世界の毒蛇|毒ヘビの生態大研究
(毒を持つという選択と進化)

毒蛇は大変優れた戦略家です。強い毒を持つことで獲物の確実な捕獲と自らの保身を図ります。洗練された毒蛇の世界を覗いてみましょう。


世界最強の毒蛇・インランドタイパン。マムシの800倍の強い毒性を持つ。
(画像提供:scribol.com)

全世界に3000種ほど生息するとされているヘビ亜目のうち、約25%の種が毒蛇だと言われています。毒蛇には、コブラ科(全種)、ウミヘビ科(全種)、モールバイパー科(全種)、クサリヘビ科(全種)およびユウダ科(一部の種)のヘビがいます。

手足がない蛇は、獲物を狩るために様々な進化を遂げてきました。その一つが「毒」を持つという選択です。毒を持つことで、安全に楽に狩りができるようになったばかりか、自分を捕食しようとする外敵に対しても優位に対峙することができるようになりました。

蛇の中でも高い進化を遂げてきた毒蛇は、まさに自然界で成功してきた殺人鬼的な存在です。ここでは毒蛇の進化の秘密と、驚くべき生態について観ていきましょう。

【ご案内】 このページでは「世界の毒蛇」を採りあげています。「日本の毒蛇」に関する詳細については、別途の下記ページをご参照ください。
 ⇒日本の毒蛇|身近な毒ヘビと毒性比較(マムシ ハブ ヤマカガシ)

毒蛇の毒の使い方

毒蛇は優れた戦略家~毒を持つことで勝ち取った「保身術」

蛇が獲物を捕獲するとき、無毒の蛇は相手に咬みついて長い胴体でぐるぐる巻きにして絞め殺します。体の特徴をうまく活かした優れた方法です。

ただし、この方法には常にリスクが伴います。なんせ取っ組み合いの接近戦ですから、格闘の過程で相手の反撃を受けて負傷しないとも限りません。「殺すか、殺されるか」。相手も必死です。場合によっては自分が瀕死の重傷を負ってしまうこともあり得ます。

そこで、一部の賢いヘビが考えたのが「毒」を使う方法です。
咬みついて毒を注入したらすぐに離れます。こうすれば、自分が反撃を受けて負傷する危険はほとんどなくなります。少し離れたところで傍観していれば、あとは注入した毒が相手を確実に動かなくしてくれます。危険がなくなってから獲物をゆっくり飲み込めばいいのです。

咬みついて毒を注入する方法は大変洗練された賢いやりかたです。また、蛇の毒はもともと唾液などの消化液が高度に進化したものなので、飲み込んだ後の、獲物の消化吸収も早めてくれます。まさに一石二鳥の化学兵器なのです。
こうしてみると、毒蛇のしたたかな戦略家ぶりに驚かされます。

毒蛇の毒の使い方

毒蛇の毒の使い方は「咬みついて、離れる」が基本です。獲物に咬みついたらすぐに離れて、自分の身の安全を確保しつつ、毒が回って獲物が動かなくなるのを待ちます。

毒が効くあいだに獲物が遠くに逃げていっては食事にありつけませんので、毒蛇は「より強い毒」を持つように進化してきました。強い毒のおかげで、小さな獲物なら瞬殺、秒殺で仕留めます。大変洗練された優れた方法です。いまでは、ほとんどの毒蛇がこの手法を使います。

ところが中には変わり種の毒蛇もいます。アフリカ北部に生息するドクハキコブラ(クロクビコブラとリンカルス)は、敵の目をめがけて毒液を吹きかけることで有名です。毒液は数メートルの距離を飛び、相手の視力を奪います。毒液は吹き付けるだけでなく、直接噛み付いて注入することもあり大変危険です。

日本に生息するヤマカガシは、毒牙のほかに首の皮膚に第二の毒腺があり、敵に攻撃されると頚腺から毒液を出して防衛にあたります。毒蛇によって、毒の使い方もいろいろです。

世界の毒蛇

世界にはいろいろな毒蛇がいます。カモフラージュが得意な毒蛇、人間の歴史と深く係わってきた毒蛇、海をこよなく愛する毒蛇・・・そんな毒蛇の世界をいくつかを覗いてみましょう。

サハラツノクサリヘビ


(画像提供:King of Shangri-La)

角を持つ姿と、砂漠の砂中に身を潜める姿がよく知られているサハラ砂漠に生息するクサリヘビ科の毒蛇です。砂中に身を潜めてさまざまな動物を襲ってエサとしているようです。
毒性はLD50=3mg/kg程度とそれほど強くありませんが、それでもマムシ(LD50=16mg/kg)よりもよっぽど強い毒をもっています。

ガボンアダー


(画像提供:Yahoo キッズ図鑑)

アフリカの森林地帯にすむ毒蛇。複雑な斑紋は、落ち葉の上で保護色になり見分けがつきにくい。写真でも、どこが頭でどこが体なのか皆目わかりません(※画面右下に頭があります)
見かけによらずおとなしい毒蛇ですが、攻撃は素早く危険です。知らずに踏みつけでもしたら大変です。5cmもある長い毒牙で攻撃してきます。興奮すると噴気音を出して威嚇します。

エジプトコブラ


(画像提供:2chニュースブログ)

古代エジプトでコブラは王権の印であり守護神でした。エジプト最後の女王クレオパトラは、すでに地中海の覇者になっていたローマとの戦いに敗れ、悲嘆の中で自ら命を絶ちました。
その自殺の現場に立ち会ったのがエジプトコブラです。
クレオパトラは、神聖な生き物であるエジプトコブラに胸をかませて自害したと伝えられています。

トウブグリーンマンバ


(画像提供:King of Shangri-La)

毒蛇とは思えないような美しさ。アフリカの東部に広く分布する樹上性の毒蛇です。鳥や哺乳類、トカゲなどを食べています。
マンバと言えばアフリカ最強の毒蛇であるブラックマンバが恐れられていますが、本種も大型で動きも素早いため恐れられている毒蛇です。

オリーブミナミウミヘビ


(画像提供:ダイビング魂)

海での生活に高度に適応した毒蛇です。インド洋のサンゴ礁域にすみ、泳ぎが達者でさまざまな魚を捕食します。
かって日本の遠洋漁業の船員がこのヘビに咬まれて死亡しました。網にかかったウミヘビを外すときに咬まれたようです。ウミヘビはコブラの仲間で、強い神経毒を持つことで知られています。

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