抗毒血清とは|血清はなぜ効くのか?

抗毒血清(血清)は、マムシなど毒蛇に咬まれたときの唯一・最強の治療薬です。抗毒血清はなぜ効くのか? 血清の秘密を探ります。


血清のおかげで命が助かることも・・・

マムシやハブなどの毒蛇に咬まれると、治療として抗毒血清(いわゆる血清)が使われます。

「血清があって助かった。」
「血清が無かったら、今ごろはオレも、成仏していたかもしれない・・・」
こんな話も聞こえてきます。

この血清とはいったい何なのでしょうか? 血清はなぜヘビ毒に効くのでしょうか?

そもそも血清はどうやって作るのか? そんな疑問への回答も含めて、ここでは毒蛇の咬症治療になくてはならない血清の秘密についてメスを入れます。

血清は地域の拠点病院には必ず常備されていますが、小さな医院には置いていないこともあります。こんなときはパトカーが出動したり、場合によってはヘリコプターで血清を現地に緊急輸送することもあります。

血清の秘密を探る

抗毒血清とは

血清とは、血液が凝固して上澄みにできる淡黄色の液体成分のこと。血液を採取して試験管に入れておくと、凝固して沈殿物(血餅)と液体(血清)に分かれます。これを遠心分離にかけると、容易に血清を取り出すことができます。

この血清を医療に利用するのが血清療法であり、毒ヘビ咬傷にも応用されて大きな成果をあげています。
ヘビ咬傷の場合は、咬んだヘビと同じ種の「抗毒血清」が使われます。

ヘビ毒の「抗毒血清」は、現在は馬の血液から作られています。毒蛇から採取した毒液をごく少量だけ馬に注入して、約半年をかけて体内でその毒の抗体を作らせてから「血清」として精製します。
だいたい馬一頭から300本ほどの抗毒血清を作ることができます。

この抗毒血清にはヘビ毒の抗体が入っていますので、これを毒ヘビに咬まれた人間に注入することで、抗体がヘビ毒の成分を攻撃して無毒化させ、毒の影響を取り除く(または弱める)というわけです。

将来はバイオテクノロジーを駆使して微生物から血清を大量に製造できるように研究が進めています。

ヘビ毒の採取

画像はラッセルクサリヘビ。採取した毒液は、人間の代用として選ばれた哺乳動物の「馬」に微量を注入。その毒に対する抗体を馬の体内で作ってもらいます。
毒の成分は同じ科のヘビでも種によってすべて違います。だから抗毒血清は、マムシ血清、ハブ血清、ヤマカガシ血清、インドコブラ血清など、毒蛇の種ごとに個別に精製されます。

抗毒血清の作用、はたらき

抗毒血清の作用・効果は、「抗原抗体反応」を利用したものです。
人間が毒ヘビにかまれると体内には毒素(抗原)が注入されます。人間の体内では毒に対する抗体が作られますが、ヘビ毒の拡散は抗体が作られるよりもはるかに速く強力なので、抗体が働く前に筋肉壊死や多臓器不全、呼吸困難を引き起こして死んでしまいます。

手近に抗毒血清があれば、そしてなるべく早い段階で咬傷患者に投与することができれば、抗体が効いてヘビ毒素を無毒化することができます。抗毒血清の投与が早ければ早いほど、患者の症状は軽症で済みます。

ヘビの毒は、多種多様なタンパク質で構成されています。このタンパク質の種類と内容(構成要素)は、神経毒をもつコブラ科のヘビと出血毒をもつクサリヘビ科のヘビではまったく異なるのは当然として、同じ科のヘビでも種によって大きく異なります。

したがって、毒ヘビの抗毒血清は、同じ種のヘビに対してしか有効ではありません。同じクサリヘビ科のマムシとハブでも、マムシ血清はハブ咬症には効かず、ハブ血清はマムシ咬症には効かないのです。

そのためヘビに咬まれたときは、どんなヘビに咬まれたのかを医師にきちんと説明しなければなりません。
幸いにも日本本土には、毒蛇はマムシとヤマカガシしかいません。この両者を見分けるのは比較的容易なので、咬まれたヘビを特定するのはそれほど難しくはありません。

ただ、沖縄本島や南西諸島では注意が必要です。
有名なホンハブのほかにも、島特有のハブ(トカラハブ・サキシマハブなど)がいるうえに、コブラ科のヒャン(奄美大島)やハイ(沖縄本島および周辺諸島)、イワサキワモンベニヘビ(八重山諸島)などの猛毒ヘビが生息しています。また、ユウダ科のガラスヒバァ(奄美大島・徳之島・沖縄本島・沖縄本島周辺)もいます。

詳しくは下記を参照してください。
 ⇒沖縄の蛇~沖縄や奄美など島嶼に棲むヘビ28種

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