天然毒の毒性ランキング
(植物毒・動物毒・微生物毒・鉱物毒)
自然界で最も強い天然毒ランキング トップ10です。天然毒とは、生物毒(動物毒・植物毒・微生物毒)や鉱物毒など自然界にもともと存在している毒のことですが、さて、最強は?
クサフグ。青酸カリの500倍もの強い猛毒をもつ。
(画像提供:Wikipedia)
毒というと、フグの毒やヘビの毒が有名ですが、毒にはさまざまな種類が知られています。これらの毒は大きく分けると二つに分けられます。
ひとつは「天然毒」。生物毒(植物毒・動物毒・微生物毒)や鉱物毒、といった自然界にもともとある毒です。
そしてもうひとつは「人工毒」。サリンやPCBなど人工的に合成して作られた毒です。
ここでは、自然界にもともとある天然毒を対象にして、その毒性を半数致死量LD50でランキングしました。名付けて「自然界で最も強い天然毒ランキング トップ10」です。
※天然毒の種類
植物毒;トリカブト、ウルシ、毒キノコなど、植物やキノコ類に由来する毒。
動物毒;マムシ、フグ、クモ、ハチ、サソリなど、動物や昆虫に由来する毒。
微生物毒;ポツリヌス菌、サルモネラ菌など、細菌やウイルスに由来する毒。
鉱物毒;ヒ素、銅、有機水銀、鉛など、重金属の鉱物に由来する毒。
最も強い天然毒ランキング
強い毒ランキング トップ10
自然界で最も強い天然毒を半数致死量LD50でランキングしました。結果は圧倒的に生物毒の毒性が強く、なかでも細菌に由来した微生物毒は群を抜いています。代表はポツリヌス菌がつくる毒素です。鉱物毒はここではとても太刀打ちできません。
参考までにここでは、フグ毒(テトロドトキシン)を基準とした毒性の倍率も示しました。
<天然毒の毒性ランキング>
LD50の単位は mg/kg。( )内はフグ毒との毒性比較。
【第1位】 ポツリヌストキシンA
LD50=0.0000011 (9100倍)
土中などに生息するポツリヌス菌がつくる毒素で、生物が作り出す最強の神経毒とされる。
【第2位】 テタノスパスミン
LD50=0.000002 (5000倍)
土中などの破傷風菌が傷口から体内に入ってつくる毒素。
【第3位】 マイトトキシン
LD50=0.00017 (59倍)
毒化した藻類を食べた魚類(サザナミハギ)などから見つかった毒素。
【第4位】 パリトキシン
LD50=0.00025 (40倍)
米国ハワイ州・マウイ島に生息するマウイイワスナギンチャクなどがもつ毒。
【第5位】 ベロ毒素
LD50=0.001 (10倍)
集団食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌 O-157がつくる毒素。
【第6位】 バトラコトキシン
LD50=0.002 (5.0倍)
南米コロンビアなどに生息するヤドクガエルの仲間が皮膚から分泌する毒。
【第7位】 サキシトキシン
LD50=0.00263 (3.8倍)
有毒プランクトンが蓄積されて毒化したムラサキイガイなどの貝から見つかっている。
【第8位】 テトロドトキシン
LD50=0.01 (1倍=基準)
フグ毒の代表的な毒成分。餌として摂取した微生物に由来する。
【第9位】 コノトキシン
LD50=0.012~0.03 (0.83~0.33倍)
イモガイが作り出す多種類のペプチドの混合物から構成される神経毒。
【第10位】 リシン
LD50=0.03 (0.33倍)
トウダイグサ科のトウゴマの種子に含まれる植物毒。
※ 順位とLD50の数値データは、学研の図鑑「世界の危険生物」から引用した。
このデータのオリジナル出典は、鈴木勉監修「毒学教室」(学研教育出版)による。
※ フグ毒(テトロドトキシン)との毒性比較は、有効数字2桁の倍率で示した。
猛毒【天然毒】の持ち主たち: ピックアップ
■第1位:ポツリヌストキシン/ポツリヌス菌(顕微鏡画像)
ポツリヌス菌は、クロストリジウム属の細菌で、土の中に芽胞の形で広く存在します。
この菌がつくるポツリヌストキシンは、自然界に存在する毒素としては最も強力で、生物兵器としての利用が研究されています。恐ろしい限りです。
ポツリヌストキシンは主に四肢の麻痺を引き起こし重篤な場合は呼吸筋が麻痺して死に至ります。
■第3位:マイトトキシン/サザナミハギ
ニザダイ科サザナミハギ属の海水魚。南日本~インド洋・太平洋の珊瑚礁およびその周辺の岩礁域に生息します。
主に藻類を捕食するが動物質の餌も食べる。
その藻類が原因となって、体内に猛毒のマイトトキシンを蓄積するようです。
観賞魚としても流通しており、水槽のこけ取り魚として用いられています。
■第4位:パリトキシン/マウイイワスナギンチャク
マウイイワスナギンチャクはイソギンチャクの仲間で、ハワイのマウイ島に生息するイワスナギンチャクの一種。直径は3.5cm程度で、サンゴ礁の浅海に群生しています。
触手に強力な神経毒・パリトキシンを秘めており、不用意に手で触ったり、素足で踏みつけたりでもしたら大変なことになります。
■第5位:ベロ毒素/腸管出血性大腸菌 O-157(顕微鏡画像)
1982年にアメリカオレゴン州とミシガン州でハンバーガーによる集団食中毒事件があり、患者の糞便からO-157が原因菌として見つかったのが最初です。その後、日本を含む世界各地で見つかっています。
腸管出血性大腸菌は、毒力の強いベロ毒素を出し、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの合併症を引き起こすのが特徴です。
■第6位:バトラコトキシン/ヤドクガエル
ヤドクガエルの仲間は北アメリカ大陸南部、南アメリカ大陸、ハワイ(オアフ島)に生息していて、9属200種以上が知られています。
このうち、フキヤガエル属の3種は最も危険とされ、猛毒のバトラコトキシンをたっぷり備えています。
なかでもモウドクフキヤガエルは皮膚に絶えず毒素を分泌しており、触ることも危険です。あとの2種は、ココエフキヤガエル、アシグロフキヤガエルです。
■第9位:コノトキシン/イモガイ
イモガイの仲間は猛毒の持ち主として知られています。捕食性で、毒腺が付いた銛(もり)状の歯舌で獲物を突き刺し、麻痺させて餌としています。
この毒は強烈で、世界中のどの毒ヘビよりも強く、イモガイ1個体に含まれる毒はおよそ人間30人分の致死量に相当するといわれています。
なかでもアンボイナガイの毒は特に強力で、日本でもこれまでに、少なくとも30人以上のダイバーがアンボイナ刺傷によって死亡しています。
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