エボラ出血熱のすべて
エボラウイルスと感染症・症状・感染地域

西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るっています。エボラ出血熱とは何か、エボラ出血熱の症状、エボラ出血熱の感染地域、WHOの取り組みをまとめました。


エボラ出血熱が猛威を振るう西アフリカ。死者はすでに4,000人を超える。
(画像提供:VIPPER速報)

西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るっています。
2014年2月にギニアで流行の兆しが見られたエボラ出血熱は、その後周辺地域にも拡大。8か月後の10月10日には、死者の数はギニア・リベリア・シエラレオネなど4か国ですでに4,033人にのぼっています。これからも増え続けることが予想されています。

WHO(世界保健機関)では、エボラ熱に関する専門家による緊急委員会を開催。今回の史上最悪規模のエボラ出血熱の流行について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました(8月8日)。

この緊急事態宣言は、エボラ熱の感染が国境を越えて拡大するリスクが極めて高く、深刻な事態であることを意味します。いわば非常事態宣言です。
感染症が世界的規模で同時に流行する「パンデミック」が懸念されます。

エボラ出血熱(エボラ熱)

エボラ出血熱とは

エボラ出血熱とは、エボラウイルスによって引き起こされる感染症です。急性ウイルス性感染症で、死亡率が50~90%と極めて高いのが特徴です。

エボラ出血熱が初めて発見されたのは1976年6月。中央アフリカのスーダン(現:南スーダン)でした。倉庫番をしてた男性が急に39度の高熱と頭や腹部に痛みを感じて入院し、その後消化器や鼻から激しく出血して死亡しました。

次いでほかの部署の男性二人も同様の症状で倒れました。これが初めてエボラ出血熱と認識された流行の幕開けでした。
この三人の患者を源として家族内、病院内感染を通してエボラ出血熱の流行が拡大し、計284人がエボラ出血熱を発症して151人が死亡しました。

その後エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回、突発的に発生しては流行を繰り返しています。死者の合計は1,553名でした。

今回の西アフリカでの発生は、これまでの流行をはるかに上回る深刻な事態であり、現時点までの死者4,033人を加えると、アフリカでのエボラ出血熱による死者は合計で5,586名にのぼります。

エボラウイルス

エボラウイルスの顕微鏡写真(ザイールエボラウイルス)


(画像:wikipedia)

エボラウイルスには現在5種が確認されています。
ザイールエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、レストンエボラウイルス、タイフォレストエボラウイルス、ブンディブギョエボラウイルスです。

エボラウイルスは、糸状に集合した1本鎖RNAウイルスです。幅は80nm程度。糸は大抵曲がっていて、U字状やコイル状など様々です。分岐している場合もあります。

エボラ出血熱の感染源

現時点でもまだ、エボラ出血熱の自然宿主の特定には至ってはいないが、コウモリが有力とされています。
英科学誌『ネイチャー』によると、オオコウモリ科の数種のコウモリが、エボラウイルスの自然宿主とされ、現地の食用コウモリからの感染を報じた研究論文も発表されています。

また、エボラ出血熱はゴリラやチンパンジーなどの霊長類にも感染することから、これらの霊長類が感染ルートの一つと考えられています。エボラ出血熱の流行地帯に暮らす人々は、ゴリラやチンパンジーなどの野生生物を食用とする習慣があり、また実際に発症した人の中には、発症する直前に森林で野生動物の死体に触れたと証言した者もいます。

ヒトからヒトへの感染では、患者の血液や分泌物、排泄物、唾液などの飛沫が感染源となります。これらの感染源に触れると、皮膚の傷口や粘膜からエボラウイルスが侵入し感染します。死亡した患者からも感染するので、死体の始末にも細心の注意が必要です。

エボラウイルスは強い感染力がありますが、基本的に空気感染をしないため、感染者の体液や血液に触れなければ感染することはありません。
現在までの感染拡大も、死亡した患者の会葬の際や医療器具の不足、注射器や手袋などの使い回し等により、患者の血液や体液に触れたことによりもたらされたものです。

エボラ出血熱の症状

エボラ出血熱の潜伏期間は7日程度です。
発病は突発的で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振などが認められ、嘔吐、下痢、腹痛などが生じます。症状が進行すると、口腔、歯肉、鼻腔、皮膚、消化管など全身に出血、吐血、下血がみられ、死に至ります。

エボラ出血熱の致死率は50~90%と非常に高く、治癒しても失明・失聴・脳障害などの重篤な後遺症を残すことが殆どです。

エボラ出血熱は体細胞の構成要素であるタンパク質を分解することで、患者の体内に重篤な症状を発症させます。体内に数個のエボラウイルスが侵入しただけでも容易に発症するといわれており、そのため、バイオセーフティーレベルは最高度の4に指定されています。
エボラ出血熱は大変に怖い感染症なのです。

エボラ出血熱の感染地域

エボラ出血熱の発症は、アフリカ以外でも、サウジアラビアやアメリカ合衆国、イギリス、スペイン、フィリピンなどで確認されています。

現時点では、これらの国もまだ数例程度の最小限の発症ですんでいますが、今後ビジネス交流や観光などによって、エボラウイルスが世界各国に持ち込まれることが懸念されています。

WHOでは今回、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
それと同時に、感染が広がっている国々には、非常事態を宣言して国民に適切な情報を提供するとともに、国際空港や港、それに国境の主要な検問所において、感染の疑いがある人の検査を強化することなどを勧告しています。
また、世界各国については、感染が広がっている地域などから入国する人について、空港や国境での検査を強化するよう勧告しています。

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