蛇蝎(だかつ)と文化
テレビドラマ・漫画・唐津焼にみる蛇蝎

蛇蝎(だかつ)とは、ヘビとサソリのこと。人がひどく恐れ嫌うもののたとえです。インパクトがある言葉だけに、文学やドラマの世界ではたびたび蛇蝎が登場します。そんな蛇蝎の世界をのぞいてみましょう。


蛇蝎(だかつ)は嫌われ者? 蛇にまつわる文化を取り上げます。
(写真は無毒のアオダイショウ 画像提供:郷ヶ峰 N.S.S)

蛇蝎(だかつ)とは、蛇(だ=ヘビ)と蝎(かつ=サソリ)。人がひどく恐れ嫌うもののたとえです。「蛇蝎のごとく嫌う」などと使われます。

そういえば、ヘビもサソリも、ともに強い毒を持っていて人に危害を加えることから、一般にはひどく恐れられ嫌われています。「あの人は蛇蝎のような人」といえば、付き合いたくない最悪の人を指します。 私たちの身近にも、ときおりそんな「蛇蝎のごとく嫌われる人」がいるものです。

さように評判がよくない「蛇蝎」ですが、インパクトがある言葉だけに、文学やドラマの世界ではたびたび蛇蝎が登場します。

例えば、向田邦子さんの小説「蛇蝎のごとく」。不倫問題の裏に潜む、奇妙でおかしい人間心理を描写した名作です。NHK「土曜ドラマ」やテレビ東京「向田邦子ドラマスペシャル」でドラマ放映され、大変な評判となりました。漫画では、秋里和国さんの「蛇蝎 -DAKATSU-」が有名です。

意外なところでは、焼き物の唐津焼にも蛇蝎が登場します。こちらは蛇のような?独特の紋様にちなんでいて、蛇蝎(じゃかつ)と発音します。蛇蝎は、鹿児島特産の酒器「黒じょか」でもブランド品です。

蛇蝎(だかつ)と文化

テレビドラマ「蛇蝎のごとく」


蛇蝎のごとく(画像提供:テレビ東京)

向田邦子さんの小説「蛇蝎のごとく」を原作として、1981年にNHK「土曜ドラマ」でテレビ放映されました。平凡な家庭の不倫問題を取り扱った作品は、当時、多くの視聴者を魅了しました。
「蛇蝎のごとく」はその後、テレビ東京でも取り上げられ、2012年に「向田邦子ドラマスペシャル」としてスペシャルドラマ化されています。

向田邦子ドラマスペシャル「蛇蝎のごとく」
キャスト:市村正親・黒木瞳・石原さとみ、ほか。

鉄鋼会社の部長・古田(市村正親)は仕事一筋の堅物でしたが、初めて、部下の若い女性にほのかな浮気心を抱くようになります。そんなとき、娘の塩子(石原さとみ)が、知らぬ間に妻子ある男とマンションを借りていたことがわかりました。自宅宛てに業者から、ダブルベッドの配送確認が届いたのです。

古田はマンションに乗り込み、不倫相手の石沢(小澤征悦) と大騒ぎとなります。

男なら誰でも持っている浮気心を巡り、娘の不倫相手と対立しながら、父と娘…、夫と妻(黒木瞳)…、それらの矛盾と葛藤をユーモラスかつ辛辣に描く。向田作品の傑作です。

漫画「蛇蝎 -DAKATSU-」


漫画「蛇蝎 -DAKATSU-」
(画像提供:霊感占いインフィニティ)

こちらは、秋里和国さんの漫画作品です。「蛇蝎 -DAKATSU-」。「月刊フラワーズ」(小学館)にて2010年1月号から2013年10月号まで不定期に連載されました。単行本は全5巻が発刊されています。

漫画「蛇蝎 -DAKATSU-」では、「蛇蝎」は、「気学を用いて人を殺める職業」だとされています。

主人公の仙寿亜人(せんじゅ あびと)は、表向きは京都の老舗の帯問屋・仙寿苑の社長ですが、じつは裏社会では第62代目「蛇蝎」の当主として、小学生の頃から父親の指導の下で蛇蝎の修行を続けてきました。

その亜人に、自然界の「気」から、“気学を人殺しの道具にせず、人を幸福にするための正道に戻す”ようにとの囁きがありました。さらに、亜人の命を狙う何者かがうごめき始めました。さ~てどうする。62代目。

唐津焼・蛇蝎唐津(じゃかつがらつ)


蛇蝎文様が美しい、唐津焼・蛇蝎唐津碗
(画像提供:骨董夢物語)

焼き物(陶磁器)の世界でも蛇蝎が使われます。ただし、ここで使う蛇蝎は、蛇蝎本来の忌み嫌うといった意味ではなく、釉薬をかけて焼きあがった表面の模様が、ヘビやトカゲの肌に似ているとこころから名付けられました。読み方も「だかつ」ではなく、「じゃかつ」と発音されます。蛇のうろこのような、独特の紋様をした焼き物ということです。

唐津焼では、蛇蝎を「蛇蝎唐津(じゃかつがらつ)」と呼んでほかの作品と区別しています。

蛇蝎唐津は、鉄分を多く含んだ黒釉の上に、白濁する長石釉をかけて焼いたものです。長石釉の下から黒釉がしみ出て、うつわの表面に独特の紋様を刻みます。

また、黒釉の鉄分含有量や成分の違いによって、黒・飴・柿色などに発色してそれぞれに深い味わいを醸し出します。風情あふれる、人気の一品です。

黒千代香(黒じょか)・蛇蝎


薩摩焼 黒千代香(黒じょか)蛇蝎
(画像提供:本場薩摩の黒千代香や )

千代香(ちょか)とは、鹿児島県の薩隅地方の方言で、扁平で注ぎ口の付いた陶磁器の土瓶のことです。現在ではもっぱら、焼酎を温めるために用いられます。

♪壺やみやげにチョカ3つもろた。 茶ぢょか、黒ぢょか、歯黒ぢょか♪
薩摩民謡にもあるように、黒千代香(くろぢょか)は、鹿児島県に昔からある焼酎をおいしく飲むための燗付器です。これを火鉢の上などでとろ火で暖めながら焼酎や泡盛を飲んでいました。

黒千代香の中でも、まだら模様の重厚な風格を備えた一品がこの蛇蝎です。薩摩焼では長石釉よりも藁灰(わらばい)を多くして焼き上げます。藁灰は流れやすいので、黒釉との相性によってじつに多様な紋様を描き出してくれます。

薩摩焼に伝わる400年伝統の技が、この蛇蝎のまだら模様です。

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