食中毒と応急処置
(食中毒とは何か? 食中毒の原因と対処法)

食中毒にはたくさんの原因があり、細菌性食中毒・ウイルス性食中毒・化学性食中毒・自然毒食中毒に大別されます。食中毒の原因と応急処置についてまとめました。


毒キノコの代表格・ベニテングダケ。さすがにこのキノコでの食中毒は少ない。
(画像提供:kihaの何でもブログ)

私たちの普段の生活において馴染み深い「食中毒」についての話題です。

食中毒は夏に多いように思われますが、実は冬にも大変多く発生しています。

高温多湿の夏場は細菌性食中毒が多く、冬はノロウイルスなどによるウイルス性食中毒が多いのが特徴です。

厚生労働省の統計でも、第1位がノロウイルス(ウイルス)第2位がカンピロバクター(細菌)第3位がサルモネラ属菌(細菌)の順で、この三種で食中毒全体の約8割を占めています。

そのほかにも、春の山菜シーズンには有毒植物の誤食で、また秋には毒キノコの誤食で食中毒事故が絶えません。 ここでは、食中毒の原因と、食中毒にかかったときの応急処置について考えます。

食中毒と応急処置

食中毒とは

食中毒とは、食中毒の原因となる細菌・ウイルス等が付着した食品や、有毒あるいは有害な物質が含まれた食品を食べることによっておこる健康被害をいいます。症状としては、主に下痢・腹痛・おう吐などの急性胃腸炎ですが、まれに発熱や倦怠感など風邪のような症状を起こすこともあります。

厚生労働省の統計によると、平成24年の食中毒発生件数(事件)は、全国で1,100件、被害患者数は26,700名にのぼります。このうち、11名が尊い命を落としています。家庭で発生した届け出のない食中毒も含めると、実際の食中毒の発生件数は相当な数にのぼると推定されます。

食中毒は、その原因になった因子・物質によって、(1) 細菌性食中毒、(2) ウイルス性食中毒、(3) 化学性食中毒、(4) 自然毒食中毒に大別されます。

食中毒の発生件数を月別にみると、大きく分けて2つの山があることが特徴です。
夏場は細菌性食中毒が流行し、冬場はウイルス性食中毒が流行します。夏場は高温多湿で細菌が繁殖やすい状況にあり、逆に冬場は寒くて乾燥しており細菌が繁殖しずらい環境ですがウイルスにとっては非常に猛威をふるいやすい環境にあるからです。

春と秋は食中毒が比較的少ない時期ですが、この時期には山菜取りやキノコ狩りなどの野外レジャーが盛んであり、有毒植物の誤食や毒キノコなどによる自然毒食中毒が多く見られます。

細菌性食中毒(食中毒 その1)

食中毒には数多くの原因物質がありますが、その中の代表的なものを以下に示します。

(1)細菌性食中毒

毒素型/細菌性食中毒
食中毒の原因物質が直接、毒物として作用する食中毒を「毒素型食中毒」といい、次のような原因菌があります。

黄色ブドウ球菌
ヒトの皮膚や鼻腔、粘膜などに常在する細菌で、食品中で増殖して腸管毒素を産生します。おにぎりや折詰弁当、和菓子などが原因食品になります。
ボツリヌス菌
土壌中や湖沼の泥の中に広く分布しています。びん詰や真空包装食品など酸素が含まれない食品中で増殖し、強い毒素をつくります。

感染型/細菌性食中毒:
微生物の増殖によって消化管の感染症を発症する食中毒を「感染型食中毒」といい、次のような原因菌があります。

腸炎ビブリオ
汽水域を中心に、沿岸の海水中に広く棲息する細菌です。腸炎ビブリオ菌で汚染された海産魚介類を生で食べることで食中毒にかかります。
サルモネラ属菌
ヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌の一種。その一部のサルモネラ菌はヒトや動物に感染して病原性を示します。夏に多くの食中毒事故が発生。
カンピロバクター
サルモネラ属と同様に鶏・牛・ブタなどの家畜や犬の腸管内に分布。カンピロバクター菌に汚染された食肉や水を介して食中毒を起こします。
病原性大腸菌
病原性を呈する大腸菌群全体を指します。O157で有名な腸管出血性大腸菌は、ヒト→ヒト感染があり、法律上は感染症扱いになっています。
リステリア属菌
食肉加工食品や生乳製品での食中毒が多い。潜伏期間は数時間から数週間と長く、原因食品の特定が困難な場合もあります。

中間型/細菌性食中毒:
毒素型と感染型の中間の性質を有し、病原菌が消化管内で増殖する際に初めて毒素を生成するタイプです。「中間型食中毒」または「生体内毒素型食中毒」とも呼ばれます。

ウェルシュ菌
料理作り置きなど保冷=解凍サイクルに乗じて増殖します。学校や施設などで集団食中毒を起こす原因菌のひとつです。
セレウス菌
土壌・ほこり・汚水・野菜・香辛料など自然界に広く分布する好気性芽胞形成菌です。食物の腐敗細菌として古くから知られています。

ウイルス性食中毒(食中毒 その2)

(2)ウイルス性食中毒

ノロウイルス
ノロウイルス感染症を引き起こす小型のウィルス粒子の属名。感染性が非常に強く、直接ヒトからヒトに、また飲食物を介してヒトからヒトに感染します。
ロタウイルス
抗原性によりA群からG群に分類され、ヒトに感染するのはA, B, C群です。A群は乳幼児下痢症の原因ウイルスとして重要です。

※食中毒は、かつては人から人へ感染しないものとされていましたが、ノロウイルスや腸管出血性大腸菌O157 などは患者から患者へ直接感染して、大規模な集団食中毒事件に発展します。
そのため近年、国際的には食感染症として、伝染病とあわせた対策がとられています。

化学性食中毒(食中毒 その3)

(3)化学性食中毒

アレルギー様食中毒/化学性食中毒

ヒスタミン
マグロ・サバなど鮮度が落ちた魚や腐敗した食品で、ヒスタミンが食物中に蓄積して食中毒をおこします。胃腸炎の他に頭痛・発疹などの症状を呈します。
アミン
アミンは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物の総称です。ヒスタミンと同様の食中毒をおこします。

自然毒食中毒(食中毒 その4)

(4)自然毒食中毒

植物性自然毒/自然毒食中毒

毒キノコ
発症率はほぼ100%、植物性食中毒の90%はキノコが原因です。症状により胃腸型、コレラ型、脳症状型、神経症状型、特殊型に分類されます。
ジャガイモの芽
ジャガイモは塊茎の部分を食用にしますが、発芽部分や緑色表皮の部分には有毒物質のソラニン(ポテトグリコアルカロイド)を含みます。
ウリ科(夕顔)
夕顔は「かんぴょう」の原料や煮物として食用にされますが、まれに苦味の強いものがあり食中毒を起こします。苦味のククルビタシン類が原因物質。
有毒植物
ニリンソウ(食用)と間違えてトリカブト(有毒)の若芽を食べるなど、有毒植物を山菜と間違えて誤食する食中毒事故が後を絶ちません。

動物性自然毒/自然毒食中毒

フグ毒
フグの調理については都道府県で規制が異なり、稀に飲食店や素人料理で食中毒事故を起こすことがあります。猛毒のテトロドトキシンが原因です。
貝毒
海水中の有毒プランクトンを捕食した貝が毒物(マリントキシン)を蓄え、その毒化した貝を食べることで食中毒を起こします。死に至ることもあります。
シガテラ毒
シガテラ毒(シガトキシン)は、小魚が有毒の渦鞭毛藻を捕食することで体内に蓄積されます。食物連鎖で大型魚にも蓄積され、食中毒をおこします。

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食中毒の応急処置

食中毒のおもな症状は、腹痛や下痢、おう吐など急性胃腸炎の症状が現れますが、重症化すると血便や高熱、ショック症状、意識障害が現れることもあります。
また、ボツリヌス菌などが原因菌の場合には、消化器官の症状は現れなくても、物が二重に見えたり、声が出にくくなったり、呼吸困難などの神経障害の症状が現れることもあります。

自然毒食中毒や化学性食中毒の場合の応急処置

自然毒(毒キノコやフグ毒)にあたったり化学物質を誤って飲食した場合は、比較的早く中毒症状が出ます。毒性が非常に強いものもあり、摂取量によっては命にかかわる危険がありますので注意が必要です。
症状が重症の場合や改善しない場合には、躊躇せず、早めに医療機関で診察を受け治療するようにします。

①胃のもたれ、吐き気などを感じて食中度になったと感じたときは、水やぬるま湯を大量に飲んで、食べたものを吐き出します。早く・多量に吐き出すほど、症状は軽くなります。

②尿や便で毒を体外に出します。
下痢や腹痛がひどいときも、下痢止めや鎮痛剤は使わないこと。これらを使用すると、毒を体外に出す作用を妨げることになります。

③水分の補給は怠らないようにしましょう。
嘔吐や下痢が続くと、体内にある水分とミネラルが欠乏する脱水症状に陥る可能性があります。ミネラル分が補給できるスポーツ飲料を、常温で飲むようにしてください。

④病院へは、なるべく食べ残しや、吐いたものをもっていきましょう。原因物質の特定に役立ちます。

細菌性食中毒やウイルス性食中毒の場合の応急処置

細菌性食中毒やウイルス性食中毒の場合は、感染してから一定の潜伏期間を経た後に食中毒症状が現れます。数時間後の場合もあれば、1日~3日後、原因物質によっては10日も経ってから食中毒症状が出るものもあります。そのため、何が食中毒の原因なのか、よく分からないこともあります。

①おう吐や下痢がある場合は、できる限り出し切ります。

②血便がみられる場合や、一日に10回以上も嘔吐や下痢が続く場合、意識がもうろうとしたり呼吸が乱れたりする場合は、ためらわずに、できるだけ早く病院に行って治療を受けます。

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