黄色い蜘蛛の正体
身近に潜む黄色いクモを徹底解明

身近に潜む黄色い蜘蛛(クモ)の秘密に迫ります。黄色いクモといえば猛毒のカバキコマチグモが有名ですが、ほかにはどんなクモがいるのでしょうか。身近にいる黄色いクモについてまとめました。


黄色い蜘蛛といえばカバキコマチグモも有名ですが、一般にはあまり見かけない。
(画像提供:酔渓の野遊び)

「ベランダに薄い黄色の蜘蛛がいました。毒はあるんでしょうか? 心配です。」「うちの庭にときどき黄色い蜘蛛がでてきます。名前は何というのでしょうか。毒はありますか?」

最近こんな質問をよく受けます。
皆さんの関心は、もっぱら「蜘蛛に毒があるかどうか」です。毒がなければ安心なんだけど、毒があると怖い。そう言ったところでしょうか。

クモについてこんな質問が出始めたのは、猛毒のセアカゴケグモ(外来種)が日本各地で発見され、ニュースになって以降です。それまで、日本に毒グモがいるなんて思ってもいなかった方が、もしかしたら庭やベランダでよく見かける蜘蛛にも毒があるのではないかと心配になっているのです。

ここでは、黄色い蜘蛛に対象を絞って、彼らの実態を紹介することにします。

身近に潜む黄色いクモ

猛毒の蜘蛛はカバキコマチグモだけ

日本にはおよそ1200種の蜘蛛がいますが、そのほとんどは何らかの毒をもっていると思っていて間違いありません。ただ、蜘蛛の毒は、餌となる昆虫や小動物の動きを封じる程度の毒性であり、人間に危害を及ぼすような強い毒性はありません。そういった意味で、身近にいる蜘蛛を必要以上に恐れる必要はありません。

ただし、黄色い蜘蛛のなかで1種類だけ、カバキコマチグモだけは毒性が極めて強く、ヒトに危害を与える可能性があるので注意してください。カバキコマチグモは、沖縄県を除く日本全国に広く分布する毒蜘蛛で、猛毒を持っていることで知られています。

「猛毒動物最恐50」(今泉忠明著)によると、カバキコマチグモの毒の半数致死量(LD50)は0.005mg/kgとされ、その毒性は世界最強の毒蛇とされるインランドタイパンよりも強く、ハブクラゲ(LD50=0.008mg/kg)に次いで猛毒ランキングの第6位にランク付けされています。

幸いにも、カバキコマチグモは牙が小さく、注入される毒量も少ないことから人間が死亡した事例は見当たりませんが、咬まれると厄介な状態に陥ることがあります。注意してください。

カバキコマチグモ


(画像提供:いろいろな虫たち)

フクログモの仲間で、猛毒をもつことで知られています。
草原や河原、水田などに生息していて、イネ科植物の葉っぱを丸めて巣を作ります。アウトドア趣味では注意が必要ですが、日常生活のなかで、この蜘蛛を見かけることはほとんどありません。

身近に潜む黄色い蜘蛛

わたしたちの生活環境の中で、普段から身近にみられる「黄色い蜘蛛」をまとめました。ページの制約からすべては挙げられませんが、黄色い蜘蛛の代表例です。ご確認ください。

ムツボシオニグモ


(画像提供:三重クモ談話会)

コガネグモ科に属する蜘蛛で、北海道から九州にかけて日本全土に広く分布しています。黄色い背中の後方に6つの黒点があり、名前の由来となっています。
昼間は軒下や葉陰にじっとして、暗くなるとそこから出て、垂直の円網を張ります。網の目はかなり粗く、30分程度で仕上げます。

ウロコアシナガグモ


(画像提供:昆虫エクスプローラ)

アシナガグモ科に属する体長4-6mmの蜘蛛です。細くて長い脚が特徴で、からだは黄色~黄緑色のやや細長い形状をしています。 北海道から九州、南西諸島にかけて広く分布しており、都市部の街路樹や公園、庭、河原などの低草本でみられます。

ササグモ


(画像提供:ご近所生き物図鑑)

ササグモ科のクモ。体長1cm。夏場、庭の草木の上などで普通に見られるクモです。草の間を素早く移動し、巧みにジャンプして獲物を捕まえます。
体色は黄緑色~黄褐色で、脚には黒い毛がたくさん生えています。

キンイロエビグモ


(画像提供:東京23区内の虫)

エビグモ科のクモ。体長4~7ミリほどの小型のクモで脚が長い。公園や庭などの葉上でよく見られます。
キンイロ型と呼ばれる黄褐色~赤褐色のものと、ハラジロ型と呼ばれる腹部が白くて全身が黄白色~緑白色をした個体がいます。

ツユグモ


(画像提供:NATUREPHOTO)

アシダカグモ科に属するクモで、北海道から九州までの全国に分布しています。寒冷な気候を好み、北海道以外では高地で多くみられます。
体長は8~15mm程度で、黄色~緑色の体色をしています。ツユグモは徘徊性のクモで、おもに草地で、徘徊しながら獲物を狩ります。

ジョロウグモ


(画像提供:里山の生き物たち)

ジョロウグモ科の蜘蛛。大型の造網性のクモで、夏から秋にかけて、よく目立つ大きな網を張ります。
陽光を受けて黄金色に輝く美しい姿が、錦をまとった女郎(じょろう)または上臈(じょうろう=江戸時代の大奥の高級女官)を連想させることから、ジョロウグモの和名が付けられたとされます。

コガネグモ


(画像提供:昆虫エクスプローラ)

本州以南の各地でみられる大型の造網性のクモで、木の枝や開けた場所に、ほぼ円形に近いきれいな円網を作ります。
ジョロウグモと混同されることが多いですが、それとは科が異なる、コガネグモ科のクモです。コガネグモは攻撃性が強く、その性質を利用した「クモ合戦」などの遊びが各地に伝わっています。

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