猛毒リシンのすべて
(トウゴマの種子から抽出)

猛毒リシン~青酸カリよりも強い毒性を示す。リシンはかつて化学兵器として開発された歴史を持つ植物由来の毒です。わずか2~3粒のトウゴマの種子があればヒトを死に至らしめるという。リシンとは何か、その毒性と原材料トウゴマの生態についてまとめました。日本でもリシンを使った殺人未遂事件が発生しています。リシンに要注意です!


猛毒のリシンを含むトウゴマの種子(画像提供:youtube)

トウダイグサ科のトウゴマ(別名:マヒ)の種子には、猛毒のリシンが含まれています。

このリシンは、ボツリヌストキシン(ボツリヌス菌の毒素)やテタノスパスミン(破傷風菌の毒素)などと並んで、世界五大猛毒のひとつともいわれていて、半数致死量LD50は0.03mg/kgという強毒性を示します。
半数致死量というのは治験動物の半数が死亡する毒物の投与量を表し、この数値が小さいほど毒性が強いことを示しています。たとえばLD50が0.03mg/kgの場合、体重60kgのヒトならわずかに1.8mg(=0.0018g)の投与量で被験者の半数が死亡するということです。

ちなみに青酸カリの半数致死量は10mg/kgですので、リシンの毒性は青酸カリのじつに330倍強ということになります。リシン。恐るべき毒性です。

ところで、トウゴマの種子からは「ひまし油」も造られています。ひまし油には美肌やデトックス効果も期待されていて、若い女性に特に人気があります。
ひまし油にはリシンは含まれていないのでしょうか。飲んでも大丈夫なのでしょうか? 心配です。

猛毒リシンとトウゴマの生態について観てみましょう。

トウゴマとリシン・ひまし油

トウゴマとはどんな植物か?

トウゴマは、別名をヒマ(蓖麻)とも呼ばれるインドあるいは東アフリカ原産の外来植物です。トウダイグサ科の一属一種の植物ですが、いまでは世界各地に分布していて、園芸用などにも改良されて多くの栽培品種がみられます。

トウゴマの種子を絞った油(脂肪油・油脂)は「ひまし油(キャスターオイル)」とよばれます。ひまし油は、低温でも流動性に優れていることから、機械類の潤滑油や作動油などに使われるほか、塗料、インキ、ワックスなどの工業用品として使用されています。

また、ひまし油は昔から下剤としても利用されており、現在ではデトックスや美肌効果をうたって美容分野でも重宝されています。若い女性を中心に多くの利用者がいるようです。

トウゴマ(栽培種)


(画像提供:WEBメディカル)

トウゴマはもともと多年草で、熱帯では草丈1~5mの小高木状に育ちます。温帯各地では種子からひまし油 を採るために1年草として栽培されています。
葉の形や色は多様です。茎葉や果実が赤くなる品種をアカトウゴマ(ベニヒマ)と称して、園芸用に栽培され切花として利用されます。

トウゴマの果実と種子


(画像提供:フレンズちゃんねる)

トウゴマの果実と種子。果実には多数のイガイガ状のひげがあり、袋の中に種子を収めています。
種子には独特の模様と突起があります。上から見るとダニのように見えませんか? それもそのはず、トウゴマの学名Ricinusは、ラテン語でダニを意味しているのだそうです。

リシンの毒性と症状

上述したように、トウゴマの種子には脂肪油(ひまし油)のほかに、青酸カリの330倍強という猛毒のリシンが含まれています。リシンの半数致死量は体重1kgあたりわずか0.03mgです。

このリシンは、種子を絞って精製したひまし油には含まれず、あとに残された搾りかすに残留するようです。
したがって、この搾りかすを使用するか、あるいはトウゴマの種子そのものを使ってリシンを抽出すれば、大量殺人も可能な猛毒物が簡単に入手できるわけで、テロや犯罪などへの使用が国際的にも懸念されています。

精製されたリシンは固体・無味無臭で、水にのみ溶けます。
リシンは分子量約65,000の糖蛋白質です。酵素作用により、細胞の中でタンパク質を合成するリボゾームの働きを止める機能があります。そのため、リシンが細胞内に入るとタンパク質を合成できなくなって、やがて細胞が死に至ります。

リシンを経口摂取した場合、服用してから毒作用が発現するまでに10時間ほどかかります。蛋白質の合成阻害がゆっくり進行するためです。ボツリヌス毒素やフグ毒素など多くの猛毒物質がいずれも神経末に作用し、速効性があることと比べて大きな違いです。

経口摂取による症状としては、嘔吐、胃痛、血液混じりの下痢、排便・排尿時の痛み、手足のしびれ、脈拍が上がる等の症状が見られます。また、ほこりやエアロゾルとして吸入した場合には、発熱、めまい、呼吸困難、せき、肺水腫、血圧降下などの症状が見られます。

リシンは猛毒物質であり、致死量以上であれば当然死に至ります。死亡するまでの時間は投与量にもよりますが、36時間から72時間とされています。
緊急治療としては、経口摂取の場合は直ちに胃洗浄を行い、下痢を止め、給水と電解質管理を行います。吸入摂取の場合は肺水腫の治療と呼吸補助が中心になります。

ひまし油の美容利用は安全か?


市販されているひまし油
通販でも容易に購入できます

トウゴマを絞って精製したひまし油(脂肪油)には、リシンは含まれていないことになっています。リシンは油に溶けないため、ひまし油に混じることがないのだと考えられます。

ただ、本当に大丈夫なのでしょうか? 製造工程や管理面に不備があって、万が一にも不純物に紛れてリシンが混入するようなことはないのでしょうか。

リシンはきわめて毒性が高い猛毒物質です。ほんの少しでも混入すれば、大変な事態になることは容易に想像できます。大事に至らなくても、ごく微量のリシンを繰り返し摂取すると激しいアレルギー症状がみられるようになります。

ひまし油は、かつては下剤として使用されてきました。峻下剤といって作用の強い薬です。
なぜ下剤として効くのか? そこら辺りをよく考えてみる必要があります。

デトックスや便秘改善は確かに美肌には効果があります。ただ、下剤の利用が常態化すれば、身体機能にいいはずはありません。美容目的に安易にひまし油を使用するのは避けたほうがよさそうです。

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