これが蛇の世界|ヘビの不思議を覗いてみよう!
(蛇は悪魔?それとも神の使い?)

蛇の世界は不思議がいっぱい! なぜ自分より大きな獲物を飲み込めるのか、なぜ毒を持つようになったのか、不思議な蛇の世界を覗いてみましょう。


インパラを捕食するアフリカニシキヘビ。強い締付け力が武器
(画像提供:Fotopedia)

蛇は世界に3000種ほどが生息していて、南極大陸を除く全大陸に広く分布しています。

ここでは、これらの蛇の一般的な特性について観ていきたいと思います。

なお、様々なテーマに特化した蛇の特性については、別途用意した下記ページをご参照ください。

 ⇒日本に生息する蛇の種類|この8種だけマスターすれば大丈夫!ヘビ図鑑
 ⇒日本の毒蛇|ヘビ毒の毒性比較(マムシ・ハブ・ヤマカガシ)
 ⇒日本の毒蛇|ヘビ毒の毒性比較(マムシ・ハブ・ヤマカガシ)
 ⇒神経毒と出血毒|ヘビ毒大研究
 ⇒抗毒血清とは|血清はなぜ効くのか?血清の秘密を探る
 ⇒世界最強の毒蛇ランキング トップ50~半数致死量(LD50)による毒性比較

蛇の秘密を探る

蛇は顎(あご)が外れるというのはウソ!

蛇は自分の体の何倍も大きな獲物を飲み込むことができます。俗に顎を外して獲物を飲み込むとされるが、さすがにこれは嘘です。実際には方形骨を介した顎の関節が2つあり、開口角度を大きく取ることができるのです。

さらに顎の構造にも秘密があります。まずは下顎。私たち哺乳類の下顎は左右がつながって一体化していますが、蛇の下顎は左右が分離していて、それぞれ別途に動かすことができます。上顎も頭骨に固定されておらず、必要に応じて前後に動かすことができます。

極め付きは歯です。蛇の歯は喉奥に向かって反り返っていて、獲物を引っかけて喉奥に送り込みやすくなっています。
これらにより、蛇は獲物をくわえて下顎を交互に前後に動かすだけで、獲物を少しずつ確実に喉奥に送り込むことができるのです。

毒蛇は頭のいい戦略家

蛇が獲物を捕獲するのは、咬みついて巻きつくか、咬みついて毒を注入するかの二種類です。稀にドクハキコブラのように相手の目をめがけて毒を吹き付けるものもいますが、どちらかというと自己防衛のために使用するもので、狩りの観点からは亜流です。
あくまでも正統派の蛇は、相手に巻きついて絞め殺すか、毒を注入して毒殺するかのどちらかです。

このうち、相手に巻きついて絞め殺すやりかたは無毒ヘビに共通するものです。絞め殺すといっても特別な力は何も必要ありません。相手の呼吸するリズムを敏感な皮膚で感じながら、息を吐いて肺が少し小さくなるたびに「キュッ」「キュッ」とタイミングよく絞めていくだけです。そのうちに相手はまったく呼吸ができなくなって窒息死するのです。

絞め殺すやりかたは非常に合理的な方法ですが、この方法には幾分リスクが伴います。
完全な締め付け体制に入る前に相手が暴れたら、自分が瀕死の重傷を負う可能性があります。なんせ取っ組み合いの接近戦ですので、「殺すか、殺されるか」の危険な要素は常に付きまといます。

これに対して、咬みついて毒を注入する方法は大変洗練された賢いやりかたです。咬みついてすぐに離せば、自分が反撃を受けて負傷する危険性はほとんどなくなります。

少し離れたところで傍観していれば、あとは注入した毒が相手を確実に動かなくしてくれます。危険が全くなくなってから獲物をゆっくり飲み込めばいいのです。

それにヘビ毒は唾液などの消化液が高度に進化したものなので、獲物の消化吸収も早めてくれます。まさに一石二鳥の化学兵器なのです。

こうしてみると、毒蛇のしたたかな戦略家ぶりに驚かされます。

蛇は悪魔か?神の使いか?

蛇は足がなく、ニョロニョロと動いたりトグロを巻いたりする様子が気持ち悪いという印象を与え、嫌悪の対象になることが多い。ユダヤ教やキリスト教、イスラム教では聖書の創世記から、蛇は「悪魔の化身あるいは悪魔そのもの」とされてきました。

一方、蛇は脱皮を繰り返すことから「死と再生」を連想させ、長い間餌を食べなくても生きている生命力などにより、永遠の生命力の象徴でもありました。古代エジプトの歴代ファラオは、主権、王権、神性の象徴として蛇形記章を王冠に戴いています。
日本でも蛇は「神の使い」だとして崇める風習が各地にありました。岩国のシロヘビは幸運の象徴として大事にされています。

シロヘビは小正月の繭玉飾り(まゆだまかざり)にも


(画像提供:多摩川散歩

世田谷区立岡本公園民家園(東京都)では、小正月の行事として毎年、古き良き時代をしのんで繭玉飾りが飾られます。繭玉を飾って豊作を祈願するのです。
木の幹には、白い餅で作った「シロヘビ」が飾られていました。家の大事な「守り神」です。

蛇の進み方

蛇が地上を移動するときは、「蛇行」か「直進」か「横ばい」か、そのいずれかの方法で進みます。まれに「アコーディオン運動」と呼ばれる移動も見られます。

蛇行運動
蛇のもっともポピュラーな進み方です。足がなく長い体躯の蛇は、体をくねらせて進むのが一番効率がいいようで、世界中のほとんどの蛇が蛇行しながら前に進みます。水上を泳ぐときも同様です。蛇行を繰り返しながら上手に泳ぎます。

アコーディオン運動
体を大きく(縮めるように)曲げておき、尾の方を支点にして、頭を出来るだけ前へのばすことで進みます。体の伸び縮みを繰り返しながら移動する方式で、木などにはいのぼる時や、表面の滑らかな場所で用います。

直進運動
腹面の筋肉を縮めたり伸ばしたりして進みます。縮めた部分の腹板は先が立つので地面に引っかかり、支点にすることができます。ニシキヘビなどの体重が重い蛇だけが用いる運動です。

横ばい運動
進行方向に対して横向けに体を置き、まず上半身を持ち上げて進行方向へ投げ出し、すぐに下半身をひねって引きつけます。飛び跳ねているような進み方です。砂漠に棲むサイドワインダーというクサリヘビ科の蛇が、横ばい運動をすることで有名です。柔らかい砂地を進むには横ばい運動がいいようです。

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