したが、アレルギー反応で陽性反応が出たため、薄めて点滴で注入した。併せて破傷風抗毒素を使用。
最初の5日間はICUで過ごし、その後も8日目までは2種類の点滴を24時間連続注入した。
筋肉の腫れは7日目でストップしたが、最終的には背中のこうはい筋と大胸筋まで広がっていた。
入院10日で退院できたが、咬れた右の薬指はなお腫れが残り、親指よりも大きくなっている。
■要約者(私)の感想
心拍数を上げないためにも患者は安静を保つことが大事ですが、山の中ではそうもいきません。普通は下山を急ぐのでしょうが、早く救急車を手配するために、電波状況の良い山頂に一旦登る判断・勇気には感心しました。
受傷後100分で病院に到着できたのは、場所にもよりますが、山中でのマムシ咬傷事故としては早いほうではないでしょうか。
アレルギー反応があって初期段階で十分な量の血清を投与できなかったこともあり、かなり重篤な症状になったようです。
HPにはその後の経過は述べられていませんが、もちろん退院後、早い段階で完治できたものと推察します。貴重な体験報告をありがとうございました。
ハブの被害事例
ハブにも強い出血毒があり、咬まれると結果は悲惨です。
聞くところによるとその痛さは、真っ赤に焼けた「焼き火ばし」を押し付けられたようだといわれます。
幸いにも私は、ハブ咬傷も焼き火ばしも経験はありませんが、一度だけ毒魚の「ミノカサゴ」に刺されてズッキンズッキンと大変痛い経験をしたことがあります。だからヘビ毒の痛さは十分に推察できます。
ハブに左足を咬まれた男性の画像
ハブに左足を咬まれた男性の画像です。画像はハブの館から提供を受けました。
この男性は、ハブ獲り中に、獲ったハブを木箱からビニール袋に移し替える際に誤って受傷。咬まれたのは膝の関節部ですが、膝から太ももにかけて内出血のあとが痛々しい限りです。
画像は受傷後5日目のもので大分腫れも引いてますが、一時はもっと大きくパンパンに腫れ上がっていたといいます。まだ膝が曲がらないので歩くことができません。
この男性は咬まれてすぐに同行者の車で病院に搬送されました。受傷後数分で激痛が襲ってきました。「痛いってもんじゃない」は、本人の弁です。
結局、最初の3日間はICUで集中治療を受け、その後一般病棟に移されました。23日間入院したあと無事に退院。幸いにも後遺症は残らなかったそうです。
沖縄県におけるハブ咬傷患者数の推移
上のグラフは沖縄県におけるハブ咬傷患者数の推移を示したものです。ハブに咬まれる人の数は年々減ってきており、1992年以降は年間ほぼ100人前後で推移しています。
1999年のハブ咬傷者数は82人でした。サキシマハブ咬傷の27人、ヒメハブ咬傷の7名を加えると、合計で116名になります。
死亡者数を赤数字で表示していますが、ハブ咬傷で死亡する人は意外に少なく、ほとんどの年でゼロ、たまに発生しても年間1名か2名です。
ちなみに、ハブ咬傷だけに限って1977年から1999年までの死亡率を計算すると、概略3700回の受傷に対して死亡は12名、死亡率は0.32%になります。これは上述したマムシの死亡率とほぼ同じです。ハブ咬傷の死亡率がとりわけ高いわけではありません。
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ヘビ毒(神経毒と出血毒)