ウミグモ(カイヤドリウミグモ)の生態と被害
江戸前アサリ受難の実態

ウミグモ(カイヤドリウミグモ)はアサリやマテガイなどの二枚貝に寄生してその体液を吸う、恐るべき生き物です。木更津アサリの被害の実態に迫ります。


奇妙な肢体のカイヤドリウミグモ。「海の吸血鬼」の異名をもつ。
(画像提供:朝日新聞DIGITAL)

東京湾の盤洲干潟(ばんずひがた:千葉県木更津市沖)。
この干潟でカイヤドリウミグモが大量発生して、同地名産のアサリが大量に死滅。アサリ漁が壊滅的な被害を受けているという。

カイヤドリウミグモとはいったい何者なのでしょうか?

なぜアサリが大量被害に遭っているのでしょうか?
ほかの地域のアサリは大丈夫なのでしょうか?

ここでは、東京湾の海底で起きているウミグモ(カイヤドリウミグモ)とアサリとの死闘の実態について観てみます。

アサリは日本人の食卓にはなくてはならない伝統食材です。ウミグモが日本各地で大量増殖するような事態になれば天下の一大事です。

海の吸血鬼 カイヤドリウミグモ

ウミグモとは

ウミグモ(海蜘蛛)とは、海洋性節足動物のウミグモ目に属する動物です。陸上に生息する蜘蛛に形態が似ていることからこの名前が付けられていますが、分類上はもちろん、蜘蛛とは全く異なる生き物です。

ウミグモの仲間は世界におよそ1000種ほどいると言われています。多くの種は小型で、大きさは1~10mm程度です。軟体動物や刺胞動物に寄生して生活するものや海底の砂地で自由生活するものなどが知られています。

カイヤドリウミグモ
名前が示す通り、アサリやマテガイなどの二枚貝に寄生し、ストローのような口で体液を吸って成長します。そのため「海の吸血鬼」の異名を持っています。何とも不気味で気持ち悪い生き物です。カイヤドリウミグモに寄生されて弱った宿主貝は、やがて死んでしまいます。

カイヤドリウミグモは幼生期を宿主貝の体内で過ごし、成体になると外に出て砂地に潜り自由生活性になるといわれていましたが、貝の中にとどまって成熟する例も観察されています。体長は最も大きいもので約1センチです。

カイヤドリウミグモに寄生されたアサリ


カイヤドリウミグモに寄生されたアサリ
(画像提供:東邦大学理学部)

アサリの体内に、大小あわせてたくさんのカイヤドリウミグモが寄生しています。黄色いひも状に見えるのがカイヤドリウミグモです。ぞっとしますね。

多いものでは、50匹ほどのウミグモに寄生されているアサリもあります。

なお、カイヤドリウミグモには毒性はなく、寄生を受けたアサリを人間が誤って食べても害はありません。 また、カイヤドリウミグモが人間に寄生することもありません。

これを聞いて少しは安心ですが、いくら、食べても害はないと言われても・・・
ウミグモのグロテスクな姿を見るのは嫌ですね(汗)

アサリ被害の実態

盤洲干潟は東京湾の木更津沖合に分布する広大な干潟で、干潮時には岸から沖合2キロにわたって、東京湾アクアラインを跨いで南北に約1400ヘクタールにも及ぶ干潟が出現します。この遠浅の海では古くからアサリ漁が盛んで、つくだ煮や酒蒸しなどの材料として、良質な江戸前アサリを供給してきました。


盤洲干潟。東京湾の木更津沖合に分布する広大な干潟です。
(画像提供:盤洲干潟を守る連絡会)

ところが、2007年春から突如、この海に異変が生じ始めました。カイヤドリウミグモが大量発生してアサリが激減したのです。育成用に導入した稚貝にウミグモが混入していた可能性が高いという。

木更津一帯のアサリ生産量は、2006年には2904トンと、東京湾産の半数を占めていました。ウミグモが発生して以降は、2008年は170トン、12年も315トンと大きく下落。生産量はウミグモ発生前の10分の1程度に低迷しています(数字は朝日新聞による)。

ただ、ウミグモの発生はいまのところ木更津沖に集中しており、周辺の海域には拡散していないようです。
なぜこの海域だけに爆発的に増えたのかはわかっていません。

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