マグニチュードとは
巨大地震はなぜ揺れる時間が長いのか?

地震のたびに報道される「マグニチュード」。たまに「震度」と混同されている方もいますが、マグニチュードとは地震そのものの大きさ(規模)を表す指標です。本震や余震など地震活動の本質を理解するうえで欠かせない、地震のマグニチュードについてまとめました。


マグニチュードMw9.0を記録した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の被災状況
(画像提供:flickr)

震度とマグニチュード。どちらも地震の程度を表す指標ですが、震度が「ある地点での揺れの強さ」を表すのに対して、マグニチュード (magnitude) は「地震が発するエネルギーの大きさ」すなわち「地震そのものの大きさ=規模」を表わします。

地震は震源域の断層面で岩盤が破壊されることで発生します。この震源域が広いほど規模の大きな地震、つまりマグニチュードの大きい地震となります。


東北地方太平洋沖地震の震源域
(画像提供:wikipedia)

図は「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」の震源域を示したものです。最初に断層の破壊が始まった震源地は三陸沖(仙台市の東方沖70km付近)ですが、日本海溝下のプレート境界面に沿って次々に破壊が連動していき、最終的な破壊エリア(震源域)は岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmの広範囲に及びました。

これだけ広範囲の岩盤が一度に連動して破壊されるのですから、そのエネルギーたるや膨大なものです。東北地方太平洋沖地震では、日本の観測史上最大規模のマグニチュードMw9.0が記録されました。

Mw9.0の地震のエネルギーは、1923年大正関東地震(Mw 8.2、関東大震災)の約16倍、1995年兵庫県南部地震(Mw 6.9、阪神淡路大震災)の1,450倍に相当します。

マグニチュードとは何か

地震の揺れる長さとマグニチュード

地震の揺れは一般的には震度、つまり揺れの強さで表現しますが、実はもうひとつ忘れてはならない要素があります。それは揺れの長さです。

マグニチュードが大きな地震は解放されるひずみエネルギーが大きく、岩盤の破壊は一か所だけにとどまらず、隣接する岩盤に次々と破壊の連鎖が起こります。広い範囲の岩盤が連動して破壊されていくには時間がかかるため、マグニチュードの大きな地震ほど揺れている時間も長くなります。


東北地方太平洋沖地震と兵庫県南部地震の地震波形
(画像提供:岡村土研)

上図は、東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)と兵庫県南部地震(Mw6.9、Mj7.3)の地震波形を比較したものです。

阪神淡路大震災をもたらしたMw6.9の兵庫県南部地震では、激しい揺れの時間は十数秒程度でした。これに対して、Mw9.0の東北地方太平洋沖地震では、震源域が遠いため揺れの強さは神戸ほどではありませんが、2~3分間の長時間にわたって強い揺れが続いています。

東北地方太平洋沖地震の波形をよく見ると、大きな揺れが複数回繰り返していることが判ります。この地震は、従来から想定されていたM8クラスの海溝型地震が3つも連動して起こった、歴史上たぐいまれな「連動型地震」でした。隣接する岩盤どころか、隣接する海溝エリアが連動して破壊するのですから、そのエネルギーたるや膨大なものです。

Mw9.0は、1900年以降に世界で発生した地震の中で4番目に大きな規模になります。もちろん、日本では観測史上初めてとなる超巨大地震でした。

マグニチュードによる地震規模の分類

地震のマグニチュードは、地震が発するエネルギーの大きさを対数で表した指標値であり、エネルギーとマグニチュードとの関係は次式で表されます。

ここに、E:地震が発するエネルギー(単位はジュール)、M:地震のマグニチュード

この式から、マグニチュードMが1大きくなると、左辺のエネルギーEは31.62倍(=10の1.5乗)、Mが2大きくなるとEは1000倍(=10の3乗)大きくなることが判ります。同様の計算から、Mが0.1大きくなるとEは1.41倍、Mが0.2大きくなるとEは1.995倍(約2倍)、Mが0.5大きくなるとEは5.62倍大きくなります。

したがって、マグニチュードにするとたった「2」しか違わない地震でも、M9の地震はM7の地震の1000倍ものエネルギーをもった、とてつもない大きな地震であることが理解されます。

マグニチュードによる地震の大小の目安は次のようです。

マグニチュードと地震の大小の目安

マグニチュード 地震の大きさ
1.0未満 極微小地震
1.0以上~3.0未満 微小地震
3.0以上~5.0未満 小地震
5.0以上~7.0未満 中地震
7.0以上~8.0未満 大地震
8.0以上~9.0未満 巨大地震
9.0以上~ 超巨大地震

ちなみに、地球上で起こりうる最大の地震はM10までだと言われており、これまでに観測された地震の中ではチリ地震(1960年)のMw9.5が最大です。これ以上の規模の地震は実測でも地質調査でも発見されていません。

マグニチュードの種類

マグニチュードの計算式には多くのものが提案されており、代表的なものにリヒターマグニチュード( Ml)、表面波マグニチュード(Ms)、実体波マグニチュード(Mb)、モーメントマグニチュード(Mw)、気象庁マグニチュード(Mj)などがあります。

このうち、地震学の分野ではモーメントマグニチュード (Mw) が広く使われます。また、日本では気象庁マグニチュード (Mj) が広く使われています。日本で気象庁マグニチュードが使われるのは、精度と速報性に優れているためです。

ただし、気象庁マグニチュードでは、マグニチュードが8を超えるような長周期地震動が卓越する巨大地震では数値が頭打ちになり、地震規模を正確に表せなくなります(これを「マグニチュードの飽和」といいます)。そのため、長周期の波が観測されるようなMj5.0以上の地震については、気象庁マグニチュードに加えて、モーメントマグニチュードも解析して公表されています。

気象庁マグニチュード (Mj)

気象庁マグニチュードは、周期5秒までの強い揺れを観測する強震計で記録された地震波形の最大振幅の値を用いて計算します。地震発生から3分程で計算可能であり、速報性に優れていることが大きな特徴です。多くの地震でモーメントマグニチュードともよく一致することが確認されています。

そのため、わが国では地震情報や地震記録などに気象庁マグニチュードが広く使用されており、日本でマグニチュードといえば一般には気象庁マグニチュードのことをいいます。

ただし、気象庁マグニチュードには、おおむねM8を超えると数値が頭打ちになるという欠点があります。巨大地震になると長周期の地震波はより大きくなりますが、マグニチュードの計算に使う「周期5秒程度までの地震波」の大きさはほとんど変わらないためです。

実際、東北地方太平洋沖地震では気象庁マグニチュードは 8.4ですが、地震発生2日後に公表されたモーメントマグニチュードは9.0でした。

モーメントマグニチュード(Mw)

気象庁マグニチュードに限らず、地震計の観測波形を用いて計算するマグニチュードには頭打ちがあって、規模の大きな地震に対してはそのエネルギーを正確に表示することができません。

これに対してモーメントマグニチュードMwは、断層面をずらそうとする偶力のモーメント(=地震モーメントMo)を考慮したもので、断層の岩盤がずれ動いた面積S(=長さ×幅)と平均変位量D、および断層付近の岩盤の剛性率μ(=岩石の硬さ)から断層運動の規模を直接計算するものです。

モーメントマグニチュードは、地震による破壊エネルギーの大きさを物理的に表現したものであり、巨大地震に対してもマグニチュードの飽和がないことなどから、地震の規模をより適切に表すことができます。そのため、地震学など学問分野での利用はもちろんのこと、アメリカ地質調査所をはじめ国際的にも広く使われています。

ただ、モーメントマグニチュードの値を求めるには震源域の広がりや断層の破壊状況を精査するなど詳しいデータが必要なため、地震発生直後に迅速に計算して速報することは困難です。これが気象庁の地震情報で、モーメントマグニチュードが利用できない大きな理由です。

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