赤い蜘蛛の正体【クモとダニ】
身近に潜む赤いクモを徹底解明

身近に潜む赤い蜘蛛の秘密に迫ります。毎年5月ごろにベランダなどで大量発生する赤い蜘蛛。この赤い蜘蛛はいったい何者なのでしょうか?


ベランダやコンクリート壁で見かける小さな赤い蜘蛛? タカラダニ。
(画像提供:フォト蔵)

「ベランダに小さい真っ赤な蜘蛛がたくさんいます。気持ち悪くて不安です。何というクモなんでしょうか?」

最近こんな質問をよく受けます。

正解はタカラダニです。正しくは「カベアナタカラダニ」といいます。蜘蛛によく似ていますがダニ目に属する虫/ダニです。

一般に「赤い蜘蛛」と呼ばれる、あるいは思われている生物には、次の5種が考えられます。

以下に順次解説していきます。

赤い蜘蛛/ダニ

赤い蜘蛛~本当はダニ【タカラダニ】

5月の連休明け頃から、家庭の日当たりのよいベランダや門壁、公園のコンクリート壁や階段などで、小さな赤い蜘蛛のような虫がたくさん動き回っているのを見たことがあるとおもいます。

この生き物、蜘蛛ではなくダニです。正確には、ダニ目タカラダニ科アナタカラダニ属の「カベアナタカラダニ」という種です。
若葉新緑の季節に突然、しかも大量に発生します。つぶすと赤い汁が出ます。ときどきは室内に入り込んだり、洗濯物についたりするので迷惑がられています。

タカラダニはこの季節に、全国のあちこちで大量に見かけられます。
不思議なのは、5月から7月にかけてしか見られないこと。5月に突然大量に現れて、7月ごろにはいなくなります。

食性はよくわかっていませんが、花粉などを食べているようです。コンクリートの壁や階段でたくさん見つかるのは、コンクリートなど多孔質の材質にたまり、くっついている花粉や有機物を食べているのではないかと考えられています。人畜には無害です。

花粉を食べるタカラダニ

 
花の雄しべに群がるタカラダニ。真っ赤な体色が鮮やかです。
(画像はいずれも京都府HPによる)

赤い蜘蛛~こちらは本当のクモ

シロスジショウジョウグモ



(画像提供:鎮さんの自然観察記)

コガネグモ科のクモで、体長はメスで約5mm、オスで約3mmです。
鮮やかな赤色の体に、黒い斑点が2つというなかなかオシャレなクモです。

初めてみた人は、この派手な色彩にびっくりするようですが、ちょっと林があるところなら、意外に身近に見られます。

ショウジョウ(猩々)というのは古代中国の伝説上の動物で、人の言葉を理解し、お酒が好きで赤い顔をしています。このクモの赤い体色から猩々が連想され、こんな名前が付けられました。

ただ、ショウジョウグモは個体ごとの体色変異が強く、赤褐色や黒色、黒色に白いスジが入ったものなど、赤くない個体もたくさんいます。

アカイソウロウグモ


(画像提供:Mushi Navi)

ヒメグモ科イソウロウグモ亜科に属するクモで、体長はメスで約5mm、オスで3.5mmほどです。

イソウロウグモ(居候蜘蛛)は自ら網を張ることはなく、他のクモの網に入り込んで居候生活することで有名です。日本には十数種が知られていますが、その中で、アカイソウロウグモは主としてジョロウグモの網に入って居候生活をします。
網の隅っこに陣取って、ジョロウグモが相手にしないような小さな昆虫を食べています。ジョロウグモも、イソウロウグモに対しては無関心で争うことはないようです。

チビアカサラグモ


(画像提供:そよ風のなかで)

サラグモ科に属する蜘蛛で、体長は1.7~2.0㎜ほどです。

身体全体が赤色の小さな蜘蛛で、下草の間に、地表1~2㎝の所に細かに糸を重ねて皿状のシート網を張ります。
サラグモの名前はこの網の形状にちなんだものです。
クモは、通常はこのシートの下側にとまって、獲物がかかるのを待ちます。

赤い蜘蛛~猛毒をもつ毒グモ

セアカゴケグモ(外来種)


(画像提供:OPENCAGE)

赤い蜘蛛というよりも、体色は黒色ですが、背中と腹部に赤い特徴的な斑紋があります。背中の斑紋は「赤のひし形が2つ縦に並んだような形」、腹部の斑紋は「赤の砂時計状の形」です。

セアカゴケグモは、オーストラリアなどに生息する毒グモですが、1995年11月に、日本で初めて大阪府高石市で発見されました。今では分布エリアを広げ、群馬県から沖縄県にいたる広い範囲の府県で生息が確認されています。 道路の側溝や公園のベンチ下、家庭の植木鉢の下などに棲んでいます。

セアカゴケグモの毒性は半数致死量(LD50)で0.9mg/kgとされ、マムシ(LD50=20mg/kg)よりも22倍も強い毒性を示します。オーストラリアでは人の死亡例もあります。

 ※詳しくは ⇒ セアカゴケグモ

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