蛇足(だそく)と歌い手
蛇にまつわる文化考 蛇足(歌い手)

蛇足(歌い手)と蛇足(故事成句):蛇にまつわる文化について考えます。蛇足(歌い手)が歌う吉原ラメントの甘い歌声もどうぞ!鑑賞あれ!


蛇足(歌い手)。ニコニコ動画の「歌ってみた」で活動している男性歌い手
(画像提供:蛇足オフィシャルブログ)

蛇足(歌い手)さんが大人気ですね。ニコニコ動画の「歌ってみた」や、ニコニコ生放送で生主(=生放送主)などとして幅広く活動されている方です。

「蛇足」とは、もちろん、古代中国の故事成句にちなんだ芸名です。蛇の絵に足を描き加えたばっかりに1等商品(酒)をもらい損ねた故事にちなんで、「余計なこと」「なくてもよい無駄なもの」といった意味で使います。

ただ、歌い手の蛇足さんに限っては、どうしてどうして。無駄などころか、甘く伸びがある艶やかな歌声はオリジナルの歌手をも凌駕する実力です。こんなに歌がうまい方が、アマチュアの世界にもいるんだと、正直驚いてしまいます。

そんなことで、ここでは蛇足を紹介します。もちろん歌い手の蛇足ですが、参考までに故事成句の蛇足も紹介しておきます。故事にちなんで、蛇足がどのような由来で生まれてきたのか、蛇にまつわる文化についても考えてみます。いわば、「蛇足」づくしです。

蛇足(歌い手)と蛇足(故事成句)

歌ってみたで人気の歌い手・蛇足とは

蛇足(歌い手)は、1977年3月2日生まれ。北海道出身で血液型O型。身長169cmのイケメン男性です。お母さんがアメリカ人のハーフだということです。

ニコニコ動画の「歌ってみた」やニコニコ生放送での活動が中心ですが、最近では音楽プロデューサーとしての活動も増えてきています。

歌い手・蛇足の魅力は、なんといっても、あの甘い歌声です。
男らしい渋い低音から伸びのある高音域まで、色気あふれる甘い歌声がリスナーを魅了します。特に低音ボイスは魅力的です。独特のビブラートの利いた声に特長があり、ほかにも裏声や巻き舌、抑揚の変化など。感情表現に富んだ歌い方が奥深い色気を漂わせます。

色っぽい歌に定評がありますが、選曲・歌によって歌い方を変え、引き出しの多い男とも呼ばれています。

蛇足の歌声~聞いてみよう

歌い手・蛇足の魅力を知るには、その歌声を聞いてみるのが一番です。推薦する曲はいろいろありますが、なかでもボーカロイド曲をカバーした次の曲がおすすめです。まずは聞いてみてください。

吉原ラメント(作詞・作曲:亜沙)

♪ 江戸の街は今日も深く
♪ 夜の帳(とばり)かけて行く
♪ 鏡向いて紅を引いて
♪ 応じるまま受け入れるまま
♪ ・・・

蛇足の甘い歌声が流れます。

故事成句の蛇足

こちらは歌い手ではなく、古代中国の故事にちなんだ「蛇足」です。「余計なこと」「なくてもよい無駄なもの」といった意味ですね。
『語源由来辞典』によると、蛇足の語源・由来は、中国の『戦国策(斉策上)』の故事に由来しています。

ときは春秋戦国時代。総大将「昭陽」が率いる楚の国軍は、魏の国を撃破し、その勢いで斉の国に攻め込む動きを見せました。斉の使者として派遣された「陳軫」は、楚軍の陣中で昭陽に面会して、斉を攻めないように説得しました。

「あなたは魏に勝利して、既に最高の地位も得ています。そのうえで、斉との余分な戦をして何の得るものがありましょうか。蛇の絵に足を描いて失敗した男のように、余分な戦いをして、もし失敗したら今の地位を失いますよ」と諭して、軍を引き上げさせたという。陳軫の策は見事に成功。斉の国を戦わずして守ったのです。

このとき、陳軫が引用した「蛇の絵で失敗した男」というのが、のちに「蛇足」という言葉が生まれた有名な話です。

「楚の国のある家で、お祭りをして、召使いたちに酒をふるまいました。酒が少なくなると召使いたちは『棒で蛇の絵を描き、一番最初に蛇を描いた者が残りの酒を全部飲むことにする』と決めたのです。ある男が真っ先に蛇を描いたのですが、調子に乗って『蛇の足』まで描いてしまいました。すると二番目に蛇を描いた男が『足があるのは蛇ではない』と言って、壺を奪って残りの酒を飲んでしまいました。」

このことから、「付け加える必要のない余分なもの」を『蛇足』と言うようになりました。

蛇足の使い方、使われ方にご注意を!

蛇には足がありませんので、仮に蛇の絵に足が描かれていたら、それは蛇ではありません。だから、蛇足とは「余分なもの」にほかなりません。

ただ「余分なもの」といっても、蛇足というのは、「無いほうがいい」といった軽い意味ではありません。「それがあるとかえって邪魔になる」「余計な行為」といった強い意味ですので注意してください。本当はする必要が無いのに、それをしたばっかりに全体が台無しになってしまう、ということなんです。

もしあなたが上司から、「君、それは蛇足だよ!」と言われたら、真摯に対応する必要があります。「邪魔だから外せ」と言われているのです。

説明会などで時折「蛇足ではありますが・・」と前置きして、追加説明をすることがありますが、これは間違いです。「蛇足だったら説明するな」となります。正しくは「ひとこと補足させていただくと・・」などといった表現になります。蛇足の使い方にも細心の注意が必要です。

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