猛毒パリトキシンと危険魚類
こんな魚に注意(食中毒で死なないために)

パリトキシンはフグ毒の70倍もの猛毒で知られます。このパリトキシンを肝臓や消化器などに蓄積した恐ろしい魚の紹介です。


フグ毒の70倍もの猛毒・パリトキシンをもつイワスナギンチャク。これを食べた魚も毒化する。
(写真はマウイイワスナギンチャク)

フグは猛毒をもつことで有名ですが、フグ以外にも食中毒を起こす魚は日本近海にたくさんいます。特に注意したいのは、本来は毒をもたなくても、体内に毒を蓄積してしまった魚です。ここでは猛毒のパリトキシンをもつ魚を採りあげます。

パリトキシンは、フグ毒「テトロドトキシン」の数十倍の毒性があり、経口摂取すると手足のしびれや呼吸困難を引き起こし、重篤な場合は死に至ります。

厚生労働省の統計によると、1953年から2012年にかけて、長崎県、高知県、宮崎県、三重県、兵庫県、鹿児島県、愛知県及び福岡県で、少なくとも39件のパリトキシン中毒の記録があり、患者総数は121名。そのうち7名が尊い命を落としています。
 (出典:自然毒のリスクプロファイル:厚生労働省)

猛毒パリトキシンを持つ魚

猛毒パリトキシンとは


イワスナギンチャク
(画像提供:アクア放浪記)

パリトキシンは、生物が有する自然毒の中では最強の猛毒で、フグ毒「テトロドトキシン」の40~70倍もの強い毒性があります。微量でも食べれば死亡する可能性があり大変危険です。

パリトキシンは調理等で加熱しても分解されません。
主な中毒症状は激しい筋肉痛・呼吸困難・けいれんなどですが、重篤な場合は死に至ります。

猛毒パリトキシンは、もともとは魚の体内にはなく、食べ物と一緒に取り込まれたパリトキシンが、魚の肝臓や消化管などに蓄積したものです。

イソギンチャクの一種の「イワスナギンチャク」がパリトキシンの供給元だと考えられています。イワスナギンチャクの卵にはパリトキシンが高濃度に含まれていて、後述するアオブダイやソウシハギがこれを捕食していることが知られています。

パリトキシンを保有する魚=海釣りに注意

ソウシハギ


(画像提供:wikipedia)

ソウシハギはフグ目カワハギ科の海水魚です。同じカワハギ科のウマヅラハギに形が似ていますが、ソウシハギには、1)黄色い体表に黒い斑紋と青色の波模様があること、2)団扇(うちわ)の様な大きな尾鰭(おびれ)があること、などから容易に区別がつきます。

ソウシハギは亜熱帯海域に生息する魚ですが、近年の温暖化の影響で、黒潮や対馬海流に乗って日本各地に分布域を広げています。
横浜市の海釣り公園などでも時折釣れることがありますので、誤って食べないように、行政からも釣り人に呼びかけています。

パリトキシンを保有する魚=ソウシハギ以外で注意すべき魚

アオブダイ


(画像提供:屋久島の魚)

アオブダイはベラ亜目ブダイ科の海水魚です。東京湾からフィリピン海までの西太平洋に分布し、浅い海の岩礁地帯やサンゴ礁に生息しています。名前のとおり青みの強い体色が特徴です。
アオブダイの食性は雑食性で、藻類、甲殻類、貝類などをはじめ、いろいろなものを食べています。

アオブダイは姿かたちとは裏腹に、味がおいしいため、食通には人気がある魚です。

先の厚生労働省の統計では、パリトキシン中毒による死亡者7名のうち、6名がアオブダイを食べたことによる食中毒でした。 アオブダイの中には、稀にパリトキシンを蓄積している個体があるので注意しなければなりません。とりわけ、肝臓など内臓の取り扱いには要注意です。

ハコフグ


(画像提供:身を守る道具)

フグ目ハコフグ科の海水魚です。名前のとおり箱のような四角い横断面をしており、岩礁やサンゴ礁域に棲んでいます。
日本沿岸ではふつうにみられる魚です。大きさは成体で30cm程度。小さな甲殻類や貝類、ゴカイ類などを捕食しています。

ハコフグの体表は毒性のある粘液で覆われていますが、肉には毒がないため食用とされています。

肝臓や内臓を食べたことで稀にパリトキシン中毒を起こすことがありますが、この魚による死亡例は報告されていません。

ウミスズメ


(画像提供:銚子 角巳之)

上記のハコフグと同じ、フグ目ハコフグ科に属する海水魚です。全長は成体で30cm程度になります。

ウミスズメは南方の暖海に生息し、夏になると海流に乗って北上してきます。千葉県銚子近海でも、カタクチイワシの網にかかって陸揚げされることもあります。

2007年8月、長崎県で二人のパリトキシン中毒が発生し、うち一人が死亡しました。先の厚生労働省の統計で、死亡者7人のうちの最後の一人です。
原因となった魚は特定されていませんが、証言などからウミスズメだと推定されています。肉と一緒に肝臓も食べたようです。

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