家にいる黒い小さい蜘蛛(くも)
ハエトリグモの生態と特徴

家で見かける黒くて小さな蜘蛛(クモ)=ハエトリグモ。ハエトリグモはまるで忍者のようです。網を張らず、忍者のように忍び寄って蝿(ハエ)などの獲物を一瞬で捕獲します。ハエトリグモの驚くべき生態に迫ります。


家の中や家の外壁で当たり前に見かけるハエトリグモ。ハエをとってくれる益虫でもある。
(画像提供:ご近所の生き物)

ハエトリグモは、蜘蛛(くも)なのに網を張らず、家の中や外壁を歩き回って蝿(ハエ)などの獲物を捕食する徘徊性の蜘蛛です。エサを求めて居間にも寝室にも平気で侵入してくるため、びっくりしたり気持ち悪がる人がたくさんいます。

蜘蛛は一般に嫌われ動物で、ハエトリグモも例外ではありません。見つけられ次第、丸めた雑誌で思い切りたたかれるか、殺虫剤をシューと吹きかけられるか、過酷な運命を背負って生きているようです。

でもハエトリグモをよ~く観察してみると、なかなか愛嬌がある顔をしていて「かわいい」側面も持ち合わせています。

触ろうとするとピョンピョンとジャンプして逃げます。その動きの速い事。なかなかの運動能力の持ち主です。垂直な壁にいる時は、お尻から蜘蛛の糸を出してバンジージャンプのように飛び降ります。縦横無尽に動くさまは、まるで忍者のようです。

ハエトリグモの生態と不思議な能力について、以下に詳しく観てみましょう。

家にいる蜘蛛(クモ)=ハエトリグモ

ハエトリグモとは

ハエトリグモ(蠅捕蜘蛛)は、クモ目ハエトリグモ科に属するクモ類の総称です。世界中に多くの種類があり、家の中や外壁、庭、公園、草地や森林など多様な環境で生息しています。

このうち、日本の人家の中でよく見かけるのは、アダンソンハエトリ・チャスジハエトリ・ミスジハエトリの3種。家の外壁ではシラヒゲハエトリがよく見られます。

蜘蛛は網を張って獲物を待ち構えていると思われがちですが、実際には、日本国内にいる1200種のクモのうち半分の種は網を張らないで獲物を狩ります。ハエトリグモも網を張らない蜘蛛の一種で、歩き回って獲物を探す徘徊性の蜘蛛です。

ハエトリグモは蝿(ハエ)や蚊(カ)などの小型の昆虫を主食としていることから、家の中の害虫を退治してくれる「益虫」とされて昔から大事にされてきました。いまでも日本の民家では、室内でハエトリグモを見かけても駆除したりせずに、そのまま放置されるケースが多く見受けられます。ハエトリグモと同居している状態ですね。

アダンソンハエトリ/家の中にいる蜘蛛


(画像提供:アダンソンハエトリの写真素材)

アダンソンハエトリは、日本の人家で見かける最もポピュラーな蜘蛛です。床や壁を這ったり、時には机の上にも現れます。エサとなるハエや蚊を探してパトロールしているのです。

アダンソンハエトリの正面アップ画像


(画像提供:同上)

こちらはアダンソンハエトリの正面アップ画像です。なかなか個性的な顔をしています。
アダンソンハエトリの頭胸部には単眼が8つあって、特に正面を向いた4つの目は大きくて視力も優れています。他の4つの目は後方にあります。

チャスジハエトリ/家の中にいる蜘蛛


(画像提供:日本のスジハエトリグモ)

頭胸部から腹部にかけて、背中に白色と茶色の筋(ストライプ)があります。ハエトリグモとしては大柄で、雌は体長10~12mm、雄は7~11mm。オスのほうが筋模様がより鮮明です。

ミスジハエトリ/家の中にいる蜘蛛


(画像提供:平群庵昆虫写真館)

チャスジハエトリとよく似ていますが、ミスジハエトリは目の周りや額が赤茶色になっているのが特徴です。メスは背中のストライプも鮮明ではなく、体全体が黒灰色の地味な色をしています。

ハエトリグモの驚くべき能力/ジャンプ力と神経毒

ハエトリグモは、英名を「jumping spider(ジャンピング スパイダー)」といわれるようにジャンプが得意です。捕まえようとして手を差し出すと、ピョンピョンとジャンプして素早く逃げてしまいます。自分の体長の30~40倍ほどの距離(約20~30cm)をジャンプできるのではないでしょうか。驚くべき身体能力です。

ハエトリグモは、この得意な能力を生かして、餌を発見するとそっと近づき、一気に飛び掛かって強力なあごで咬みつきます。ハエトリグモのあごは毒腺につながっていて、強い毒ではありませんが、ハエなどの飛び回る獲物でも容易に動けなくしてしまいます。

網を張らない徘徊性の蜘蛛は生きた獲物を確実に仕留めるために、毒性の強弱はあっても何らかの毒を備えています。ただし、ハエトリグモの毒は人間にとっては無毒に等しく、危険は全くありません。安心してください。

自分より大きなハエを襲うハエトリグモ


(画像提供:蚊ってにしやがれ)

ハエトリグモは、自分よりも体格が大きいハエに対しても果敢に飛びつきます。強力な顎(あご)でがっちり咬みつけば、勝負はハエトリグモの勝ち。あとは、このごちそうをおいしくいただくだけです。

蚊を食べるハエトリグモ


(画像提供:同上)

こちらは蚊を食べるハエトリグモの画像です。ハエトリグモは蚊やハエなど人間にとっての害虫を捕食してくれることから、民家では益虫として大事にされてきました。

ハエトリグモの鋭い顎(あご)


(画像提供:PHOTOLIHE BLOG)

写真はアダンソンハエトリの鋭い顎。このあごで獲物にがっちり咬みつき、毒を注入します。顎の上方には4つの大きな目が見えます。

糸を出しながら葉から葉に飛び移るハエトリグモ


(画像提供:西日本新聞)

ハエトリグモは「蜘蛛の巣」は張りませんが、糸は持っています。移動中もお尻から糸を出して道しるべにしたり、危険に際しては糸を命綱にして壁から飛び降りたりします。空中を大ジャンプしても命綱があるから安心です。

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