蚊(カ)が媒介する感染症
【感染症まとめ】

蚊(カ)は、さまざまな病気を媒介する吸血鬼です。マラリアや黄熱、デング熱、日本脳炎など、蚊が媒介する感染症についてまとめました。

知られざる殺人者=蚊(カ)


蚊は様々な病原体を媒介する恐ろしい吸血鬼
写真は人の血を吸うネッタイシマカ(画像提供:Wikipedia)

蚊は小さな昆虫ですが、さまざまな病気を媒介する恐ろしい吸血鬼です。
マラリアや黄熱、デング熱、日本脳炎など、蚊が媒介者となる感染症はじつに多岐にわたります。

アフリカや東南アジアなどでは、毎年200万人を超える人間が、蚊の媒介する病原菌に感染して尊い命を落としています。

これほど多くの人間を殺す生物は他にはいません。

もしかしたら蚊こそが、私たち人類にとって最も危険な生物なのかもしれません。

ザ・ベクター(媒介者)。世界第一級の殺人者。
ここでは蚊(カ)が媒介する感染症についてまとめました。

蚊が媒介する感染症

ウエストナイル熱

ウエストナイルウイルスをもつ蚊に刺されることで感染します。アフリカ、ヨーロッパ、アメリカなどで発生。今のところワクチンがないため、蚊に刺されないようにすることしか予防法はありません。
潜伏期間は2~14日。突然の発熱、頭痛、筋肉痛、消化器の異常、発疹がおきます。一週間ほどで回復しますが、後遺症として脳炎などをおこす危険があります。
日本国内での感染例は認められていませんが、近年まで報告のなかったヨーロッパやアメリカなど西半球に1990年代中頃から流行が発生しています。

マラリア

ハマダラカの吸血時にマラリア原虫を媒介して感染します。東南アジア、アフリカ、中南米などの熱帯地域を中心に発生。ワクチンがないため蚊に刺されないようにすることしか予防法はありません。
潜伏期間は7~40日。マラリア原虫の種類によって、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアに分類されます。これらのうち最も危険なのが熱帯熱マラリアで、治療が遅れると死に至ることがあります。熱帯地域では致命的な感染症のひとつ。

日本脳炎

日本脳炎ウイルスに感染した主にコガタアカイエカに刺されることで感染します。ただ、熱帯地域では他の蚊によっても媒介することが知られています。ワクチン接種が有効ですが、蚊に刺されないことが基本です。
潜伏期は6~16日間。感染しても実際に日本脳炎を発病するのは100~1,000人に1人程度と少なく、大多数は無症状に終わります。ただ、発症すると症状は深刻であり、高熱を発し、痙攣、意識障害に陥る。致死率は20%程度ですが、半数以上は脳にダメージを受け麻痺などの後遺症が残ります。

デング熱

デングウイルスに感染した人から、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどを媒介して「ヒト→蚊→ヒト」へと感染します。東南アジアや中南米、カリブ海諸国が発生地域ですが、日本でも2014年8月、東京・代々木公園での感染に始まって、日本各地で発症例が報告されています。
潜伏期間は3~14日。突然の発熱が生じ、その後、頭痛(一般的に目の奥の痛み)、筋肉や関節の痛み、発疹が見られます。発熱期には40℃以上の高熱が出ることがあります。2014年現在、実用化されている予防ワクチンはまだありません。

チクングニア熱

チクングニアウイルスが病原体で、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどが媒介して、ヒト→蚊→ヒトの感染環で流行します。感染症がみられる地域は、主にアフリカ、南アジア、東南アジアです。日本国内での感染、流行は認められていませんが、海外で感染した輸入症例が報告されています。
潜伏期間は3~7日。発熱、発疹、関節痛の3つの症状が特徴的で、急性症状が軽快した後も、数週間~数年にわたってリウマチに似た関節痛や腫脹、圧痛が続くことがあります。重症例では神経症状(脳症)や劇症肝炎が報告されています。

エボラ出血熱

エボラウイルスに感染した患者の、血液、分泌物、排泄物や唾液などが感染源となって流行します。死亡した患者からも感染します。通常は感染者の体液や血液、分泌物などに触れなければ感染しないと考えられていますが、防護服を着た医療従事者にも感染が認められることから、日常的に蚊がウイルスを媒介しているという学説が浮上しています。
潜伏期間は通常7日程度。発病は突発的で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などから、嘔吐、下痢、腹痛などを伴います。進行すると口腔、歯肉、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死に至ります。致死率は50 - 90%と非常に高い。

黄熱(黄熱病)

ネッタイシマカなどの蚊によって媒介される黄熱ウイルスを病原体とする感染症。発熱を伴い、重症患者に黄疸が見られることから「黄熱」と命名されました。熱帯アフリカと中南米の風土病で、血液が混ざった黒色の嘔吐を起こすことから別名を「黒吐病」とも呼ばれます。日常生活におけるヒトからヒトへの直接感染は認められていません。
潜伏期間は3~6日。突然の発熱、頭痛、背部痛、虚脱、悪心・嘔吐で発症する。発症後3~4日で症状が軽快し、そのまま回復することもあります。重症の場合は数時間~2日後に再燃し、発熱、腎障害、鼻や歯根からの出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血、黄疸などがみられます。

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